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最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第十八章 東端の調査

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伍:長命種

 私は右手を掲げた。


攻撃魔術インペタム!」


 高出力の魔力で刃を無数に形成し、フローリアン目掛けて飛ばす。


「へぇ? なかなか強い攻撃魔術だね」


 フローリアンは軽く右手を振り払う。刹那、私の魔力の刃は呆気なく散ってしまった。


「っ!」


 相手を強敵と見込んで、手加減はせずに攻撃魔術を放ったのに、これほどあっさり無効化されてしまうなんて。


氷結魔術コンゲラティオ!」


 続けて唱えた魔術によって、彼の足元から凍り始めるが、彼は表情一つ変えない。


「僕にはこういう魔術は効かないよ」


 その言葉通り、膝下まで氷が伸びたと思った直後、突然砕け散ってしまった。

 氷結魔術も強制的に解除されてしまったらしく、その後再び凍ることはなかった。


「……なら、こうするわ」


 私は腰の後ろに挿してあった短剣に手を伸ばした。眠らされた時に没収されなかったのは幸いだった。


斬裂魔術ビセクション!」


 剣に魔術を掛けて、脚に魔力を込めて跳躍する。

 水に浮いた葉の上では踏ん張りが利かず、地面より跳躍力が落ちたが、それでもフローリアンの頭上まで跳べた。


「おっと」


 男はひらりと後ろに飛び退き、そのまま空中に留まる。


「剣も使えるのか、ますますいいな。気に入ったよ」


 彼が何か仕掛けようと、右手を私に向けた、その直後。


 どん、と大きな爆発音が木霊した。

 あの樹上の城の方から。


「何だ? 今の音は……」


 フローリアンも驚いて振り返る。

 それから私を一瞥し、一瞬逡巡する素振りを見せたが、そのまま城の方へ向かって飛んで行ってしまった。


「……ラシェル……!」


 直感で、今の爆発音は彼女のあの剣が原因だと悟り、私も飛翔魔術を唱えて後を追いかけた。


 城に着く直前、樹の根の町を眼下に見下ろすと、フローリアンと同じように金髪に翠の瞳、耳の尖った者たちが生活をしているようだった。

 彼らの表情を見るに、とても穏やかで平和な町のようだ。


 ただ、民が穏やかだからといって君主もそうとは限らない。


 私は警戒を強めながら、城を目指した。

 と、城の一角から黒い煙が上がっているのが見えた。最上階の一番端の部屋だ。


 そこへ行くと、妙な光景が広がっていた。


 広い部屋の壁から天井にかけて、爆発で吹き飛んだように大穴が空いている。

 そこから中を覗き込むと、部屋の右手に木の柱が等間隔に並んでいて、それぞれ拘束されたクロヴィスとオスカーが縛り付けられている。


 そして部屋の奥には、やたらと露出度の高いドレスを纏った金髪翠眼の美女が、まるで玉座のような椅子に座って、虫ケラでも見るような目を正面に向けている。

 その視線の先には、大剣を構えたラシェルがいる。


 そして部屋の入口で、私より僅かに早く到着していたフローリアンが、やれやれと言わんばかりに額に手を当てている。


 と、奥の椅子に座っていた女が、私に気付いて忌々し気に眉を顰めた。

 なるほど、彼女がクロヴィスとオスカーを持ち帰ったフィリーという人物か。


「嫌だわ。もう一匹虫が入って来ちゃった」

「聖女様!」


 ラシェルが振り返り少し表情を緩める。

 私は彼女の横に並び、女を真正面から見た。


「クロヴィスとオスカーを返してもらうわよ」

「嫌よ。短命種にしては珍しく綺麗な顔をしていて気に入ったから、これはもう私のもの。アンタたちは消えて。目障りよ」


 あまりに傲慢な言い方に怒りを通り越して呆れてくる。


「聖女様、私があの女を押さえます。殿下たちの拘束を解いてください」


 ラシェルの言葉に、私は左手に立っていたフローリアンを一瞥した。


「そうしたいのはやまやまだけど、こっちにも厄介なのがいるのよ」


 彼は相変わらず、にこにこした表情でこちらを見ている。

 と、フィリーがフローリアンに視線を向けると小さく嘆息した。


「お兄様、虫けらを私の部屋に近付けないでってあれほど言ったのに」


 お兄様、つまり兄妹か。

 言われて見れば確かに面差しが似ている。


「仕方ないだろう? 足止めするつもりだったのに、城から爆発音がしたんだ。立場上駆け付けないといけないし」


 肩を竦めるフローリアンに、フィリーはラシェルを睨む。

 と、フローリアンがラシェルを見て何故か目を輝かせた。


「さっきの爆破は君が? その大きな剣でやったの? すごいね!」


 兄妹であまりに反応が違うことに戸惑うラシェル。


「ところで、君はあの場にいなかったけど、眠り花の香を嗅いでも眠らなかったのかな? もしかして特異体質?」

「そうよ。私には毒も効かない」


 ラシェルが真顔で答える。

 もしかしたらそうかと思っていたが、やはりそうだったのか。まるで前世の私の身体のようだな、そんなことを考える。


「へぇ! ますますいいね! 気に入ったよ!」


 フローリアンがラシェルを見る目に、嫌な予感がした。


「決めた! 君を僕の花嫁にする! フィリー、いいよね?」


 嬉々とした様子で妹を振り返る。フィリーと呼ばれた女は顔を顰めた。


「私は人間の女なんて嫌だけど、お兄様がどうしてもと言うなら好きにすればいいじゃない。私も好きにするし」

「おい! 勝手なことを言うな! そんなこと絶対に許さないからな!」


 オスカーが叫ぶ。


「あら、私の拘束から逃れることもできないのに、偉そうなことを言うのね。まぁ、そういう人間の男を屈服させることが最高の愉悦だから、強がりは大歓迎よ」


 フィリーは舌なめずり、うっそりと目を細める。

 彼女の翠の瞳には、あの昏い光が炯々としている。


 私は注意深く、クロヴィスとオスカーが縛り付けられている柱を見た。

 魔力が鎖のように二人を縛り上げているのが視えた。

 かなり強固だが、束縛魔術の類ではない。ただの魔力だ。


 ただの魔力による拘束を解除するには、それ以上の魔力が必要になる。


 フィリーもフローリアンも、魔力量は視えるだけでもクロヴィスとオスカーのそれを軽く凌駕している。


「……勝手なことばっかり。どの世界でもエルフってそうなのかしら」


 ラシェルが心底軽蔑するような目で呟いたのが聞こえた。

 どの世界でも、という言い方は気になるが、もしかしたら彼女はエルフについて何か知っているのかもしれない。


「これが最後の警告よ。二人を解放して。さもなくば、この城を破壊するわ」


 ラシェルが大剣を掲げてそう告げる。

 フィリーは立ち上がると、諸手を天へ掲げた。


「アンタ、いい加減目障りよ。消えてちょうだい」


 冷たい声色でそう告げた瞬間、強大な魔力の塊が、大砲で撃たれたかのように私とラシェルに襲い掛かってきた。


「っ! 防御魔術ディフェンシオ!」


 咄嗟に魔力の壁を私とラシェルの前に織り成して、それを受け止める。

 しかし、魔力の砲弾の方が威力が強い。ダメだ、破られる。


「っ! ラシェル! 避けて!」


 横に跳んで回避しようとした直後、別の魔力に覆われたのを感じた。

 直後、目の前が真っ暗になった。

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