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第5話 修行編その1 最初はどこが良い……?

 修行場にと用意されていたのは、古い日本家屋のような建物だった。畳もある。

 時代劇に出てきそうな庄屋の家というか、そういう感じだ。


「ところで、勇者さんは何回目で僕を倒せたですか?」


「何回目って……?」


「何回死んだかってことです。たぶん初見じゃないと思うんですけど――」


 女神、もといスライムは、その体をポヨンポヨンとさせながらそんなことを言い出した。

 嘘をつく必要も無いので、正直に1回と答える。

 もしかして、死に戻りは普通にこの世界の仕様だったりするのか……?


「なるほどです! 勇者さんは、全く囲碁を知らなかったみたいなので心配したのですが、それなら結構優秀なのです!」


「なあ、この世界って死んで復活は一般的なのか?」


「そんなことは無いですけど、勇者って言うのは死んでも生き返るのが一般的なのではないですか?」


「いや、まあ、そういわれるとそうかもしれんが……」


 たしかにゲームの世界であれば……って、囲碁もある意味ゲームの世界だからそれでいいのか?

 まあ、そういうことにしておこう。

 分身もできたんだから、もう、この体は普通ではないのだ。



「ところで、修行って何をすればいいんだ?」


「そうですね……とりあえず、最低限、囲碁がまともに打てるようにするです!!」


「最低限って、嫌な予感しかしないんだが」


 こいつの最低限というのは、当てにならない。

 短い間だが、付き合ってみてそう思う。

 コイツの『知ってて当然』の範囲は多分膨大なんだ。

 どれだけここに缶詰にされるか分かったものではない。


「まあまあ、それでは最初のテーマに行くです。


 初回のテーマは――


 『最初の一手はどこに打つか』です」


「おお、意外とまともだな。それは俺も知りたい」


「でしょでしょ。これでも一生懸命考えたのですよ。というわけでこれをご覧くださいなのです」


挿絵(By みてみん)



「基本的に囲碁は隅っこの方が陣地……『地』ができやすいと言われているのです。とはいえ限度があって……」


「一番隅っこから黒が始めて、その斜めに白が来たって感じだな」


「そうなのですよ。そしてこれはもう完全に追い詰められてます。例えるなら――『壁ドン』状態なのです」


「なんで、そんな言葉知ってんだよ……ちなみにこうすると、どうなる?」


挿絵(By みてみん)


「こ、これは……『壁ドンして浮気してたら背後に彼女が現れた男』の図なのです!!」


「お、おう……」


 自分で出しておいてあれだが、例えにドン引きである。


挿絵(By みてみん)


「この後、この隅っこでは血を血で洗う殺し合いが始まる……と言いたいところですが、お互いこんなつまらねえところに拘らずに、もっと広い場所に行くのが良いと思うのです。男も女も、もっと良いのがいくらでもいるのですよ」


「何の話してたんだっけ……」


「浮気男も、死ぬなら自分の手を汚さないで、なにかの拍子に勝手に死んでくれるのが良いという話だった気がするのです」


「絶対違うと思うぞ」


 話が脱線し過ぎていて、何を学習すればいいのかまるで分らない。

 とりあえず、あんまり隅っこから始めるのは良くないという話のような気はしているが……

 正直、男女のもつれ以外の事は記憶に残っていない。


「……そうでした。一番最初はどこに打つのが良いかという話なのです!!」


挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)



「だいたい、端っこから3番目か4番目のライン上に打つのが一般的だと思うのです。『二線は敗線』『ヨセは二線から』という言葉があるように、あんまり最初の方は2番目のラインには打たないのです。ちなみにヨセというのは終盤の境界争いの段階のことを言うのですよ」


「お前、最初からそれを言えば十秒で終わったんじゃ……」

※九路盤だとど真ん中の方が評価が良かったりします……

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