表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛べない魔女と古ぼけたほうき  作者: 秋月心文


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/6

プロローグ

「そんな……」


 魔導ビジョンが、私の親友リノアの危機を知らせていた。


 彼女の胸には、小さな子供が抱かれていた。

 彼女がいる場所は、巨大樹の頂上。


 巨大樹と呼ばれているが、その姿は木というより塔だった。

 枝ひとつない幹が、切り立った崖のように空へ伸びている。


 別な場所で子供を助けた後、強い風に流され、あそこへ飛ばされたのだろう。


 巨大樹の周囲では、激しい風が吹き荒れている。


 レンジャーたちは幹に取り付き、崖を登るように救助へ向かう。


 けれど、その巨大樹がゆっくりと傾き始める。


 二次遭難の危険あり――


 救助は中止された。


 魔導ビジョンが超望遠レンズで捉えた映像を通し、刻一刻と状況を伝えている。


――魔法師団の方々が現れました――


――風が強く、近づけません!――


――風を制御し、巨大樹の根元に到達しました!!――


――これなら助かるでしょう!!――


――彼ら以上に高く飛べる人はいませんからね――


――あぁ!! しかし届きません!!――


――これ以上、高く飛べないようです!――


「リノア……」


 私は魔導ビジョンに映る親友の姿を見守っていた。


 お願い!


 誰か!


 誰か、彼女を助けて!!


 私にできることは、もう祈ることだけだ。


 とても、もどかしい。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 手元で、喫茶店で使っている新しい「ほうき」が、トントンと私を叩く。


 慰めてくれているのだろう。


 やさしいコだ。


 私は「ほうき」に話しかけた。


「ありがとう。あなたはやさしいね」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 リノアにもらった「ほうき」が、私の服を何度も引っ張っている。


 まるで、


「早く行こう」


 そう言っているみたいに。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ふいに新しい「ほうき」が私の足元へ潜り込み、

 気づけば私はその上にまたがっていた。


 飛ぼうとしている。


 誰もこのコに飛び方なんて教えていないのに。


「え?」


 思わず声が漏れる。


 フワッと体が浮いた。


 その時、飛ぶたび必ず少しだけ左へ流れる、あのコ特有のクセを見せた。


 何年も一緒だった私だけが知っているクセ。


 あぁ、あのコだ。


 間違えるはずがない。


 私が世界で一番大好きな相棒だから。


 こんなに近くにいてくれたのに、気づかなかったなんて。


 私の気持ちを察したのか、「ほうき」がぷるる……と震えて応えてくれる。


「そうだね。行こう!」


「ありがとう。もう大丈夫!」


 私はリノアからもらった「ほうき」も一緒にまたいだ。


 リノアを連れて帰るには、もう1本必要だった。


 「ほうき」は1人乗りだから。


 私は2本の「ほうき」をまたぐ。


 新しい「ほうき」に声をかけた。


「このコに飛び方を教えてあげて!」


 今度は、リノアにもらった「ほうき」にも声をかける。


「お願い、リノアを助けたいの。


 ぶっつけ本番で申し訳ないけど、彼女まで向かう間に、このコの飛び方を覚えて!」


 2本の「ほうき」は互いに、ぷるる……と震えて応えてくれた。


「ありがとう」


「それじゃ、行こうか!」


 私は2本の「ほうき」をまたぎ、空へ飛び出した。


 魔法師団でも届かない場所へ。


 親友を助けるために。


 私だけが知る、本当の飛び方で。

--------------------------------------------

※※ 次回 6/21 18:00 公開 ※※

--------------------------------------------

お読みいただき、心より感謝申し上げます!


 数ある作品の中から

 この物語を選んでいただき、

 本当にありがとうございます。


 少しでも楽しんでいただけましたら、

【ブックマーク】や【ポイント】で、

 応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ