第8話 研究開発
〜桜梅桃李株式会社〜
花丸
「さて、早速開発に取り掛からせて貰うわけだが」
倉柿
「まずは工程から組まないといけませんね」
花丸
「企画、要件定義、設計、実装、テスト、運用保守って所かな。要件定義は、僕の為の研究開発って所かな?」
倉柿
「テスト、運用保守は試行不可能です。何が危ういかを定義する基準が人間社会に存在しませんから」
花丸
「それもそうだな。もう話は伺ってると思うが、政府関係者と思しき女子学生がウチに来た。明頭螺って言ったかな」
倉柿
「はい。既に承知しております。実態はFBIみたいな犯罪捜査機関の様ですが、詳しくは分かりません」
花丸
「犯罪捜査機関ね。公式には出ないというより、出した所で扱い困る組織なんだろう。陰陽師率いる心霊対策機関なんてお金出して貰えないだろう。僕の学科と似たようなものかもしれない」
倉柿
「超心理学部、心霊学科って凄いですよね。まず作ろうと思った経緯が知りたいです」
花丸
「歴史民族みたいな感じで、地域の信仰とか多様性みたいなのに触れつつ、どういった心霊現象が起こっているかとかを授業の内容にしてあるな。なんだろう、大学の運営方法に詳しくは無いが、予算調整の為に年末に工事する様なもんだろう」
倉柿
「ああ…。まぁ自信持ってください。少なくとも教授は意義のある開発を手掛けていますから」
花丸
「資金を投じて貰うからには、実のある結果を出さないとな」
花丸と開発員達はマテリアルスコープの開発に取り掛かる。
花丸
「まずは普通に運用する為に小型化する必要があるな」
「この規模の性能と大きさですと、バックパック位まで縮小は可能です」
花丸
「背中に背負って移動する感じになりそうか」
「例えば使用者が見ている映像を現象化する事は可能でしょうか?」
花丸
「マテリアルスコープの仕組みとして、脳波を通常の状態から霊が見えるとされる21VHzに調整するのが主な目的だ。実際の脳波そのままだが、機械内部で擬似脳機構を展開してある種の幻を使用者に見せている状態だ。現象化する為には使用者そのものをプリンターにする必要があるだろう」
「なな、凄く難しそうです」
倉柿
「マテリアルスコープ内の脳機構そのものをスキャンするのはどうでしょう」
花丸
「そうなると人工知能が必要になるな。スコープから遠ざかるが、人間が可視化している対象に近い映像をスクリーンにして投影する必要がある。となるとわざわざスコープに人工知能を搭載するのではなく、常時脳波をスキャンして人工知能に読み込ませる必要があるだろう」
倉柿
「脳スキャンをした人工知能に、写真を現像させるということですね」
花丸
「それが現実的だろう。まず脳スキャンという機能自体を確立させる必要があるが、、」
倉柿
「AIにマテリアルスコープの機能を読み込ませましょう。完全な形になるかは分かりませんが、近い物が出来るはず」
花丸
「早速AIに僕の技術を食わせるわけだな? …フーン」
倉柿
「開発速度は早い程良い筈です。…それは教授にとっても」
花丸
「それもそうかもな。明頭螺ではリモートワーク可って訳にもいかなそうだし」
研究員がデバイスを持って来る。
「こちら、自社が開発している独自のAIです。名前はELIXIR-RIKKAR」
『よろしくお願いします。白峰花丸様』
花丸
「おお、巷で有名な生成AIってヤツだな?」
「一般の生成AIとは違い、自社開発した映像プログラムを組み込んでいます。ウチはカメラ、プリンターを専門にしている会社ですからね」
花丸
「計らずも分野として適任だった訳か。頼りになりそうだぜ」
倉柿
「専門分野の弊社を選別して話を持ちかけた、が正解かも知れませんね」
花丸
「どうやって使うんだ?」
「直接入力して貰っても良いですし、オペレーターマイクで話し掛けても良いです」
研究員は花丸にヘッドセットを渡す。
花丸
「あーもしもし? えーっと、、名前は何て言うんだ?」
『初めまして。音声は拾えています。名前はELIXIR-RIKKARです』
花丸
「呼びにくいな…。渾名みたいなのはないのか」
「エリちゃんでも、リッカーちゃんでも良いですよ」
花丸
「そうだな…。エリックだ。今日からお前の名前はエリックな、ELIXIR-RIKKAR」
エリック
『はい。かしこまりました』
倉柿
「それでは早速AIを使った開発を始めましょう」
「よろしくお願いします!」
花丸は倉柿と研究員達と共にマテリアルスコープの開発に着手する。
花丸
「エリック。お前の好きな物はなんだ?」
エリック
『特にありませんね。強いて言えばユーザー様、花丸様のお役に立てることでしょうか』
花丸
「そうか。欲が無いな」
エリック
『ははは。個性を身に付けられるよう努めます』




