17.打上げ②
「本当に同じですね」
二人の日下部を見比べて弥欷助が言った。
その日下部に挟まれるように律子は陣取った。
「同じじゃないわよ。こっちが鉄人でこっちが偽物」
「さすが、かみむらさん。どこで見分けているんですか?」
「トラちゃん、まだまだだね。私くらいになると臭いでわかるのよ」
「へ~、そんなもんなんですか」
「呂彪さん、そんなこと、あるわけないでしょう! ここ!」
そう言ってまゆは片方の日下部愛用のライターを指した。そこには日下部の本名のイニシャルが入れられていた。
「日下部さんの本名って…」
弥欷助の顔面にロケットパンチ。
「それは内緒よ」
そう言って律子はウインクした。
料理が運ばれてきた。刺身の盛り合わせにサラダ、焼き鳥など。そして、特大のハムカツが名取の前に置かれた。
「さすがマスター、解かってますね」
ハムカツは名取の大好物で、いつもここで頼んでいる。早速、名取がハムカツに手を伸ばそうとした瞬間、律子がそれをかっさらった。
「タネウマ君にはもったいないわ。代わりにこれでも摘まんでなさい」
そう言って律子は名取の前に刺身のツマとわさびだけを置いた。
「え~、そんな殺生な」
井川は珍しくビールを片手にみんなの席を回っていた。
「今日はご苦労だったな」
上辺だけの労いの言葉を掛けながらチームメイトにビールを注いで回った。
「上辺だけじゃねぇよ!」
いちいち地の文にキレながら、自分のチームのメンバーをやり過ごしてから、なろうファミリーの方までやって来た。
「ねぇちゃん、相変わらず面白れぇな」
「部長さんには負けるわよ」
「そりゃあ、何よりの褒め言葉だ」
井川は「カッカッカ」と、笑い声をあげながら律子のグラスにビールを注いだ。そして、律子は井川に注がれたビールを一気に空けると、空いたグラスを井川に渡し、脇に置いてあった一升瓶を手にした。
「おっ! そうこなくちゃ」
井川も注がれた日本酒を一気に飲み干すと、再びグラスを律子の前に置く。
「いいわよ。どっちが先につぶれるか競争ね」
そう言って、一升瓶をテーブルに置いた。




