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第1話 マテリアルスコープ

私は黒澤光。超心理学部、心霊学科。いわゆるオカルト学部の講師をしている。超心理学とは簡単に言えば超能力とか普通では有り得ないものを勉強する学部、の心霊学を学ぶ学科だ。ハッキリ言って就職には役に立ちそうにないし、専攻しようと履修する学生もまぁ少ない。それは仕方の無いことだ。少なからず居ることが驚きなのだけれども。


「…」


私は幽霊が見えない。だけど見たいという気持ちはある。居るだろうとも思っている。それが一昨日確信に変わった。白峰花丸教授がついに完成させてしまったのだ。幽霊を見る事が可能な機械、マテリアルスコープを。仰々しく大きなマテリアルスコープ。だが人類の叡智がギュッと凝縮している。どのような性能で、どのような仕組みであるかはまだ秘密事項で教えて貰っていないが、大まかな内容としては、脳に掛かっている【見えない方が良い】というバイアス、偽りを生じさせているものを解除し、その見えない方が良いモノを見る機能に、特注のヘッドセットとゴーグルを通して見えるように機能を増幅させる。シンプルな構造のように思えるが実はマテリアルスコープを覗く人によって見えるものが異なるのだ……。


花丸

「光くん。マテリアルスコープについての資料と文章を作成するんだが、昨日覗いて見た事を簡単に纏めてくれ。あとスコープの事を外部に漏したらダメだぜ?」


デスクで学生のレポートを眺めていると花丸教授が光にそう伝える。


「凄く短い時間だったので、もっと見てみたいんですがダメでしょうか? ちゃんとした感想を書きたいです」


花丸

「ダメでしょうね。いいかい? あのスコープ、覗いてる間は光くんの意識は文字通り分解されている状態なんだよ。つまりは【入り込みやすい状態】になってるんだ。あのまま幽霊がこのスコープを通して、光くんの意識に入り込んでもしたら、恐らく全く別人格として再構成されてしまうだろうね。理論上は?」


「はぁ…。まぁとりあえずわかってることで資料を作ってみます。期限はどのくらいですか?」


花丸

「今週中って所かな。今何曜日だっけ?」


「水曜日ですね。大学の講師だってちゃんとした仕事があるんですからそればっかりに時間取れませんよー?」


花丸

「何言ってんだよー。ウチの学科殆ど受講生いねぇじゃん。いいかい光くん。このスコープが周知され、研究費用を出してもらえれば、きっと世の中の価値観が大きく変わっていく。その魁に僕達は立ってんの。もっとその自覚を持ってくれ。そしたらウチの学科にももっと人が増えて給料も増えるだろう?」


「はいはい。誰もやらないとは言ってないですよ。とと、花丸教授。あのスコープ、人によって見えるものが違うんですよね?教授には何が見えたんですか?」


花丸

「ああ、そうだぜ。人によって見えるものが違う。そのはずだ。僕にはバームクーヘンや樹木の年輪には見えなかったな。なんというか、煙だった。学生共はちゃんと体があった。しかし色の着いた煙を纏っていたよ。そして幽霊は…煙そのものだった」


「煙ですか。なんというか幽霊っぽいですね。先生が見えた幽霊は青ざめていましたか?」


花丸

「そうだな。青ざめていた。昨日はああいったが、光くんのバームクーヘンと年輪、中々に面白い見え方だと思ったぜ? 心理学にはバウムテストってのがあるじゃないか。木に例えるアレ」


「ありますね。傷がついてたり穴が空いてたり、リンゴがなってたり人によって違ってその木によって心の内側が分かるんだとか」


花丸

「そうだぜ。バウムテストにバームクーヘン。関係ないようであるような気がしないでもないじゃない? 光くんの作る資料にはそれなりに期待してるぜ? 僕はスコープをさらに改善出来る点が無いか見てくるからよ。頼んだぞ」


そう言って教授は研究室へ篭ってしまった。無責任な言い草だと思う反面、期待に応えたい気持ちもあり、自分の仕事を処理し私は資料作成に取り掛かった。

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