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選抜

「――次は新入生代表として、ギルバート=マクシミリアムより誓いの言葉を述べていただきます」


「えぇ!?」


「むっ……!」


「……」


 無反応なユリウスをよそに、四賀は驚きの声を挙げ、住良木もまた四賀ほどではないが反応をする。


「……面識でもあるのか?」


 ユリウスはこちらを向くことはないものの言葉を発すると、四賀は少々驚きつつもその質問に答える。


「はい、実は今朝ちょっといろいろあって……」


「私と手合せしただけだ」


「そんなストレートに――」


「そいつは強かったか?」


 ユリウスはその相手に対し、強かったかどうかを問う。住良木はそれに対し一切の脚色をすることなく真実を告げる。


「水属性中級呪文を唱えてきたが、制御が未熟であったため初級で難なく太刀打ちすることができた。正直言ってこの学校の代表になれるというレベルとは言い難い」


「そうか……」


 ユリウスはその言葉に納得すると、再び黙りこくったままになるが、今度は四賀が住良木に疑問をぶつける。


「正直言って、住良木さんが代表になるべきじゃなかったんですかね?」


「私も自賛するつもりではないが、代表があの男とは正直疑り深い」


 住良木が言うのももっともであった。アーデルハイドの末裔とあろう者がなぜ代表ではないのか。


 そんな疑問を抱いていると、例の自称最強の少年が最前列中央にあるマイクに向かっている姿が見える。ガチガチに緊張している姿はどこか滑稽であり、四賀としても笑いをこらえるのに必死であった。


 緊張した表情で、少年は誓いの言葉を立てる。


「わ、我々新入生一同はっ、文魔両導の校訓を体現し、この学校にふさわしい学生になれるよう誓いますっ! 新入生代表! ギルバート=マシミリアムッ」


 自分の名前を噛んでしまうところで四賀はお腹を押さえて下を向いてしまう。ユリウスはため息とはいかないものの飽きれた様子でその場を見届けていた。






 入学式を終え、次は適性検査に向かっているのだが、なにせ新入生全員に行うのであるのだから、廊下の並びも長蛇になってしまうのは致し方ない事である。


「長いですね……」


「ここで得意属性を視て、その後各属性ごとのプログラムを組むらしいからな」


 住良木と四賀が並んでいるなか、その後ろで注目を集めている人物がいた。


「あの人、本当に新入生?」


「一応校章は付いているけど、ちょっとねー」


「あの年齢で高校かよ……」


 二メートル超の大男が、四賀達のすぐ後ろに立っていた。それを後ろから見る者は嘲笑し、正面から見る者はその威圧感に圧倒されていた。


「どうしましょう……ついてきていますよあの人」


「別に気にする必要もなかろう。あの学長推薦の者だ。そう警戒する必要もあるまい」


 心配する四賀をよそに、住良木は列が少しづつ動くのを待っていた。しかし相変わらず長蛇は短くなることはなく、その長さを増していくのみだ。


「いったい何時になったら――」


「あぁー、その辺の人達ぃ……」


 気怠そうな少女が四賀達の方を向いて指をさしている。半目開きの目の下に大きなクマを作り、服の着方もダボダボで脱力感を前に出している。しかしその余裕ある服の上からでも形が分かるほど大きい胸を見ると、おおよそこの少女の栄養は全てそこへと言っているだろうなどという下らない妄想ができる。


「……私……ですか?」


 四賀がおそるおそる自分自身を指さすが、少女はため息をついて肩を落とし、その周辺と言わんばかりに指をクルクルと回している。


「後ろのおっちゃんと、あんた達二人は別の部屋で検査があるから、よろしくー。後はぁ……ギルバート=マクシミリアムだけかぁ」


 少女は住良木の手に無理やりメモ紙を持たせると、何やらブツブツと詠唱を始め、足元に黒い魔法陣を作りだしてはそれにずぶずぶと沈んでいく。辺りは四賀達の待遇に対して騒然としていた。


「おいおい、どういう事だよ」


「知らねぇけど特別待遇ってとこか?」


「あいつ等エリートってことかよ!?」


「それにさっきの女の人、生徒会の一人、サシャ=ドラグノフさんじゃねぇか?」


「マジかよ!? あのダウナーな感じが人気とされている人か!」


「違うだろ! あのジト目で踏まれたい人ナンバーワンだろ!」


「……何なのでしょうかね」


「よく分からんが、この紙に書いてある場所に行けばよいのだろう?」


 後ろの大男も来なければならないという事であるとか、あのギルバート=マクシミリアムも呼ばれているとかいう事は、今はそんなことはどうでもいい。


 ――何故一部の人だけが、別枠で検査を受けねばならないのかが一番の疑問点となっている。


「……貴方も一緒に来るのですよね」


「来いと言われた以上はそうなるだろうな」


 辺りのざわめきをよそにして三人は列を離れ、目的地である第三教室にまで足を運ぶことになった。




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