おまけ短編10 谷を倒す日まで
お母さんは、谷に食べられてしまった。
以来、私は人間の姿で暮らしている。
私は、まだ子供だ。
1人では生きていけない。
ここの人間たちは子供にとても親切で、今は養子として暮らしている。
でも、いつかあの「谷」を倒したいと思っている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ある日、失敗して崖の中腹の洞窟で休んでいたら、お人よしの人間が助けに来てくれた。
だけど、そこは風がとても強く、私たちは巨大樹の頂上まで飛ばされてしまった。
その時、彼女のほうきも飛ばされてしまった。
人間は、ほうきがないと飛べない。
私が本来の姿に戻れば飛べる。
だけど、私たちは人間に狩られる存在だ。
元の姿に戻って彼女を助けても、逆に狩られるかもしれない。
巨大樹の根元には、魔法師団とかいう連中が集まっていたのだから。
とはいえ、せっかく助けてくれた人を見殺しにするのは忍びない。
仕方ないか。
そう思った矢先、奇妙なものが近づいてきた。
それは巨大樹を垂直に昇り、頂上までやって来た。
私たちを巨大樹の根元まで届けてくれた。
助かった。
これで私は、まだ人の姿で暮らしていける。
巨大樹の根元には、私を養子にしてくれた母が迎えに来ていた。
良かった。
本当に良かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あれから20年。
今でも忘れられない光景がある。
巨大樹を垂直に昇ってきた、あの人の姿だ。
私は魔法学校を卒業し、その人の弟子になることができた。
今は、その背中を追いかけている。
彼女は、常識を覆すような魔法を次々と教えてくれた。
ノエル師匠と一緒なら、谷を倒せる気がする。
だから、それまでは――
私が竜だと、バレないといいけれど……。
お読みいただき、ありがとうございます!
短編シリーズも、これにて完結となります。
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