父狼の旅 3
シマウマとの旅のとちゅうで、さばくという場所につきました。そこで、せなかにこぶがある生き物とあいました。らくだ、です。
『やあやあ、そこの方々』
とつぜん声をかけられて、父狼はおどろきました。
シマウマはおくびょうなので父狼のうしろにかくれてしまいます。
『なにか、用か?』
『いやね、そんなこわいかおをして旅をしているなんて、なにかりゆうがあるかと思ったのさ。ぼくはここにずっと住んでいるんだ。毎日こうやって歩いている。だから、このさばくのことなら、いろいろしっているよ。さあ、ききたいことがあるなら言ってみな』
父狼はらくだを、めずらしそうに見ながら、こたえました。
『だったら、息子を見なかっただろうか。とてもきれいな、あおい毛をしているんだ』
『ああ、ああ! 知っているよ、見たよ、とってもめずらしいすがただったからおぼえているんだ。あっち、あっちに行ったよ』
『それはありがとう、たすかった』
父狼はしんせつにしてくれた、らくだにおれいを言って、らくだがおしえてくれた方へいきました。ですが、いくら歩いても砂ばかりで、けしきはかわりません。何かおかしいな、と思いはじめたとき、ふたたび、らくだと出会いました。
『やあやあ、そこの方』
『おまえは、私に道を教えてくれた、らくだか。どうしたことか、私はもどってしまったのか? おまえの言うとおり、まっすぐすすんでいたのに』
『おや、なにをおっしゃっているのですか? わたしはあなたにはじめて会いましたよ』
父狼から見れば、らくだは、あのらくだとそっくりです。見たことがない生き物だからか、みわけがつきません。
『そうか、それはわるかった。では息子を見なかっただろうか、とてもきれいなあおい毛をしているんだ』
『ああ、ああ! 知っていますよ。見ました、とってもめずらしいおすがた、だったのでおぼえていますよ。あちら、あちらへ行きました』
『それはありがとう、たすかった』
父狼は親切にしてくれた、らくだにおれいを言って、らくだがおしえてくれた方へといきました。
『なにかおかしいですね』
シマウマがつぶやきましたが、父狼はなにもいいません。
いくら歩いても砂ばかりで、けしきはかわりません。そろそろのどがかわいてしまいました。
とてもあついです。父狼はあついことが苦手でした。それでもあるきつづけていると、ふたたびらくだと出会いました。
『やあやあ、そこの方』
『おまえは、私に道を教えてくれた、らくだか。どうしたことか、私はもどってしまったのか? おまえの言うとおり、まっすぐすすんでいたのに』
『おれっちがそんなことを? そんなばかな。おれっちがあんたにあったのは、今がはじめてだぜ?』
父狼から見れば、らくだは、らくだたちとそっくりです。見たことがない生き物だからか、みわけがつきません。
『……そうか、それはわるかった。では息子を見なかっただろうか、とても』
『とてもきれいなあおい毛をしているのかい?』
『ああ、そうなんだ。知っているか?』
『ああ、ああ! 知っているに決まっているさ! とってもめずらしい見た目だったからな! あっち、あっちの方に行ったぜ!』
『それはありがとう、たすかった。おっと失礼』
父狼は、つかれてしまったみたいで、たおれそうになりました。らくだによりかかってしまいます。
『あいた!』
『すまない、つい爪を出してしまった。ゆるしてくれ』
『……まあ、いいさ。気にしなさんな、息子さん見つかるといいな、きひひ』
らくだに礼を言って、父狼はらくだの言っていた方へとすすみました。
『やっぱり、なにかおかしいですね』
父狼はなにもいいません。
しばらくすすむとまた、らくだがいました。
『やあやあ、そこの方』
『おまえは、私に道を教えてくれた、らくだか?』
父狼が聞くと、らくだはくびをよこにふりました。
『おや、なにを言っとるのかね。わしゃあ、あなたにはじめて会ったんですわな』
父狼はらくだをかみました。らくだはとてもおどろき、いたがりました。
『いてて、なにをするんだ!』
『おまえのからだには、わたしの爪のあとがある。おまえは、あのらくだだな。わたしをだましていたんだな?』
父狼はおこりながら、らくだをかみました。
『わ、わるかった。今度はほんとうのことを言う。あっちだ、あっちに行った!』
『うそかもしれない、目的地までついてきてもらうぞ』
父狼がおこりながら言うもので、らくだはしかたなく父狼といっしょにさばくを進みました。らくだのことばどおり、さばくはなくなって、森になりました。
父狼はそこでらくだをたべてしまいました。だまされてたくさん歩いたから、とてもおなかがすいていたし、のどがかわいていたのです。それに、父狼はとってもおこっていたのです。
シマウマはそんな父狼をおそれていました。けれどシマウマは、はなれません。
父狼はいいます。
『こわいのならば、どこかへいくといい』
『いいえ、私はあなたのそばにいます』
父狼のからだはあかくそまっていました。
とてもこわいすがたですが、シマウマは父狼とわかれようとしません。
そんなシマウマを、父狼は食べることはありませんでした。
そして父狼は、息子をさがす旅をつづけました。




