モスクワ郊外
レフは紙を見た。ロシア語の、見覚えのある事務的な筆跡の欄外に、小さく書き込みがあった。
「二月、氷、サラトフ」——連絡員の確認コードではない。もっと私的な、走り書きだった。
「スヴォロフは、調べてくれたのか」とレフは言った。
「彼は約束を守った」とダニエルは言った。「そして、それを外に出す方法を、彼なりに考えた。彼は一九九八年に亡くなっています。心臓でした。誰にも、自分がやったとは言わなかった」
しばらく、誰も口を開かなかった。窓の外で、風が林檎の木を鳴らした。
「あなたの上司は」とダニエルが尋ねた。「ロマーノフ大佐は」
「連邦が消えたあと、退職した」とレフは言った。「一度だけ、手紙が来た。一行だけだった。『お前が正しかった。俺は、正しくなる勇気がなかった』——それだけだ」
「返事は」
「書かなかった」レフは言った。「書くことがなかった」
ナイラが立ち上がり、オーブンを覗いた。蜂蜜の焦げる、甘い匂いが強くなっていた。
「父も、去年、亡くなったの」とナイラは背を向けたまま言った。「大使を辞めさせられて、名誉も失って。でも死ぬ前に、私に会いに来た。何も言わなかったけど——手を握って、それから、私が正しかったと、一度だけ言った」彼女は振り返った。目が濡れていた。「みんな、遅れて、正しくなる。生きているうちに間に合った人と、間に合わなかった人がいるだけ」
「ファリダは」とレフは聞いた。
「元気よ。あなたのおかげ」
「俺は嘘をついた」とレフは言った。ダニエルにではなく、ナイラに。「あのとき、クウェートに内通者がいると言った。彼女を守れると言った。半分は嘘だった。当てなどなかった」
「知ってる」とナイラは静かに言った。「ずっと前から知ってた。それでも、あの子は生きた。あなたの嘘のためじゃなくて——あなたが、嘘をついてでも守ろうとしたから、私は動けた。動いた結果、あの子の代に、戦争が来なかった。それだけよ」
ダニエルはフォルダーを閉じた。
「私が、ここへ来た本当の理由を言います」と彼は言った。「謝罪ではありません。謝って済むことではないと、分かっているから。ただ——記録に、あなたの名前を残していいか、許可をもらいに来た。レフ・シャポシニコフ。どの公式文書にも出てこない名前。このままだと、あなたは、いなかったことになる」
レフは首を横に振った。
「残すな」と言った。「名前は要らない。俺のためにやったことじゃない。妹のためだ。妹の名前は——もう、彼女の墓標に刻まれている。それで足りる」
ダニエルは頷いた。反論しなかった。それが、この男の敬意の払い方だった。
日が傾いた。メドヴィクが焼き上がった。四人分——いや、三人分と、もう一つ。ナイラは黙って、小さな一切れを別の皿に取り分けた。
帰り際、ダニエルは庭の隅に、鉢を一つ置いていった。
「ワシントンから持ってきました。検疫を通すのに苦労した」と彼は苦笑した。白い蕾をつけた、細い苗木だった。「ジャスミンです。あなたが、白い花を探していると、ナイラさんから聞いたので」
レフは、その白い蕾を見た。
アーニャが好きだった花の名を、彼はついに思い出せないままだった。だが、もう探さなくてよかった。白い花は、白い花だ。妹が愛したものと同じかどうかは、もう問題ではなかった。
「ここに植える」とレフは言った。「アーニャの墓にも、一枝」
その夜、レフは三つではなく、四つの林檎をポケットに入れた。一つは電車で食べ、一つは家で食べ、一つは妹の墓へ、そして一つは——ダニエル・ヘイルという、遅れて正しくなろうとしている男の分だった。渡しそびれたが、構わなかった。持って帰って、いつか会ったときに渡せばいい。
来年の楽しみが、また一つ増えた。
丘の上で、レフは立ち止まった。
モスクワの明かりが、地平線を橙に染めていた。その手前の白い家の窓に、明かりがついていた。ナイラがまだ起きている。
BURN1が、どこかにある。BURN2も。二つの部屋の扉は、まだ開いていない。世界はまだ、全部の真実を知ってはいない。
だが、それは自分の仕事ではない、とレフは思った。それはダニエルの——あるいは、まだ生まれていない誰かの仕事だ。答えが出た瞬間に、物語は終わる。答えが出ない限り、物語は続く。
だから、続く。
義足が、春のぬかるんだ土を踏んだ。しっかりと。
右足の付け根は、今夜は痛んだ。以前より、少し。骨の中に眠っていたあの夜の放射線が、ゆっくりと目を覚ましつつあるのを、レフは知っていた。医者にはもう、行っていた。時間のことも、聞いていた。
それでも。
来年の春、また蜂蜜を量る。ジャスミンが咲く。クウェートの海を見る。
それだけで、今夜を歩ける。
星が出ていた。
数え切れないほどの星が、モスクワの春の空に灯っていた。
その一つ一つに、まだ名前のない真実が眠っているのかもしれなかった。
レフは、それを見上げた。
痛みと共に。
今夜は、確かに、痛みと共に。
しかし——それでよかった。
痛みは、まだ生きているという、ただ一つの、消せない証拠だった。




