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空家に帰ってるかな? 俺はそう思い空の家にお邪魔する。 靴を見ると帰って来ているみたいだ。 そして空の母さんが出て来た。
「陸君、いらっしゃい。 あの子海ちゃんとでも喧嘩したの? 泣きながら帰って来たのよ」
「ああ、やっぱり。 でも喧嘩というかなんていうか」
「まぁ年頃だものね。 でも陸君来てくれたら空も元気になると思うわ! あの子昔から陸君にベッタリだから。 行ってあげて?」
そうして空の部屋の前に行きノックをする。
「ご飯ならいらない!」
部屋の中から空はそう言った。どうやら親と勘違いしているようだ。
「空、俺だよ」
「え? りっくん? な、なんで!?」
そして俺は空の部屋に入った。
「いいって言ってないのに!」
「俺の部屋にはノックもなしで入って来てるだろ? 俺はノックしてやるだけマシだと思えよ。 それに俺達にプライバシーなんてあってないようなもんなんだろ?」
空は目をゴシゴシと擦って涙を拭いていた。 ずっと今まで泣いてたのか……
「空が泣くとこ久しぶりに見た」
「うぅ…… あんまり見ないでよ」
「空」
「さっきはごめんなさい。 りっくんと海ちゃん置いてきちゃって。 海ちゃんも怒ってるよね? だから来ないんだ……」
「海は……」
あの後海もどっか行ってしまったなんて言ったら空はまた悲しむだろうなぁ。海の様子も見に行かないと。 てか帰ってるよな?
「それより海が言ってたように気になったんだけど確かに佐々木に対して変だぞ空。 どうしたんだよ?」
「やっぱりりっくんもそう思ったんだ。 あたし自信なくなってきちゃって…… 姫花には敵わないんだなぁって」
「そんなの比べる必要ないだろ?」
「そうなんだけど…… りっくんの側に居るのがあたしじゃなくて姫花だったらって考えてあの時あたしが姫花の立場だったら絶対あたしは姫花に負けてる。 りっくんを賭けてるつもりで勝負して姫花に負けた、それでもりっくんを好きな気持ちは負けないって思ってたんだけどそれさえ負けちゃったら? 姫花はあたしよりも何もかも上だったら? そう思ったら怖くなって…… 海ちゃんは多分そんなあたしにイライラしたんだよね? あたしの言いたい事わかる?」
空は空でそんな事思っていて佐々木に会うとそんな事考えてたんだ、そりゃあ変な態度にもなるわな……
「空、お前が別に佐々木に劣ってたって俺の見方が変わるわけじゃないんだぞ? だって空とはずっと俺や海と積み重ねてきた時間があるじゃん? 空の良い所もダメな所もずっと見てきて今があるんだしそれは空だって俺や海に対しても同じだろ?」
「…………」
そう言うと空は黙った。 え? 空は違うの? 俺の独り善がりな考えだったか? なんて思っていると……
「本当? 姫花の方が可愛くても? あたしより姫花の方がなんでも出来たとしても? あたしってりっくんにとって大事?」
「ああ、そうだよ。 大事に思ってなかったらこんなにいつでも一緒なんて事ないだろ? まぁ俺達少し一緒に居すぎなような気がしないでもないけど」
「りっくん!」
「うわッ!」
空がベッドに俺を押し倒して抱きしめた。
「ありがとう! なんか少し元気出た、ごめん、ごめんね……」
「いいよ、空が元気出たならそれで」
「でもあたし海ちゃんの事怒らせちゃった」
そうだよな、空にとっても海は大事なんだ。 空は大丈夫そうだし海の様子も見に行かなきゃ。
「海だってちゃんと話せば仲直り出来るよ? てか海を怒らせたの俺にも原因があるような気もするし」
「うん、確かにそれはあるかもね。海ちゃんあたしよりりっくんと姫花が仲良くしてるのあんまり良く思ってなさそうだったから」
「やっぱそうなんだなぁ…… でもこのままじゃあダメだろう? 佐々木とも仲直りしなきゃ。 空もな?」
「うん、あたし姫花をまだ認めたわけじゃないけどちゃんと普通に接するよ」
そう言った空の頭を撫でると空は嬉しそうに俺の手に頭をグリグリしてきた。
「空、そろそろ俺海の所に行ってくるよ」
「待って! あたしも行く! あたしも直接海ちゃんと仲直りしたいもん」
「ああ、わかったよ」
空はどうやら復活したみたいだ。 これなら海ともちゃんと話せそうだ。 空の家を出て海の家に行こうとしたら路地から海が出てきた。
あいつ今まで帰んないでそこいら辺ウロウロしてたのか? 海も俺達に気付き少し戸惑っているような顔をして立ち止まった。
「え? 海ちゃん帰ってなかったの?」
「あの後海もどこか行っちゃってさ、追いかけようとしたんだけど……」
「じゃあ今度こそ海ちゃんをちゃんと捕まえよう?」
「ああ、捕まえよう」
海は俺達が近寄ると後ろに退がりまた逃げようとしたので俺達は走り出した。
「なんで追いかけてくるのよ!?」
「海ちゃん待ちなさい!」
空が一気に詰め寄り海の手を掴んだ。
「離しなさい!」
「いや! さっきはごめん海ちゃん」
「だったら離してよ!」
「海!」
俺も海の腕を掴み海の名を呼ぶと海はピタッと止まった。
「海、一緒に帰ろう?」
「………… わかったよ」




