2.先発メンバーは?
一塁側ベンチ。
腕組みをして相手チームのベンチの様子をじっと窺う井川。ニヤッと笑って日下部を呼び寄せた。
「名取の調子はどうだ?」
「まあまあですかね」
「そうか。じゃあ、貰ったも同然だな」
「でも、なめてかからない方がいいんじゃないですか?」
「誰がなめたりするもんか。コテンパンにやっつけてやるさ。今日こそあの姉ちゃんの鼻を明かしてやる」
どっちがやられるのか楽しみだと思う地の文です。
「なんだと!」
純粋に試合を楽しみにしている地の文に切れる井川です。
「だから、彼女はあの律子さんじゃないですから」
「そんなこたぁどうでもいいんだ。とにかくやるからには勝つ」
対する三塁側ベンチ。
斉藤は先発メンバーを決めあぐねていた。
「ねえ、日下部さん、やっぱりピッチャーは経験者の大橋さんがいいですかね?」
「経験者と言っても野球です。大橋さんはショートがいいと思いますよ」
「では、ピッチャーは誰に?」
「律子さんでしょう!」
「えっ? 女性ですよ」
「だって、こっちは女性の方が多いですから。それに、向こうはじじぃばかりですよ」
女性が多いのは日下部が下心丸出しでお気に入りユーザーを選んでいるからだと思う地の文です。が、そう言われて齋藤は相手チームのベンチをちらっと見る。
「なるほど」
二人のやり取りを眺めていたりきてっくすが口を挟む。
「いっそ、日下部ちゃんが監督やったらいいんじゃない?」
「私もその方がいいかと…。日下部さんは実際にクラブチームの監督をやられている」
「齋藤さん、何を弱気なことを言っているんですか! それじゃあ、面白くないじゃないですか。ここは小説の世界です。であれば、齋藤さんの力が役に立ちます」
弱気な齋藤を日下部は励ました。しかし、実際、書くのは日下部だと思う地の文でした。
「ちょっと! ネタばらしはやめてくれるかな」
みんなが解かっていることを普通に言った地の文を確かめる日下部です。
審判が両監督を呼び寄せた。メンバー表の交換し、井川と齋藤は握手を交わした。
■酔いどれ軍団先発メンバー
1番 センター 小暮
2番 セカンド 青田
3番 ピッチャー 名取
4番 キャッチャー 日下部
5番 サード 井川
6番 ファースト 浦田
7番 レフト 志田
8番 ショート 中之島
9番 ライト 須藤
■なろうファミリー
1番 サード 呂彪弥欷助
2番 ショート 大橋秀人
3番 キャッチャー りきてっくす
4番 ピッチャー かみむら律子
5番 センター 水無月上総
6番 ファースト 日下部良介
7番 レフト 寛忠
8番 セカンド 桂まゆ
9番 ライト 桜葵
メンバー表を見た井川の表情が緩んだ。
「なんだ、向こうは女が3人も居るぞ。よっぽど人手不足みたいだな」
本当はすごく羨ましいくせにと思う地の文です。
「なんだと!」
地の文に心の中を見透かされて怒鳴って誤魔化そうとする井川です。
「うるさい! 黙れ!」
井川の声に反応した審判が井川を睨み付ける。そして、いよいよ試合が始まる。
先攻は酔いどれ軍団。なろうファミリーが1回表の守備につく…。