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海の家で夕飯をご馳走になり一息ついて考えた。
俺は2人に対してもうどうのこうのなんて言ってられないと思った。
ただの幼馴染をこれからも通そうなんて大甘だった。 俺の方が勝手だった、俺だって海と空を好きなんだ、ブレーキが掛かっていたのは2人とも好きだという事、それと海と空が2人のうちどちらを選んでも後悔しないと言っていた事。
それがずっと引っかかっていた。 絶対悲しい思いをさせてしまう。 だから……
「どうしたの? 今度は陸が深刻そうな顔をして」
そんな俺を海と空が心配そうに覗き込んだ。
「なあ、怒らないで聞いて欲しいんだけど……」
「「うん」」
「俺、海と空事が好きだ。 幼馴染としてじゃなく女の子として。 だけど2人のうちどちらかなんてまだ今の俺には決める事が出来ないんだ、だからさ……」
突然海と空に押し倒された。 いきなりだったので殴られるのかと思ったら違った。 2人は俺の事を抱きしめていたんだ。
「やっと…… やっと私達の事好きって言ってくれた」
「りっくんあたし達がプロポーズしてから好きってはっきり言ってくれなくなったよね」
「途中からわかったの。 陸は言わないんじゃなくて私達が言えなくしちゃっていた事、陸は私と空を傷付けたくなくて凄く窮屈な思いさせてたよね? ごめんなさい」
「えーと…… 謝らなくていいんだ、俺は自分がそれで嫌な思いをするのが嫌だっただけかもしれないし」
「でもりっくんだってその考えの中心にはいつもあたしと海ちゃんが居たでしょ? あたし達もりっくんのそういう気持ちをわかってたけど自分を優先させて悪い所あったなって思う」
「うん、空の言う通り。 だからお互い様って事にしよ? 陸は私も好きだし空も好き。 今はそれでいい」
「海、空…… ありがとう」
次の日朝学校に着くと早速俺達は佐々木の所へ行き佐々木を屋上の階段の踊り場に連れて行った。 佐々木はわけがわからなくて少し戸惑っていたようだった。
「ええと…… どうしたの?」
「姫花、あたし姫花の事ちょっと苦手」
「え?…………」
空がストレートにそう言ったので佐々木は下を向いて黙る。 謝るんじゃなかったの?
「私は佐々木さんの事嫌い」
空に続き海も佐々木を追い詰める、佐々木は唇を噛んで拳を握りしめる。 おいおい、謝る雰囲気じゃなくなってるよ……
「海、空、それじゃ……」
「陸は黙ってて」
「私、やっぱり海ちゃん空ちゃんにとって邪魔者だよね? 私がいっぱい2人に嫌な思いさせちゃったみたいでごめんなさい。 でも嫌われついでで悪いけど私言いたい事があるの、神城君」
「え? 俺に?」
「うん…… 私神城君の事が好き。 海ちゃんと空ちゃんが神城君の事が好きだってわかってたしそんな2人とも私仲良くなりたいなって思っててずっと言えなかった。 私海ちゃんの言う通りポッと出だから、それにずっと神城君と居た海ちゃんと空ちゃんに敵うわけないって思ってて言うのが怖かったの」
海、空、佐々木もそんな風に海と空に対して思ってたんだ。 敵わないって感じてたのは佐々木も一緒だったじゃないか。って他人事じゃない、俺の事だよな。
「佐々木……」
俺が言おうとすると海が手を出して待ってという風に俺の言葉を遮った。
「やっと言ったね。 てかよくも言ってくれたわね? 佐々木さん。 そんなのわかってたけど」
「海ちゃん…… 私ッ!」
「待って姫花。 あたしも姫花がりっくんを好きだってわかってたよ。 それであたし、自分を勝手に姫花と比べて敵わないって思い込んで落ち込んでたの。 姫花も同じ思いをしてるかもしれないって事考えないで」
「私も陸と空、3人いつも一緒でそこに割り込んで来た佐々木さんが許せなくてずっと佐々木さんを敵対視してた。佐々木さんはそんな私でも仲良くなろうとしてくれたよね? だから私も一歩佐々木さんを見習って佐々木さんが、その…… まだ仲良くなりたいって思ってくれてるなら仲直りしたい」
「海ちゃん、空ちゃん…… うん、仲直りしたい。 ごめんなさい」
「こっちこそごめんなさい。 でも私が一方的に佐々木さんに酷い事言っちゃってたから私が悪かったよ。 それとね、陸はあんな風にしてるけど佐々木さんの事は少し気になってるよ? 陸は意外と私達以外には冷たいの。 でも佐々木さんの事は他の子と違って私達の仲が拗れるくらい心配してるもん。 陸は今まで私達以外の他の子には上辺だけでそこまで気にしないし」
最後に海は俺に酷い事を言った気はしたが、海は佐々木の手を取って優しく包んだ。そしてその上から空も。
「佐々木さん、陸の事好きなら私も負けないよ?」
「あたしも! 海ちゃん姫花に負けないから!」
「あ、ありがとう。 でもこれって……」
佐々木が俺の事を不安そうに見た。 そうだよな、こんなのおかしいよな? 二股じゃなくて三股だもん。
「あのさ佐々木、ちょっとややこしくてごめんなんだけど俺海と空2人の事が好きなんだ、何言ってるの?って思うかもしれないけど俺自身2人の事が好きでどっちが好きかなんて決めれてないんだ。こんな奴でガッカリだろ?」
「じゃあそこに私が入ったら3人って事になるよね? それでもいい? 海ちゃんと空ちゃんも……」
佐々木は海と空を交互に見た。
「いいよ? 私負けるつもりないし」
「あたしも右に同じ!」
「あ、ありがとう。 私も神城君に好きになってもらう、神城君は大変かもしれないけど神城君の事が好き。 だから私も頑張るから」
「えっと…… 佐々木はそれってつまりそれでもいいって事?」
「うん! それとちゃんと姫花って呼んで欲しい。 私も陸君って呼ぶから」
「いいのかな? これで…… でもわかった。姫花こんな俺でごめんな」
「ううん! むしろもっと陸君の事知りたくなってきた」
「良かったね、姫」
「え?」
海が佐々木を名前で呼んだ。略してるけど……
「遠慮しないからこれから姫よ。 姫花だと空と被るしね?」
「あはは、相変わらずまだ姫花にはトゲトゲしいね」
「でも嬉しい」
佐々木…… いや、姫花はそんな俺達にニッコリと微笑んだ。 姫花もちょっと変わってるけど丸く収まったのかな?




