14話 家族ができた日
「まぁ、なんだ。お前は記憶を失っていて、自分自身のことでも大変だと思うが。少しでも落ち着いてからで良いから、魔法と剣、それに固有武器も訓練をすると良い。今プレートの準備をするから待っていろ」
リカードさんが立ち上がり、自分の仕事のテーブルの方へ移動すると、プレートに何かをし始めた。その間のカーライルさんにプレートの説明を受ける。
プレートに自分の魔力を流すと、全ての情報が浮かび上がると。他人がプレートに魔力を流すと、基本の名前と歳、種族、犯罪歴が見られる。能力については、見られないようになっているらしい。自分の能力を、他人に見られたくない人もいるからと。
それからもしも情報が更新されると、プレートの方も勝手に自動更新されるから、いちいち冒険者ギルドや、判定をしている場所へ行かなくても良いようになっている。凄いなこのプレート。自動更新とか、どういう作りになってるんだ?
「例えばリョウが、フェアリーラビットと契約するだろう? するとステータスにフェアリーラビットの情報が載るようになっている」
「なるほど」
「ま、それは帰ってからやってみよう。実際にやった方が良いからな。それと、ちょっとこの後話しがあるんだが……。今待ってる間でも良いか。リカード! ちょっと部屋を貸してくれるか?」
「あ? ああ、隣の部屋を使ってくれ!」
何か俺に話しがあるというカーライルさん。俺達はすぐに隣の部屋に移動し、部屋にあったソファーに、向かい合わせ座った。
話しって何だろう。カーライルさんもタイラーも、なんか深刻そうな顔してるし。トールは……、いつも通りか。
ギルドに来るまでに好きな花を見つけて、買ってもらって。その後はその花のどこが良いのか、ずっとぶつぶつ独り言を言っていて。今も深刻そうな顔をするカーライルさんの肩の上で、花びらの角度がちょうど良い、なんて言ってるし。
と、それは良いとして、俺に一体どんな話しが? 黙ったままのカーライルさん達に、俺の方から話しかけた。
「あの、話しって」
「あ、ああ。えっとだなぁ」
『おい、しっかりしないか』
「何だ、じゃあお前から話せよ」
『ここはお前が話すべきだろう。俺はお前の家族であるが、そういうことはお前だ』
「いや、家族なら尚更お前が話したって……」
「あの!!」
「ハッ!! あ、す、すまない」
『すまん』
「あの、話しって。2人が話しずらいほど、俺にとって悪い話しなんですか? あっ、もしかして。そうですよね、助けてもらってもう2つの日が過ぎているんですから。いい加減俺は、カーライルさん達の家から出ていかないと」
すっかりお世話になってしまっていたが、もう2週間だ。他人の、しかも素性の知らない子供を世話するだけじゃなく。何とか生活できるまで、いろいろな事を教えてくれたんだ。
でもそろそろ出て行ってほしい、と思うもは当たり前のこと。あまりに居心地が良くて、出て行くって事を、考えていなかった。
「すみません。えと、許してもらえるなら何ですけど。新しく暮らせる場所を探すまでと、お金が必要になるので、この街で何とか働ける場所を見つけるので。それまでカーライルさん達の家に、いさせてもらえたらって」
「待ってくれ! 確かにその話しをするつもりだったんだ。だが……」
「本当すみません。ずっと甘えちゃって」
『リョウ! 落ち着け!! カーライルも落ち着かないか!』
判定のこととか、自分の能力の事とか、フェアリーラビットとのこととか、いろいろあって。急に現実に引き戻されたもんだから、ちょっと慌てた俺と。ついでに何故か一緒に慌てたカーライルさんを、タイラーが大きな声を出して止めてきた。
「あ、ごめんなさい」
「お、おう、俺もすまん」
『まったくお前達は。リョウ、確かに俺達は、お前のこれからについて話すつもりだった。だが、お前が心配しているような話ではないから、とりあえず話しを聞いてくれ。それからカーライル、あれだけ話し合ったし、お前の気持ちはもう決まっているんだから、しっかりそれを伝えろ』
「ああ……。ああ、そうだよな。俺がしっかり話さないと。リョウ、これからの事について話しがあるんだが、聞いてくれるか?」
「はい!!」
俺は姿勢を整える。俺の真似をして、隣に座っていたフェアリーラビットも姿勢を正した。
「実はな、お前さえ良ければ、このまま俺の家で暮らさないか、と思ってな」
「え?」
カーライルさんの話しは、俺が考えていた物とは、全く違うものだった。カーライルさんが、これからも自分の家で暮らさないか。というか、家族として一緒に暮らさないかと言ってくれたんだよ。
俺はまったく知らなかったんだけど。数日前までカーライルさん達は、俺達についていろいろ話し合ってくれていて。
何があって、森で倒れていたのか、どんな事件に巻き込まれたのか。挙句記憶喪失ということで。最初はやっぱり俺の事を警戒していたと。もしかしたら素性を隠して、何かを企む組織の一員かもしれないって。
どうやらその世界にも、いろいろと良くない事を考える、行う奴らはいるらしく。俺もそれの仲間かもしれない、と考えたらしい。
だけど一緒に過ごすうちに、どう考えても俺はそんな人間には見えず。しかも、もし騙しにきたとしても、カーライルさん達はかなりの実力者だからな。そう簡単に騙されることはない、しかもまだまだ子供の俺が、とまとまったと。
それからは、俺が外へ出ても、しっかりと生活できるように、できる限りサポートしようとしたって。
だけどそのうち、カーライルさんもタイラーも、そしてトールも。魔獣じゃないけれど、俺に何かを感じてくれて。これから家族として、一緒に過ごせば良いんじゃないか。という考えに変わっていったって。
そして数日前、カーライルさん達は話し合いをすることに。みんなそれまでは、自分の考えを話していなかったから。そうしたらみんなが同じ事を考えていると分かって、ビックリしたと。
が、それと同時に、みんな同じ考えなら、話しは早いと。今回判定を受ける時に、俺に家族にならないか、という話しをすると決め、今に至っているらしい。
「だいたい記憶喪失のお前を途中で放り出すのもな。子供を見捨てるわけにはいかないだろう」
まさか俺の知らないところで、そこまで考えていてくれたなんて。でも、そんなにお世話になって良いのか?
「俺は素性の分からない子供ですよ?」
「それでもだ。お前からは何かを企んでいるような、悪いものは一切感じん。それに俺はお前を信じているしな!!」
『うむ、俺もだ』
『うむ、ボクも。……葉っぱの感じが』
「ありがとうございます」
俺は思わず下を向いた。泣きそうになってしまったからだ。そこまで俺を信じてくれるなんて。
「それで、急で悪いんだが。家族になるなら手続きがいるんでな。街に来ているから、ついでに済ませてしまおうと思うんだが。どうだ? 家族になるか?」
ここまで信じてもらえて、拒否するわけがない。俺はしっかりとカーライルさん達を見た後、頭を下げて言った。
「これからよろしくお願いします!!」




