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妻と拳銃のコイントス

二話目です!

【斉藤】

 妻が殺し屋に殺された。

 その事ばかりが脳に摩擦を生じ、熱を感じさせる。一人となった私に残るのは復讐。復讐しか残っていない。歪な形の復讐が塊となった。 

 私の人生は歪で、絞って干乾びた雑巾の様なモノだった。七十代もあと二年も過ぎれば八十にへと昇格する。

 簡単に人の命を奪って来たのに、大切な人が殺されたと知って、年々水分が減少してシワが目立つ輪郭を涙で濡らして歪んだ。

 私の周りだけ空間が歪んでいるかの様に、あの日から私の時間は止まったままだ。拳銃の重みを改めて地肌で感じ取り、自分の躊躇いの無さに失望する。 


 その日、私は殺害の依頼を受け、人を殺した帰りだった。コンビニの前を通り過ぎた所で、私は路地裏から同じ業界を生きる『佐藤』を確認した。普段、同業者に出会う事なんて滅多に無いと思いながら、それと同時に「人殺した後だな」最近の殺し屋はどう人を殺すのか、などの興味から私はその路地裏に潜り込む様に姿を消した。

 建物と建物に挟まれて、人間一人が通れる位の横幅しかない道は闇の様な影に支配されていた。苔の生えたコンクリートの地面に目を向けると、まず最初に捉えたのはヤモリだった。 

 革靴が地面を踏む音が何重にも重なる様に響き渡る。死体が見つからないな、と脳内で述べていたら革靴が地面を蹴る音が、奇妙で鈍い音にへと変わった。

 先程から鉄の様な生臭く苦い匂いは感じていたが、徐々に強まり足音は水溜りに入ったかの様な音が響いた。自分の足元の方へ目線を向けると、「やってしまった」声が零れてしまった。

 血だった。小規模な血の湖が出来ていた。


「これは帰る時どうすればいいんだ」


 自分の軽挙妄想な行動に嘲笑し、足を退ける。そして、その血が誰のモノなのか。そこで私の顔から苦笑いが変貌する。

 目の前で起きている現実。最悪な夢心地。絶望。

 血の湖に沈み死んでいたのは、――妻だった。


「なんだ・・・コレは・・・」


 声が震えていた。まさか佐藤が殺したのか?妻は殺されたのか?

 指先が震える。夢なのか。久々に咀嚼する戦々恐々に弛緩しながら瞳の視点が合わす事を躊躇する。妻の血を踏み嘲笑した私への怒り、妻を殺害した殺し屋にへの憎み。

 愁傷する前に、悲しみが込み上げる前に訪れたのは怒り憎しみ恨みだった。


「殺してやる・・・私がこの手で・・・ッ」


 心臓を刻む律動の強弱が強まる。黄昏の闇が漂う漆黒の中で私は孤独に『復讐』を誓った。殺意に浸食された私は、人生後半の悪足掻き。すべてを復讐のために、自分の命に代えてでも。 



二話目でした!さっそくながら、何も書く事ないです・・・・

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