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あれから海を捕まえ今は海の部屋の中だ。 海は落ち着いたけどダンマリしたままだ。
「海ちゃんご飯は?」
「いらない」
「あはは、あたしと同じだね」
「陸もまだ食べてないの?」
「海と仲直り出来たらかな」
「何よそれ…… 幼馴染ごっこに仲直り必要なの?」
幼馴染ごっこ…… 前に志穂もそんな事言ってたな。
「ごっこじゃなくて俺達本当に幼馴染だろ?」
「どうだか。 そうだとしても幼馴染じゃなければ私達別に仲良くなんてなかったんじゃない?」
「海ちゃん、そんな悲しい事言わないでよ」
「空、ようやく私が味わった挫折を経験したようだけどそれで私と同じ位置に立ったと思わないで」
「海ちゃんが味わった…… 挫折?」
「陸と変わらず仲良かった空には私の事なんてわかんなかったわよね? 1度佐々木さんにコテンパンに敗北感味わされて陸にまで心配かけて」
「そんな…… あたし海ちゃんにそんな事」
「空にそんなつもりなくたって私は空にそういう思いをさせられたの。 陸と遊ぶのは空ばっかりで私は陸と空の後ろからずっと2人を追いかけて! おまけに空は自分のやりたい事して! 陸だってそんな空を応援してた。 私じゃなくて空を!」
海は吐き出すように言った。 小学生後半辺り俺は確かによく遊び相手に空を選んでいた。 それは空は女の子だけど男の俺の遊びについてこれたから。
海が俺と空についていけなくなった頃、空と遊んでいる時海は大抵俺達を見ているかその間勉強とかをしていた。 それでも海はなんでもないよ? そんなバカっぽい事に付き合ってられないとか言っていたけど。
「だから私は空の分野じゃない事で頑張って陸と空について行こうとして自分なりにようやく出来るようになったって思った! 私はこれから空とは違うけど空には出来ない事で陸を振り向かせようって。 なのに空はそんな私の気持ちなんかわからないで一緒に陸を振り向かせようなんて言って。 でもその時は嬉しかったよ? やっぱり空は昔と変わらず私を対等だと思ってくれてるんだなって。 私は頑張ってた甲斐があったなって。でも笑っちゃうわ、私なんかそんな一緒になんて発想なんかなかったわ」
「海ごめん、俺ってその時はガキでさ、海がそんな風に思っていたってわからなかった」
「ごめんなさい海ちゃん、あたしも…… あたしばっかり好きな事してたせいでそんなに海ちゃんが思い詰めてるって気付かなかった。 海ちゃんはあたし達よりどんどん大人っぽくなって行ってりっくんやあたしとは付き合ってられないのかな?って…… なのに姫花の事であたしが落ち込んでるの見て海ちゃんはがっかりしたんだよね?」
「そうよ! 私が頑張って陸や空に追いついたと思ったら空はあんな事で簡単に佐々木さんに負けを認めて! 私バカみたい。 空の次は佐々木さん!? どうして私の邪魔ばかりするの? よりにもよってそんな佐々木さんは私や空よりなんでも出来ちゃうの? 佐々木さんなんか大っ嫌い! 空も同じくらい大っ嫌い! 空や私が居るのにそんな佐々木さんに惹かれそうになってる陸も大っ嫌い!!」
海はへたり込んで下を向き泣き始めた。 そんな海を見て空も目に涙を溜めてグズり出した。
「あ、あたしそれでも海ちゃんの事大好きだよ? 海ちゃんがあたしを嫌いになってもあたしは海ちゃんの事大好きだよ? 海ちゃんに酷い事してるかもしれないけどあたし……」
空はへたり込んでいる海の正面に膝をついてそう言った。
「…………」
だけど海の返事はない。
「海、空の言う通り海が俺や空の事嫌いになっても海が大事なのには変わりないよ。 勝手な事って思ってるかもしれないけどさ、海だって勝手に自分を俺や空について行けなくなったって思い込んでるぞ? だっていつも海は俺達の事気に掛けて助けてくれただろ? 俺や空は海が俺達について行けなくなったからってその事で俺と空より劣ってなんて思った事なんかないし逆にしっかりしてた海を頼りにしてたんだぞ? なのに海は今まで俺達と嫌々一緒にいたって言うのか?」
「…………」
「違うよな。 海はもともと勝気な奴だったから。 今だってそんな時あるよ。前は言い過ぎる時あって俺とよく喧嘩してたよな? でも海はそういう時いつも言い過ぎたって後悔してたよな? 今だってそうだよ? だったらそこまで落ち込んでたりしない」
海が少し顔を上げた。 涙で目が真っ赤になっている。
「海ちゃん、あたしバレーボール部入るのやめるから」
「え?」
そんな空の言葉に海は反応した。
「海ちゃんがあたしに我慢してきた分あたしも海ちゃんに誠意見せるから。 だから許してとは言わないけどあたしの事は嫌いでいいから。 りっくんの事は嫌いにならないで?」
「何を言ってるの? 空」
「海ちゃんはりっくんの事本当に好きでしょ? 海ちゃんはあたしなんかよりずっとしっかりしてるしずっと強いよ。あたしなんか姫花に負けちゃって落ち込んで海ちゃんやりっくんに心配掛けて。 だけど海ちゃんはあたしに負けたと思った時にちゃんと1人で立ち直れたんだもん。 どっちが凄いかなんて誰でもわかるよ、だから今回だって海ちゃんなら大丈夫。 ダメなのはあたしだよ、2人のお荷物だもん。 でも海ちゃんならりっくんの事を本当に想える。…… あたしなんかより。 だから、だから……」
「も、もういい!」
「んむッ」
海は空の口を手で塞いでそれ以上言葉を言わせなかった。
「ごめん、ごめんなさい! わ、私引くに引けなくなって陸や空に酷い事いっぱい言って……ご、ごめんなさい陸、空!……うう、ひぐぅッ」
海は喋るのもどもってしまうくらい肩を大きく震わせて涙をボロボロと落とし始めた。
「り、陸や空を大っ嫌いって言ってごめんなさい…… グスッ…… 本当は大好き、空には好きな事やって欲しい、そんな空を見てるのが好きッ、陸も佐々木さんに惹かれてるってわかっててもやっぱり大好き、ずっと一緒に私の側に居た陸と空を嫌いになれるわけない、うぅッ…… うわぁあああん!」
海が泣き出して空も海を抱きしめて声を上げて泣き出した。 下まで聞こえたのかどうしたんだ!? と思ったであろう海の母さんが急いで階段を駆け上がり海の部屋に入って来た。
「こ、これってどういう事? 陸君」
「あ…… な、仲直り?」
俺のその言葉に海の母さんはキョトンとした。
「高校生になってもまだまだ子供ね、あなた達……」
何か察したのかわからないけど海の母さんはそんな事かという感じで安心したように微笑んで部屋を出て行った、そしてしばらくして海も空も落ち着いてきた。
「本当にごめんなさい陸、空…… 」
「ううん、あたしこそごめんなさい」
「俺もごめん…… 海の事わかってるつもりだったのにこんなになるまで思い詰めさせて」
「私が変に意地張っちゃったのもあるから…… それと空、ちゃんとバレーボール部入って? いっぱい酷い事言った私の事許してくれる?」
「あ、当たり前だよ! てか許すとか許さないとか…… あたしの方が海ちゃんを傷付けてたのに。 ごめんなさい海ちゃん。 うう……」
「泣かないで空、またママが来ちゃうし陸も困っちゃうでしょ?」
「う、うん…… 」
「佐々木さんにも酷い事言っちゃったよね。私明日ちゃんと謝るから。 陸にもそれで嫌な思いさせてごめん」
「俺も一緒に謝るからさ」
「3人一緒に謝ろう?」
「そうだね、佐々木さんはまだやっぱり私にとって許し難い所もあるけど…… 私達と同じで陸の事好きなんだもんね。でも負けるつもりはないけど」
どうなる事かと思ったけど俺達は仲直りする事が出来た、そしてその日は海の家で夕飯を食べる。




