33.
キースさんの案内のもと、再び施設内を移動する。
とはいっても、ぐるっと見て回るのにそう時間はかからなかった。とにかくシンプル。建物の作りも家具も、簡素で最小限。なんとも風通しが良い。無駄を省いた生活スタイルに好感を覚える。
見学中にすれ違う人はなく、先ほどと同じように離れた場所から視線を感じる。人の気配はするんだけどな。これは、避けられてるよね...。
「ん?」
ふと気づくと、サイズが合わない為に軽く捲っていたシャツの袖が、だらりと伸びてしまっていた。
まるで、お父さんのシャツを着た子どもだ。
お父さんが居た記憶はないけど。
だらしなく見えるのは良くない。思いきって肘の辺りまで大きく腕をまくる。すると、
「ユウキ、その腕は...」
腕の痣や、すり傷を見たキースさんが眉をしかめた。
すっかり忘れていた。
森を抜け、シャワーで清潔さを得て、空腹まで満たされた私にとって、これくらいの傷は何でもない。
血が出ているわけでも、痛みが強いわけでもないし。
「ああ、大丈夫ですよ」
ぺしぺしと腕を叩いてアピールするも、
「大丈夫なわけないでしょう...気が付かずにすみませんでした。手当てを」
険しい顔をしたキースさんに手を引かれて歩く。
キースさんはとても背が高くて、ちんちくりんの私とでは本当に大人と子どもだ。ぐんぐん進む背中を追いかけると、自然と小走りになる。
「あの、ちょっ...」
速度を落とすため抵抗するも、かなわない。
キースさんはずんずん進む。
諦めて視線を下げると、繋がれた手が目に入った。
大きな手だな。指が長くてきれいだけど、ゴツゴツとした男の人の手だ。かたくて、少し荒れている。これがきっと、剣を扱う人の手なんだろうな。
私の手なんて、簡単に包まれてしまう。
「っ...」
手...手が...っ
とんでもない美形と手を繋いでいる事実に、急激に動揺した。
男性との触れ合いに慣れていない私は、ひとり悶絶して赤面していたわけだけど、前しか見ていないキースさんに気付かれることはなかった。




