ゴールに向かってダッシュ
いきなり年齢上がります。注意。
リュゼ22歳、セレネ16歳。
「うわぁ…なんだこの黒歴史…。」
今まで読んでいた日記をパタリと音を立てて閉じ。
そのまま火にくべてしまおうかと思ったが、また元の場所へと戻した。
うん、これも1つの思い出だしな…例え顔から火が出そうなくらい恥ずかしいものでも。
私が今読んだものは、子供の頃書いていた日記だった。
当時、愛しい人への思いと日々の自分の行動を綴っていたものだ。
我ながら、ピュアというか、バカというか…うん、バカの方だな、これは。
これを人に読まれたら恥ずかしくて、軽く死ねる。
「ハハッ。」と、乾いた笑いが口から出そうになって、ふとある人の顔を思い出す。
2番目の兄上…。
あぁ、あの人、絶対これ読んでたよ。
こんな楽しいもの、絶対に見逃すはず無いもの…。
直接的には揶揄ってはこないけど、遠くからニヤニヤ楽しむタイプだし。
当時の兄上の態度を思い出し、頭を抱えてその場にうずくまりたくなった。
本当に、当時の私は、バカだったよなぁ…。
バカみたいに、思い込みが激しくて。
バカみたいに1つの方向しか見えてなくて。
それでも。
それでも、その時の私の想いには、嘘はなくて。
ただただ、彼女の笑顔が見たかった、あの時の情熱はまだこの胸に残っていて。
偽りだらけのこの世界の中の、たったひとつの宝物。
「リュゼ様、そろそろお時間です。」
感傷に浸っていたら、側近が声をかけてきた。
あぁ、もうそんな時間か。
今日は、私の婚約者選びのパーティーだ。
今までも婚約者選びについては、幾度となく、断り続けていたのだが、ついに母上まで登場し、囁かれた。
「候補に彼女を入れといたわよ。」と。
と言うか、母上…。よく彼女の家からOKもらえましたね?どんな手を使ったのでしょうか?
その言葉を聞いた途端、ふたつ返事で頷きますよ。
本当は自分の力で手に入れたかった。
時間はたっぷりとあると思っていた。
ゆっくりと世間をみて、触れて、その中から私を選んで欲しかった。
でも、君は。
あまりにもキレイになり過ぎて。
あまりにも魅力的になり過ぎて。
もう、待てない。
だから、ごめんね。
こんな手を使って、ごめんね。
でも、逃げ場は用意してあるから─。
ゆっくりと会場入りをして、一通り挨拶を終えたところで、彼女の居場所を確認する。
…見つけた。
やっぱり、兄上と一緒だ。
楽しそうに笑っている。
そして、チラリと側近に視線を送る。
「おい、クロ。お前も一緒に行くぞ。」
「…俺の名前は違うと何度言ったら、わかってくれるのですか。」
「ハハッ、それセレネの前でも言えるか?」
「…それはっ。」
「まあ、いい。とにかく兄上からセレネを引き剥がすぞ。話はそれからだ。」
私は婚約者候補として、セレネ、君を指名するよ。
でもね、君にも指名する権利をあげる。
候補は3人。
私と、兄上と…私の側近のノエル。そう、君のクロちゃんだ。
誰を選ぶかはセレネ、君の自由だ。
もちろん私を選んで欲しいけど、ね。
「やあ、セレネ。今日もキレイだね。」
セレネの姿を捉えて、軽く彼女の手を取り、指先にキスを落とす。
子供の頃は言えなかった言葉も、行動も、今ではサラリと出来るようになった。
「リュゼ様、本日はお招きいただき、ありがとうございます。」
ニッコリと笑いながらセレネはすぐさま淑女の礼をとり、頭を下げた。
その時見えた、彼女のリボン。
あぁ、セレネ。そのリボンの色は─。
セレネが誰を選んだかは、ご想像にお任せします。
お付き合いありがとうございました。
以下、全然活かされなかった乙女ゲーム設定。
「Color 貴方色に染めて2」
前作は学園が舞台の乙女ゲーム。今作は王城が舞台の第2弾。
ヒーローは第2王子、第3王子と、その側近たち。
ヒロインは侍女としてお城に勤める。
ライバルはヒーローたちの婚約者。
セレネは第3王子の婚約者候補として登場。
最終話の婚約者選びパーティーから、ゲームスタート。
ヒーローと仲良くなると、ヒーロー達の瞳の色のアクセサリーをくれる。