第11話 地下モノレール
車で1、2時間程経っただろうか。財団の研究施設と思われる場所にたどり着く。
山茶花
「あ、ここからまだ続きますよ。1度地下へ降りてもらってさらにモノレールで移動します。退屈させてしまって申し訳ありません」
花丸
「いや。大丈夫だ。地下にモノレールね…」
花丸は困ったように頭をかいた。マテリアルスコープは何とか運び出せる程度の大きさではある。しかしナイトダイバースコープはどの程度の大きさのものか分からず、例えマテリアルスコープやナイトダイバースコープを回収したとしても開発資料は既に残されているだろう。この施設そのものから全ての情報、機材を持ち帰れる自信が無くなってきた。
山茶花
「どうされました?不安ですか?」
花丸
「地下が少し怖くてな。地震があったら生き埋めになっちまうんじゃないかなって」
山茶花
「ご安心を。施設の外殻に強力な磁力を発生させ浮いた状態にしているのです。故に地震があったとて決して崩壊することはありません。マグニチュード7.8の揺れでテスト済みです。いずれも極々僅かな揺れで安全性はクリアしています」
花丸
「そ、そうか。なら安心だな」
特に関心のある話ではなかったが、花丸は話のインパクトで少し驚いた。地下施設は磁力で浮いているらしい。
山茶花と花丸は車を降りて施設に入ろうとする。
職員
「山茶花さん!不審な人物の追跡を確認し、捕らえました」
山茶花
「ん、誰だ?」
職員
「黒澤光と名乗る女性です。自家用車に乗ってずっと着いてきたようです」
山茶花
「追い返すんだ。抵抗するなら警察に…」
花丸
「光くんが…?待ってくれ、僕の助手だ」
山茶花
「え、ああ確か。待て。黒澤氏をここへ連れてくるんだ」
職員に連れられ光がやってきた。
花丸
「お、おい。付いて来たのか」
光
「はい!是非ご一緒したくて。だって気になるじゃないですか」
山茶花
「花丸教授の助手の方でしたら…。分かりました。許可しましょう。きっと研究のお役に立ってくれるはずです」
山茶花はニヤリと微笑んだ。花丸は微笑む山茶花のことが少しだけ気になった。
花丸
「意外とじゃじゃ馬な所があるよな。ここが軍の基地なら撃たれていたかもしれないぞ?」
光
「手前のプレッツェルン財団の液晶工場なら見学会もやってるはずなので大丈夫だと思いまして。良かったー。中に入れて貰えるんだ♪」
光は嬉々として花丸の側へ駆け寄った。
山茶花
「ちょっとしたアクシデントがありましたが気を取り直して行きましょうか」
一行は施設内部に入り、エレベーターに乗る。山茶花はB2を押すと地下2階へとエレベーターは下降した。
花丸
「地下にモノレールがあるらしい。そこからまた別の研究施設へ行くんだそうだ」
光
「人類は車で空を飛ぶものだと思ってましたが、空より地下へ地下へシフトしていってますね。この調子ならいつかブラジルまで掘り進んじゃうんじゃないでしょうか」
花丸
「もしそうなら国内旅行よりブラジルへ行く旅行の方が安くつきそうだな。なんたって落ちるだけだからよ」
山茶花
「あはは。中々夢のある話ですね。と言ってもこのまま順調に行けばいつか本当に達成できそうですけど」
地下2階へ辿り着く。エレベーターが開くとモノレールのステーションになっていた。中々綺麗である。
山茶花
「本来は物流の輸送に使うものですが、人が搭乗する場所もキチンと用意されています。切手は買わなくていいですよ」
花丸
「くくく、ちゃんと帰って来れるんだろうな?」
山茶花
「え?もちろん」
一行はモノレールに乗れば外で職員がパネルを操作すると直ぐに発車した。
花丸
「ふぅ…。ドキドキするぜ。どんな施設なんだろうな」
山茶花
「ふふふ。驚くと思われますよ。どうぞご期待ください」
光
「ワクワクしてきました。なんだか夢の世界へ旅立つような心持ちです」
山茶花
「そうですか?案外的を得ているかもしれませんね」
光は頭にクエスチョンを浮かべたが職員に機内食を出されればモグモグと食べる。花丸は両手を組んで作戦が無事に完了することを祈った。