3.1回表
酔いどれ軍団1番の小暮がバッターボックスに入る。主審がコールする。
「プレイボール」
りきてっくすのサインに頷いて律子がセットに入る。ウインドミルからの速球がど真ん中に決まる。主審の手が高らかに上がる。
「ストライク!」
バッターボックスの小暮は顔色も変えずに次の投球を待つ。
二球目。アウトコースの低め。小暮がバットを差し出す。三塁線へのバントだ。虚を突かれた呂彪が猛然とダッシュ。打球をすくい上げて素早く送球。
「アウト!」
間一髪間に合った。
「呂彪ちゃんナイスプレー」
キャッチャーのりきてっくすが盛り立てる。
2番青田。
律子は早いテンポで速球を投げ込んだ。0-2。追い込んでからの3球目。高めに浮きあがるライズボール。ストライクからボールになる球を青田は強振。空振り。
「バッターアウト!」
「ナイスピッチング!」
内野陣が律子に声を掛ける。
「なんであんな球降ってるんだよ」
ベンチに戻った青田は井川に怒鳴られる。
「あんなボール、うてないっすよ」
3番名取。酔いどれ軍団ではいちばんの若手だ。パワーもありそうだ。初級は高めに外れて1-0。続く2球目もボール。2-0。3球目はインコースギリギリ。名取はその球を引っ張ってファール。2-1。4球目タイミング外す緩い球。しかし、名取はそれを待っていたかのようにフルスイング。打球はレフトの頭上を越えていく。レフトの寛忠が打球に追いついた時には既に名取は三塁ベースを回っていた。先制点は酔いどれ軍団。
4番日下部。左バッターボックスへ向かう。
「日下部、もう一発かましてやれ!」
井川が叫ぶ。
りきてっくすは主審にタイムを要求して内野陣をマウンドに集める。
「りったん、今のは出合頭だ。気にするな」
「平気、平気。ところで鉄人、彼はどうなの?」
「ん…。ボクの筆加減一つなんだけど…」
「日下部さん! それはダメです」
地の文より先に日下部を戒めるまゆでした。
「とにかく、歩かせてもいいから際どいところを突いて行きましょ」
大橋がそう言うと、律子も頷いた。
初球アウトコースギリギリの球を日下部は見送った。
「ストライク!」
2球目次はインコースに外した球。しかし、日下部はそれを強振。打球は鋭いライナーで一塁線を襲う。ファースト日下部が飛びつく。打球は吸い込まれるように日下部のミットへ。
「アウト!」
「鉄人、サンキュー」
律子が日下部にウインクする。
「ハハハ、入っちゃったよ」
1回表酔いどれ軍団の攻撃は名取のホームランので1点で攻撃を終えた。