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海は俺の扱いに慣れている。 こう言うと言い方は悪いかもしれないが本当にそうなのだ。
空が俺になんの遠慮もなしに接しているのとは逆に海は一歩空より下がりいつも俺の行動を観察して俺が何を求めているか常に伺っている。 空に対してもそうだけど。
細かい所で海は俺や空に気を利かせる。
昔の勝気な海に戻って来ていてもそこだけは変わらない。
朝、海の声が聞こえて目が覚める。 ああ、そうか。 今日は海が学校休んで俺を看るって事になってたんだっけ? 今は7時半……
学校に行かないならまだ寝てていいや。
「陸、起きないの?」
「どうせ学校行かないんだからまだ早いだろ?」
「まぁ陸には安静にしてて欲しいしいいわ。 私側にいるから何かあったら言ってね?」
「ふぁい……」
海の顔をチラッと見ると俺の様子を海はジッと見ている。 そんな顔を見て俺は再び目を閉じる。
しばらくしてまた目が覚める。 すると海は本を読んでいた。 いや、違うな。 英語の教科書を読んでいるんだ。 休んだ分自習でもしているのか?
そういう所は真面目だよなぁ。 ベッドの横でそんな事をしていた海に向けていた視線を時計に方向を変える。
8時50分、まだ早いかもなんて思ったけどトイレに行きたくなったのでとりあえずベッドから出る。
「おはよう。 どうかした? トイレ?」
「その通り」
「体起こすんだったらトイレから戻ったらそのままベッドに寝ないでテーブルに座ってね? サンドイッチ作って来たから食べよう? 用意しとくから」
「ん? ああ、サンキュー」
俺が体を起こしたタイミングでそう言ってくる海はやっぱり気が利くなと思う。 今の気分じゃリビングに行って朝ご飯食べる気にもならないし。
と言っても海がなんでも先回りしようとするから俺はグータラ野郎になってしまうんじゃないかとも思うけど。
トイレを済ませ部屋に戻るとサンドイッチがテーブルに並べられていた。 これなら片付けもいらないし片手間で食べれるし要領いいよな、海らしい。
「手はちゃんと洗った?」
「ガキじゃあるまいし洗ったに決まってるだろ?」
「まぁ洗ってなかったら食べさせてあげようかと思ったけど…… じゃあ召し上がれ」
こんな風に言われるのはいつもの事。 でも海とのこんなやり取りは嫌いじゃない。 海もそれをわかっていて俺をからかっている。
「美味しい?」
「海の作る物なら美味しいに決まってるだろ?」
「うん、陸にそう言ってもらえるように頑張ってるもん」
海は満足そうにテーブルに乗せていた両腕に頭を置き上目遣いで俺の食べる姿を見ていた。
「いっぱい食べてね?」
「海は食べないの?」
「私は家で食べて来たし、陸が食べてるとこ見てたいし食べちゃいなよ?」
「じゃあ遠慮なく」
その間海はジイ〜ッと俺の食べている姿を鑑賞していた。
「ふう、ごちそうさま」
「陸美味しそうに食べるから見ていて楽しいね」
「そんなもんか? 俺の食べてる姿なんて見てても面白くもなんともないと思うけどな」
「作り甲斐があるって事よ、それにどうせまた寝ちゃうんだし見てたの。 私横で勉強してるから」
流石俺の行動わかってるな。 食べたらすぐ寝て豚になっちゃうよ? なんていつもは言われるけど怪我してるせいか今日は一段と優しいな海の奴。
目を瞑り部屋にはペンを走らせる音とページを静かにめくる音が響く。
「ん? うるさい?」
「いや、眠くなるまで海でも見てようかなって」
「ふぅん? じゃあ私も見ててあげようか?」
「いや。 それは逆に眠れなそう」
「フフッ、自分だけ見てたいなんて勝手なんだから。 でも今日は陸の事甘やかしてあげるからいいよ」
それでなくても毎日朝迎えに来たりとかご飯もよく食べさせられたりと甘やかされているような気がしないでもないが海がそれでいいならいいか。
海といると時々ビックリさせられるけど基本穏やかな時間を過ごせて落ち着けるしな。
そしてウトウトしだす。 あー、もう寝そうだ。 俺は意識が途切れそうになった時海が「おやすみ」と俺に囁き唇に何か触れた気がした。 まさかキスしたのかな?




