幕間
「おっ、いるね」
風防越しに見える景色にある黒点を数えていく。
「機長、敵艦隊発見の報は?」
「ひいふうみ……ざっと、15隻か。艦影が分からないから、もう少し続けたいんだけどね。ただ、欲をかいてもしょうがないかなぁ」
「雲量が多いので、完全を期すならば、もう少し接近すべきでしょうが」
言外に哨戒している敵機への警戒がうかがえる。我が相方のやさしさには涙が出るね。
今日の空は、視界不良。雲量多く、こちらも見つかりにくいが、敵も見つけにくい。
絶好の忍者日和なんだけど、確かに相手さんを考えると怖い。
北域洋上国家、アリステイル。
そこに滞在しているであろう一つの航空団。
Red of VaviroNという航空団。
見つかれば最後、私は手も足も出ずに落されると確信を持って言える。怖くもありあこがれの存在。
一番機、コールネーム:ポーラスタ。
全ての伝説の頂点。チーム名の異名たる根源。
女性にして陸では、気さくでさばさばした口調。男らしい振る舞いから女性プレイヤーからの人気が高い。空では、その技量の高さから、古の一騎当千の猛者になぞらえて呼ばれる畏怖の象徴。
ソロにして、一個師団戦力と呼ばれた彼女が、メンバーを増やしたとの情報は私も含めて、サンタマリアの空内に激震として走った。
二番機、コールネーム:ポラリス。
伝説に参画した新たなプレイヤー。
私と同じ偵察機乗りで男性。私も含め大多数のポーラスタファンの羨望と嫉妬を受けている諸悪の根源。
技量がずば抜けて高い訳でもなく、なぜ、彼が僚機を射止めたのかはわからない。
正直言って、偵察気乗りが良かったのなら私にもチャンスはあったと思う。こう見えて私も偵察気乗りの中では、古参でランカーだと自負している訳だから。
「機長。敵艦隊を完全に視認。空母2、護衛艦10、補給艦3の構成です」
「よし、すぐに無線封鎖を解除。本隊に情報おくれ」
「了解しました」
とりとめもなく考えていたら、敵艦影を区別できるまで近づいていた。気を引き締めないと。いつ怖い鬼がやってくるかもわからない。
カン
「っつ!?」
音に驚く。今のは、弾が装甲にあたった音。抜かれてはいないと思うけど、当てられた。
風防から見える全天をあわてて見回す。
「レーダー」
「No」
「目視」
「No」
「方角」
「……算定五時の方角。斜め後方」
「推定」
「遠距離による狙撃。12.7㎜アンチマテリアルライフル相当。装甲の厚さと衝撃緩和材に守られました」
急旋回。算定された方角に目を凝らす。
視界が悪い。
「情報」
「本隊送信完了」
「引き続き接触を試みたいところだけど」
「機長。離脱を進言します。問題多し」
「だよね。これより、離脱を開始する」
一発だけ、撃たれたというのがすごく気にかかる。
機銃弾ではなく、相方の分析が対物狙撃銃というのがとても気にかかる。いや、いやな予感がする。そう、手におえない何かに這いよられる感じ。
背中の悪寒。それに従って、反射的にフットバーをけりこんで機体をひねる。
カン
それでもあたった。まるで吸い込まれるように。
これが呂布だというのだろうか。
「レーダーに機影確認。1時の方向、距離1000」
「相対速度」
「ほぼ等速。見えませんか?」
「雲が厚すぎてわからない。でもいるのね」
「はい、います。単機です」
「上等、つっこむよ」
わずかに速度をあげ、視界の悪い雲海に愛機を突っ込ませる。即座に距離がつまるはずだ。
「すれちがいます」
巡航速度から加速した機体。その流れる風防から見えたのは同じ偵察機。
ちらりと見えた搭乗者の手には、なにやら銃らしきものが抱えられているのが見えた。
「あれで撃ったというの? 」
つぶやきに誰が答えるわけもなく、ただ、離れていく。
「機長。逃走を」
「言われるまでもなく。あれがポラリス……」
機体を雲海に突っ込ませて、逃走を図る私。無様でも生き抜くことが勝利とは言え、何とも口の中に苦味の広がる逃走だ。
呂布の二番機は、やはり呂布なのか。たぶん誰に話しても信じてはもらえないだろう、この邂逅は。それだけ奇天烈なプレイヤーだということか。
――Red of VaviroN――
概要
トップ航空団の一つ。あまりの一騎当千ぶりから呂布という将号がある。もとはソロ航空団の名称。現在は、偵察気乗りを加えたコンビ航空団である。
解説
1番機、ポーラスタのコールサインを持つ、ミオ・アカイ二佐。別称として、一騎当千、カミカゼ、赤い薔薇姫、八咫烏を連れる者。総飛行時間公式発表1000時間オーバーの猛者。エースオブエース。参加したイベントでの参加勢力の敗北はないなど、ソロ時代の伝説のままに語られる。
2番機、ポラリスのコールサインを持つ、アオバ・カンザキ一尉。別称としては、神弓。偵察気乗りとしては、ランキング上位を争い、また、曲芸撃ちを持つ。
エピソード
○各イベントに書かれていることが多いので割愛。
《大電脳遊戯事典 サンタマリアの空/航空団一覧より》




