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海は昇降口へ来る頃には泣き止んでいたがこの前の空と同じく元気がない。 俺も海の泣いた姿を見て言葉が出てこなかった。
そんな俺達に囲まれている空は少し気不味そうな顔をしていた。
「さ、さっきはビックリしたよ! 海ちゃんがあんな風に姫花に言うなんてさ」
空が必死に話題を振ろうとするけどその話題には触れちゃいけない気がする。
海はそれを聞くと肩をピクッとさせて暗い表情になる。
「おい空、やめろって」
「あ、うん。 ごめんなさい」
空もマズいと思ったのかシュンとする。 空が黙った事で本当に俺達の中に会話がなくなる。
この状態どうしよう? 家に着くまでこんな感じか? いや、それだけで済むか? なんか海は只事じゃないような感じだったし。
でもこのままは嫌だな、なので……
「なあ海に空、今日俺の家に寄ってかないか?」
「え!? 行く行く! ね? 海ちゃんも行くよね?」
「ごめん、私は行かない。 2人で遊んでなよ」
「え…… じゃあ海ちゃんの家に行こっか?」
「来ないで!!」
海は大声で俺と空に怒鳴りそしてそんな俺達を周りのみんなが何事かと注目する。
海が俺達にこんな事言うなんて……
昔俺は勝気だった海とはよく喧嘩した、こんな風になった事も何度かあった、けど……
「おい海、お前さっきからおかしいぞ?」
「私がおかしい? おかしいのはどっちよ!? 陸と空がおかしいんじゃない!」
「え?」
「俺と空がおかしい……?」
おかしいって何がおかしいんだ? おかしい事だらけでわからない。 この海と空と俺の関係がおかしい? 佐々木との関係が?
「おかしいよ! 佐々木さんなんか気に掛けて空だって何よ!?さっきのあれ!」
「違うもん。 あ、あたしは…… もういいもんッ! 海ちゃんのバカ!」
空は走って先に行ってしまった。
「どうしたの? 追いかければ?」
「佐々木はダメで空はいいのか?」
「私空の事は好きだもん。 佐々木さんみたいな異分子とは違って」
「なんでそこまで……」
俺が言おうとすると海は家とは逆方向に向かって歩き始めた。
「どこ行く気だよ!?」
「私1人になりたいの! だから来ないで!」
「海だっていつでも3人仲良くって言ってただろ!? それなのになんで!」
「私は今だってそのつもりよ! なのに陸と空が悪いんだから!」
いつも俺が1人になりたい時は邪魔してくるくせに自分が1人になりたい時は来ないでって都合良すぎるだろ? それに俺は悪かったかもしれないけどなんで空まで悪いって言うんだよ?
「海ッ!」
海の腕を掴んで止めると海は涙目になっていた。 また泣かせてしまった…… でも海は泣くまいと必死に堪えていた。
「離してッ!」
海も走ってどこかへ行ってしまった。 ポツンと取り残された俺はどうしていいかわからなかった。
佐々木という存在が俺達の中に食い込んで来てこうなった事は確かだけど今までだってこんな事はあったじゃないか? でもここまで俺達拗れた事なかったのに。
海と空と同じクラスでそこに佐々木も揃ってしまったから? 佐々木の隣が俺だから? 空が変だから? おそらく全部海は気に食わないのかもしれない。
だけどこれ以上海を追いかけても海は嫌がるだけかもしれないしとりあえず空はもう帰っているかもしれないので空の家に行ってみる事にした。
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陸から逃げて数分、もう後ろに陸の姿は見えないので走るのをやめる。
私陸と空になんて事言っちゃったんだろう…… それに佐々木さんにも。 でも言った事を消せるわけじゃないし。
本当はわかってるんだ。 私じゃ佐々木さんに敵わないって事。 井上君が言ってた、佐々木さんは運動だけ出来るわけじゃなくて頭も凄く良いって。
そんな佐々木さんに私なんか…… 空がなんで佐々木さんの前で態度がおかしいのかも私にはわかる。 自信なくしちゃってるんだ空は。
空はまだいいよ、私はこんな思いするのは2度目。小学生後半、空と陸に追い付けなくなって私は空と同じ事で陸の気を引くのを諦めた。 だから自分の出来る事で陸の気を引こうと頑張った。 だけどそれも佐々木さんに取られそう……
今空は自分の得意分野で佐々木さんに負けて佐々木さんがいない時なら普通通りに陸に接しられるけど佐々木さんがいると勝てないってもうわかってるんだ。
そして多分私が勉強教えるより佐々木さんに教わった方が良いに決まってる。 私と空、2人揃っても佐々木さんに敵わない。
今までこんな事なかった。 私と空は調子乗ってたんだ。 陸を1番好きで陸にとって1番相応しいのは私達だって。 そんな思い込みは脆いに決まってる。 だって佐々木さんみたいなのが出て来ただけでこんな風になってるもん。
私と空って所詮『ごっこ』の域から出てなかったのかな? そんな風に思いたくない! だけど考える事は暗い方向ばかりに進んでいった。




