第1話 VSスライムその1
「さあ、最初の相手は最弱のスライムです!! 負けたらあとが無いです!!」
応援してるつもりなのだろうが女神がうるさい。
ここはどこかの世界の闘技場。
対峙するは、一匹の小さなスライムだ。
俺は異世界に召喚されたただの一般人。
名前は知らん。
勇者とでも呼んでおいてくれ、日本から召喚された一般的な成人男性の……コピーみたいなものらしい。
この世界では、女神率いる人間が魔神の侵攻を受けているという。
俺の前にも、9人もの勇者を召喚したそうだが、誰一人として手も足も出ず消滅した。
それというのも、この世界の戦闘システムというのが――
「なんで囲碁が盛んなはずの日本から召喚したのに、みんなルールすら知らないんですか!! ほんの数十年前の勇者はみんな強かったのに!!」
「知るか!! 日本人なら誰でも囲碁が打てるとか思うなよ!!」
――囲碁だというのだ。
意味が分からん。
だが、どうやらこの世界の神は、女神と魔神の闘いが公平になるように、異世界のゲームからルールを持ってくることにしたそうだ。
それが囲碁。
そのうえで女神はチートを今まで使っていた。
そのゲームが盛んな異世界から勇者を召喚して、魔神と戦わせていたのだ。
当然、女神側の連戦連勝。
今までは、だけどな。
召喚対象は、代々囲碁が好きな家系の男子。
碁のプロとかを、ピンポイントで呼ぶことは出来なかったのが運の尽き。
俺みたいなのが召喚されたってわけだ。
俺の爺さんは、ものすごい囲碁好きだったらしいが、親父も俺もまったく囲碁には興味が無い。
それに、今の日本じゃ囲碁を打てる奴なんて――
「ああ!スライムが分裂しましたよ!! こちらの番です!! さあこっちも分裂するです!!」
「急かすな!! ターン制なんだからあわてなくて良いだろうが!! あと俺は人間だから分裂できないって!!」
「過去の勇者には分裂する人もいました!!」
「それ、絶対日本人じゃないって!!!」
いや……忍者ならありうるのか?
そんなことより、何して良いかさっぱり分からんのだが……どうすんだろうな、これ。
***
「あ、あ、あ、あ」
「わあああ!!! 勇者が!! 全滅!! もうダメですううう!!!」
結論からいうと、俺は負けた。
のっそのそと、自分の近くに分身を置いて体を大きくしていくスライム。
それに対して、俺は分身を適当に置いていった。
分身? できたよ。
徐々に大きくなっていくスライム。
置いたは良いが動かせない俺の分身。
さらに大きくなるスライム。
俺は何をして良いか分からないので、最後の方は、とにかくスライムに近寄らないようにしていたのだが……
スライムに囲まれた俺(分身)は、そのヌチャヌチャした体に取り囲まれると消滅していったのだ。
「なんだよこれ!? どういう条件で消滅してんだよ!!」
「分身体は大気中の魔力で維持してるです!! 相手の魔力で取り込まれると維持できなくなって消えるです!!」
「そういうのは最初に言っておけええ!!!」
「だから囲碁だって言いましたもん!!!」
「囲碁のルールなんて知らねえんだよおおおお!!」
そうして俺は死んだ。
まあ、所詮はコピー。
どうということはないだろう。
……いや、本当にコピーなのか?
記憶をいじられている可能性は?
この女神が本当の事を言っている保障なんて―――
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「さあ、最初の相手は最弱のスライムです!! 負けたらあとが無いです!!」
――などと考えていたら、見覚えのある場面に戻されていた。
「マジかよ!! 死に戻りじゃねえか!!!!」
こうして俺の、「どうにかして囲碁を理解する」戦いの日々は始まったのだ。




