37.
「改めまして、医療班の班長をしています。ヨンジュです」
「ユウキです」
私はいま、個室でヨンジュさんと2人、向き合っている。
怪我の治療のため、奥の個室に移動したのだ。ヨンジュさんの仕事部屋なのかな。机の上には雑多に書類が積み上げられている。
「で、怪我というのは?」
さっきから、ヨンジュさんの顔をまともに見れない。後ろめたいことがある人間の性だ。
「は、はい。あの、怪我は腕だけなので...よろしくお願いします」
入念に診察などされたら、性別がバレてしまう。
とにかく接触を最小限にすれば大丈夫だろう。キースさんに目撃された方の腕を出す。
「触れますが、構いませんか?」
コクコクと頷くと、白く細い指が伸びてきてそっとアザに触れた。
正直、アザや治りかけの傷に治療なんて...と思っていたが、ヨンジュさんの指先が触れた箇所からはじんわりと温かさが広がり、内出血やかさぶたがみるみる消えていく。
「...わぁ」
小さく感嘆の声が漏れてしまう。
またしても、幻想的な光景だった。
繊細な光の粒が現れては、消える。
この人の扱う魔術が特別なのだろうか。
それとも、治癒を施す魔術が特別なのだろうか。
...なんて綺麗なんだろう。
「あなたは、どんな魔術を使うのでしょうね」
「え」
「副団長がああ言うのですから、優れた魔術の使い手なのでしょう」
治療を続けながら、ヨンジュさんが言う。
「いや、わたしは...魔術を使えないので」
「...魔術を使えない?それで、どうやって討伐を?」
「剣で...こう、えいっと」
案の定、視線が突き刺さってくる。痛い痛い痛い。
私は視線を逸らしているけど、顔をガン見されているのが分かる。
へへへ、と乾いた笑いを漏らすしかない。
「...はぁー」
深いため息。
「あ、あの、ヨンジュさん?」
「まずあなたは、自分の容姿の良さを自覚しなさい」
「へ?」
「本当にぼーっとして...心配で仕方ありません。魔術が使えないというのも、真実とは言い難いようですし」
「え?」
「あなた、魔術使ってますよね」
初耳だった。
「何をしているのかは分かりませんが、今もほら、魔術を使っているでしょう?」
ぐいっと詰められる。詰められるが、返事ができない。
本人が分からないことを問われても、困る。
え、私、魔術使ってるんですか?今も?
何してるか分かんないって、何ですかそれ。
困り果てていると、すっとヨンジュさんの目が細められた。
「あなたは悪人ではないでしょうけど、嘘をつく人間は信用なりません」
ハッキリとした拒絶に、ギクリとした。




