23話 押し通そう! で解決?
「父さん、どうすれば」
「はぁ、どうするかなぁ。おい、シルフ、何で自分が精霊王だって言わなかった?」
『えー? 別に言わなくても良いじゃん。だって僕は僕だし。契約に精霊王なんて関係なくない? 人間や他の種族の人達が、なんか騒ぐ事もあるけどさぁ。それに僕は契約できれば何でも良かったし。あ、これ美味しいね』
『こっちのクッキーは、リョウパパがつくったの。だからおいしい』
『お店よりも美味しい。だからいつも作ってもらう』
『へぇ』
歌って騒いで、それなのにちゃんと合間にクッキーとジュースを飲む、ミルフィーとトールとシルフ。そして話までするんだから、一体3匹の対応能力はどうなっているのか。
しかも答えが軽いし。別に良いじゃん、関係なくない? って。良くないは!! ダメに決まってるだろう!!
『あ~、なんて言うかな。シルフ、協会で祀られている、俺達に伝えられている精霊王達の人物像は、厳かで物静かで、世界の全てを大切に守ってくれている存在、って感じなんだが』
『あ、それさ。僕達前に、いつも変なこと言われてたんだよね』
「変なこと?」
『そう。あの頃は僕と火と風の精霊王が代替わりして、残るは水の精霊王だけだったんだけど。4代目の最後の水の精霊王が、いつも僕達のことを怒ってて、ブツブツ言ってたんだ。僕達は煩くて、落ち着きがなくて、精霊王としての自覚がないって』
「4代目?」
『うん。今の僕達は全員5代目。それでね、4代目の精霊王が消える時、もう少し落ち着きを持って、静かに世界を見守りなさい、って言い残して消えていったんだ。でもさ。僕達、全員に会えば分かると思うんだけど。あ、僕だけでも分かるか。全員物静かで、落ち着きもあって。何で4代目はそんな事言ってたんだろうね、ってみんなで話してたんだよ』
『ものしずか? おちつき?』
『バタバタしないで、静かって事』
『ぼくのむれのなか、バタバタしてるおにいちゃんがいた。それでパパとママにおこられてた』
『そうそう、そういう魔獣や人の事だよ』
『うむ、じゃあシルフは違う。お歌をうたって、静かにクッキー食べてるだけ。バタバタしてない』
『でしょう? ねぇ、おかしいよね。ん? どうしたの?』
俺と父さんとタイラーが、みんなのことをジト目で見ている事に気づいたシルフが聞いていた。どう考えても物静かでもないし、落ち着きだってないだろう。
4代目の、みんなをまとめていたであろう水の精霊王も、代替わりするまで、大変だったろうな。
「……それでだ」
もうこれは話してもしょうがない、とばかりに。父さんが頭を軽く振りながら、俺とタイラーだけを見て話しを再開して来た。
「これからのことだが。うん、知らなかった事にしよう!」
「え?」
「いやな、もう契約してしまったし、この様子じゃ、シルフが契約解除を認めるわけもない。となれば、もう黙っているしかないだろう。知らなかった事にしてな。リョウが契約した時、側には誰もいなかったし、遠くで見ている誰かもいなかった。だろ?」
『ああ、俺が気配を感じる範囲では』
「シルフはどうだ? お前も人の気配を広範囲で、感じることが出来るだろう?」
『誰もいなかったよう』
「なら、これに関しては問題はない。そして幸いな事に、街へ行って門を潜る時や、何か身分を確認するため、プレートでステータスを調べたとしても。基本情報以外は確認されないから。リョウが精霊王と契約したことは分からない。もしも聞かれたら、そうだな、ちょっと似ている、花鳥の新しい姿だと言い切れば良い」
花鳥。花鳥という、シルフと同じくらいの大きさの、鳥魔獣がいるんだけど。俺も街で見た時は、その姿の多さに驚いた。
花鳥の元の姿は、手のひらサイズで、黄色と白の、ちょっと毛が長い鳥だ。だけどこれが、この姿の花鳥ばかりではなく。同じ花鳥でも、色が全く違ったり、毛の伸び方が違ったり。
毛の性質や、姿自体が丸っこかったり、顔くらい大きい姿だったりと。まあ、いろいろな花鳥がいるんだよ。
これまでに見つかった花鳥の姿は、なんと2000匹以上。多すぎだろって程の数で。
「だからシルフも、通常通り証をつけて、花鳥で押し通せばいけるんじゃないか?」
『確かにそれならば……』
証とは、契約魔獣が付ける、俺と同じようなプレートのような物なんだけど。野生の魔獣と契約している魔獣の区別を付けるため。また証に、契約者の魔力を登録する事で。その契約魔獣が誰の魔獣なのか、分かるようにするための物だ。
小さい魔獣でも付けられるように、いろいろな大きさのプレートが用意されていて、小鳥の場合は足に、軽い素材でできている紐や鎖で巻くこともある。
その素材は特別で、紐や鎖は魔獣の体に合わせて付けることができ。外す時は、プレートの時のように、紐は鎖に契約者の血を付けることで、契約者だけが外す事ができるんだ。血は付けると自然に消える。
悪い奴が無理やり誰かから、契約魔獣を奪い、いくら自分の魔獣だと主張したところで。プレートと紐や鎖が外せるか確かめるため、嘘をつく事はできない。
ちなみにプレートには俺の名前と、魔獣の名前しか登録されないから、これも問題はないと。
「よし、これ以上考えてもしょうがない。リョウ、とりあえず明日にでも街へ行って、すぐにプレートを作ってこうよう。それで何を聞かれても、全員花鳥で押し通せ」
「分かった」
『うむ、それが良いだろう』
話しがまとまると、今度はその話しを、シルフとミルフィーとトールに話した。シルフは世界のことを良く知っていたので、面倒な事に巻き込まれるのは嫌だと、すぐに了解してくれたよ。トールもすぐに分かってくれた。
だけどミルフィーが、良く分かってくれなくて。ただ、喜んで歌っている以外でも、こちらの話を良く聞いておらず、精霊王ついての話しを全く聞いていなかったことが分かり。
じゃあしっかり理解ができるようになるまで、面倒だからシルフは花鳥だって事にしておいた。
こうして次の日、急いで街へ行った俺達は、ササッと登録を済ませ。一応の対策をしたんだ。




