第2話 剣聖との出会い
ご覧いただきありがとうございます!
雨模様です!
私の諸事情により更新は不定期になってしまいます。(すみません涙)
それでも頑張って書きますので応援よろしくお願いします。
村を出てから、どれくらい歩いただろうか。
村人全員を埋め終えたとき、すでに秋は深まっていた。土を掘る手は何度も皮が剥け、血が滲んだ。それでも止めなかった。誰か一人でも、あのまま野晒しにしておくことが、カイルには耐えられなかったのだ。
最後の墓標――それは母のものだった――に手を合わせたあと、カイルは振り返らずに村を出た。
たどり着いた街の冒険者ギルドは、思っていたよりずっと薄暗く、埃っぽい場所だった。受付の女性は、カイルの顔を見るなり眉をひそめた。
「坊や、依頼を受けるにはまだ早いよ。歳はいくつだい」
「……九つ」
「だったら尚更だ。子供が受けられる依頼はないんだ。お使い程度ならまだしも、討伐依頼なんてもってのほかさ」
当然の対応だった。だがカイルには、後がなかった。金もなく、頼れる大人もいない。生きるためにも、強くなるためにも、何かを始めなければならなかった。
その夜、カイルは掲示板に貼られていた依頼書の一枚を、こっそり剥がして懐に入れた。
『近郊の森に出没する牙狼の討伐。報酬あり』
子供の足でも、森まで半日とかからなかった。木の枝を拾い、それを剣に見立てて素振りをするだけの日々を思い出しながら、カイルは森の奥へと踏み入った。
牙狼と対峙したのは、日が沈みかけた頃だった。想像していたよりも遥かに大きく、遥かに速い。振るった木の枝はあっさりと弾き飛ばされ、鋭い爪がカイルの肩を切り裂いた。
痛みよりも先に、恐怖が体を凍らせた。
(――ここで、死ぬのか)
母の顔が頭をよぎる。まだ何も果たしていない。誰も殺していない。それなのに、こんなところで。
牙狼が牙を剥き、飛びかかってきた瞬間――
一閃。
気づいたときには、牙狼の巨体は真っ二つに斬り裂かれ、地に沈んでいた。
「……危なかったな、坊主」
振り返ると、そこに立っていたのは白髪交じりの初老の男だった。腰に下げた剣は、素人目にも只者ではないと分かる佇まいをしている。
「お前、まだ十にもなっていないだろう。こんな依頼を、一人で受けたのか」
カイルは答えられなかった。ただ、助けられた安堵と、悔しさとが同時に込み上げてきて、唇を噛んだ。
「名は」
「……カイル」
「俺はメルトだ。まあ、剣聖などと呼ばれることもある」
その名を聞いて、カイルは目を見開いた。国内でその名を知らぬ者はいない、剣の頂点に立つ男。
「なぜ、こんな森に依頼も受けずに強い魔物を狩ってるんですか」
「たまたま、な。それより――お前、その目。何か背負ってるみたいだな」
図星だった。カイルは、村で起きたことを、途切れ途切れに語った。白髪の男。右目が赤い、その男に家族と村人全員を殺されたこと。母の最期の言葉。埋葬に費やした日々。全てを話し終えたとき、辺りはすっかり夜になっていた。
メルトはしばらく黙って聞いていたが、やがて静かに口を開いた。
「そのままの強さじゃ、お前は仇の前に立つことすらできずに死ぬぞ」
「……分かってます」
「俺の道場に来い。強くなりたいなら、鍛えてやる」
カイルは顔を上げた。
「本当に、強くなれますか。あいつを、殺せるくらいに」
「保証はできん。だが、今のお前よりは、間違いなく強くなる」
迷う理由はなかった。カイルは深く頭を下げた。
「お願いします」
こうして九歳の少年は、剣聖メルトのもとで、長い修行の日々を始めることになる。
最後までご覧いただきありがとうございます。
また読んでいただいたら嬉しいです。




