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母さんが用意した朝食を海がレンジでチンして持ってくる。
「はい、どうぞ」
「サンキュー」
海は俺が食べているのを黙って見ている。 前に比べると大人しくなった海とはよく沈黙があるがそれが気不味いってわけではない。
海もそんな気不味い様子は見せないし。 なんていうか、最初の頃はそんな海の変わりぶりに俺も戸惑ったけど今では慣れてそんな静かな海に俺も落ち着きを感じている。
だけど今日は朝飯を食べてる俺を怪訝な顔で見ていた。
「なんだよ?」
「こんな時間に朝ご飯食べてお昼ご飯食べれる?」
そう言われて時計を見ると10時過ぎ。 なんか微妙かも。 そんな俺の顔を見て察したらしく海は溜め息を吐く。
「だから早く起きればいいのに…… お弁当私が作ったんだよ?」
「春休みだぞ? 仕方ないだろ?」
「じゃあ私もそれ少し食べるからちょうだい?」
海が俺の食べ掛けのサンドイッチを口に運んだ。 2人で朝食を食べ終わり海は片付けを始めた。 本当母さんみたいだな。
「ご馳走さま。ふう、これで良し。 じゃあ空のとこ行きましょ?」
「ああ」
2人で家を出て地元の体育館へ向かう。 空が居るとガンガン喋ってくるのだが海は静かに歩く。
「そういえばさ」
「ん?」
「お前高校に入ったら部活とかどうする?」
「うーん、私にそんなイメージある?」
俺は中学の頃から部活とかに興味はなく適当にいてもいなくてもどっちでもいい部活に入っていた、文化部系の。
そして海もそのようで俺と同じ部活に入って2人で空を待っている。 それがいつものパターン。 対する空は中学ではバスケ部に入り持ち前の運動神経の良さで活躍していた。
空はバスケよりも今やっているバレーボールの方が楽しいらしく高校に入ったらきっとバレーボール部に入るんだろうな。
「私はまた陸の入るやる気のない部活に入ろうかな」
「酷ぇな、やる気のない部活とか。 まぁサボれるとこならどこでもいいわ。野球部とかに入って頭坊主にしたくないし」
「想像したら笑える。 ププッ」
「笑えるって…… そんな似合わないか?」
「ううん、坊主にしたって陸は陸だもの、まぁどっちかっていうと部員にしごかれてヒィヒィ言ってる陸に笑えるの」
ああ、だから運動系の部活は嫌なんだよ、まぁやりたい奴だけやればいいさ。俺も空くらい運動神経が良かったら違う考えになってたかもしれないけどさ。
海のゆっくりな歩幅に合わせて歩いていたので体育館までちょっと時間が掛かったがまぁちょうどいい時間かな。 腹はまだ減ってないけど。
体育館に入りバレーボールしてる連中を探すと居た。 空はレシーブの練習をしていると俺と海に気付きこちらに目を向けてニッコリしていたので向かってたボールを頭で受けた。 何やってんだあいつ。
そして周りの人にすいませんと言って空は一旦抜けこちらに走ってきた。
「空の邪魔しちゃったね」
「ううん、全然! もう遅いよ! りっくん寝てたでしょ?」
「え!? なんで俺になるんだよ?」
「りっくんの事だから春休みだから今日はずっと寝てやるぞー! とか思ってそうだし」
流石俺とずっと居るだけあってそんなのお見通しなようだ。 運動して汗をかいている空に海はタオルを渡した。
「んー! ありがと。 海ちゃんは相変わらず気が利くね!」
「だからって私になんでも任せっきりにしない!」
「いいのいいの! 海ちゃん居ると安心するし。 お姉ちゃんみたいで」
「それにしても頑張るなぁ、空は」
空は俺ににししと笑ってまた練習に戻っていった。 周囲曰く明るくて可愛らしい空は誰からも好かれ、友達を作るのも得意だ。
年齢も違う男女入り混じったこのチームでも空はみんなと仲が良いし、人気者だ。 そんな人付き合いの上手い空は素直に凄いなって思う。
高校に行ってもすぐにみんなと仲良くなりモテだすだろう。 そして隣に居る海も持ち前の見た目の良さで男女からも人気があったし。
そんな俺は綺麗な母さんから産まれた割にはそんなんでもない。 まぁこれは仕方ない。普通目な父さんの遺伝を受け継いだのかもしれない。
まぁ別にいいけどな、空や海みたくモテると周りの目も気にしなきゃいけなくなって大変そうだし面倒な俺には向いてないな。 寝癖直すのも面倒に感じるし。
まぁそれでもたまに告白とかはされた事はあったけど、それは俺の見た目は海と空に任せていたからかもしれない。 そう思うと本当になんでも任せきりにしているのは俺かもしれないな。
そして昼になり再び空は俺達の方へ走って戻ってきた。




