第78話 生まれ変わる
「あー、生まれ変わりたい」
ショウが悶えてる。
「いっぺん死ぬのか?」
「死んだら生き返れないだろう」
「生まれ変わるのなら死なないと」
「そういうことを言っているんじゃなくて。あいつ一皮むけたな、みたいなやつ」
「レベルアップしたいと」
「その通り」
俺はちょっと考えついたことがある。
殺し屋から奪った蟲毒スキル。
虫しかだめなのか。
アンデッドとかに応用できないのかなと思う。
でもここに志願者が現れた。
ショウよ、お前、勇者になってみないか。
「俺に任せておけ」
でかい水がめを用意した。
その中に毒虫を入れる。
「ショウよ。さあ入れ」
「えっ、俺がか」
「生まれ変わりたいのだろう。それには普通の方法ではだめだ。分かったよな。入れ」
「入れるかあ!」
「つべこべ言うな」
俺はショウを問答無用に水がめに叩き込んで蓋をした。
「【蟲毒】さあ殺しあえ」
ショウの悲鳴が聞こえてきた。
まさか虫に負けないよな。
それほど弱いとは思いたくない。
ショウの悲鳴が止まった。
俺が蓋を開けると、ショウが死んだような目で睨んでた。
瞬きしているから、生きている。
良かったな。
「ショウ、無事に生まれ変わったぞ。ステータスを出してみると良い」
「ステータスオープン。レベルが上がって、毒魔法が増えている。毒耐性もある」
「よし、第二ラウンド行ってみるか」
「もう辞めとく。十分強くなれたよ」
「まあ、遠慮せずに」
「あひぃぃぃぃ」
また蓋をして、スキルを掛けた。
悲鳴が止まったので、蓋を開ける。
「こんなのでレベルが上がってスキルが獲得できるんだから、感謝しないと」
「ステータスオープン。さっきよりレベルの上りが少ない。得たスキルも寄生のひとつだけだ」
回数を重ねると効果が薄れるらしい。
ありがちだな。
じゃあ、次はネズミにしてみよう。
猛毒ネズミじゃなくてただのネズミだから勝てるだろ。
「まだやるのか」
「このぐらいでは生まれ変わったとは言わない」
「くそっ、やってやるよ」
「その意気だ」
ネズミを使った蟲毒で、ショウは疾病魔法と病気耐性を得た。
次はゴブリンかな。
ただゴブリンで蟲毒をやるには水がめじゃ狭い。
街から出て穴を掘って、ゴブリンを100匹ほど入れる。
そしてショウが中に入った。
蓋をしてスキルを掛けると、蓋の隙間から毒と思われる物が立ち昇った。
毒魔法を使ったな。
自分に耐性があるなら使わないとだな。
ゴブリンの悲鳴が聞こえる。
そして、何も音がしなくなった。
ショウも死んだかな。
蓋を叩く音がした。
開けると血まみれのショウがいた。
ゴブリンは全員死んでいる。
「暗視、絶倫、殴打、毒耐性、病気耐性を獲得したぜ。もう良いだろ。もう良いと言ってくれ。頼む」
「勇者ほどなら強くしてやれるが」
「頼むよ。もう生まれ変わりたいなんて言わないからさ」
ここで辞めるから駄目なんだよ。
ドラゴンで蟲毒をやれば俺を除いて、人間でトップに立てるだろう。
こんどリリムが強くなりたいなんて言ったら蟲毒をしてやろう。
リリムだとゴブリンから始まってオーク、そしてオーガぐらいかな。
アンデッドの蟲毒はやってみよう。
いい加減数が多くなったから、精鋭部隊にしたいと思ってたところだ。
ショウがフラフラで街に帰って行ったので、ゾンビで穴を満たす。
「さあ殺しあえ」
戦闘音がしなくなるまで待つ。
開けると、鎧を纏ったスケルトンが立っていた。
ああ、ゾンビ達で殺し合うと肉が削がれて、スケルトンになるのか。
なるほど。
スケルトンナイトはなぜか俺に斬りかかってきた。
なんだよ。
蟲毒したらマスターに反逆するようになるのか。
くそっ、使えないな。
「【死霊魔法、従え】」
いっちょ前にレジストしやがって。
俺ぐらいのレベル差があるとレジストできないはずなんだが。
仕方ない。
聖刃スキルで滅ぼした。
何が起こったのかな。
原因が分からないことには対処のしようもない。
邪神に聞いてみるか。
オークを生贄にして聞いてみた。
『蟲毒スキルは魂の共食い』
答えはそれだけ。
だが、ヒントから推測は出来る。
ひとつの空間にいる生命が殺し合った時に、殺された方が魂を食われる。
生き残った方の魂が強化されるのだな。
で精神操作系とかの魔法に掛かりづらくなった。
なるほどね。
ショウは虫やゴブリンの魂を食って平気なのかな。
あいつのことだから、消化してしまいそうな気もする。
ショウがモンスターになったら、俺が責任もって治してやるよ。




