31.
騎士団かー...楽しいといいなぁ。
相当キツいだろうけど、体を動かすのは嫌いじゃない。
3食付きだったら夢のようだ。
森を抜けて早々に仕事が見つかるなんて、ツイてる。
なんて呑気に考えを巡らせていたら、
「すみません...今の提案は、忘れてください」
キースさんが急に前言を撤回した。
なぜだ。
表情をうかがうも、彼は難しそうな顔をして無言でテーブルを見つめている。
...この数秒に何があったんですか。
騎士団といえば、恐らく完全なる肉体労働。
私のようなヒョロヒョロもやしに勤まる職業とは、到底思えない。
多少戦えるとはいえ、私なんて素人に毛が生えたようなものだ。即戦力にはならないだろうし、騎士団がどんなものかも実の所よく分かっていない。
それに、できれば戦わずして穏やかに暮らしたいというのが本音だ。平和ボケした日本人としては、安全第一を心がけたい。
さらに言えば、騎士であることに誇りを持っているであろう方たちと同等に肩を並べるのも気が引ける。騎士道とかさっぱりだし。
優しいキースさんは、身寄りのない子供を不憫に思って手を差し伸べてくれたのだろう。けれど目の前にいる私のもやしっぷりを再確認して、考えを改めた。そうに違いない。
しかし私とて、せっかく紹介された働き口をみすみす逃すわけにもいかないのだ。
「...ざ、雑用で構いません」
「......は?」
「料理、洗濯、掃除、ある程度なら出来ますし、その他にもお役に立てることがきっとあると思うんです。もちろん、皆さんのお邪魔にならないようにします」
「いや...」
「期間限定でもいいんですっ」
食い下がる私。絶対にこのチャンスを逃がすものか。
「当面の生活資金を確保する間だけでも、置いていただけませんか...?」
捨て猫のような目を意識しろ。
この優しい人の心に訴えろ。同情を誘え。
何がなんでも仕事にありつけ。
「......分かりました」
かなりしぶしぶといった様子で、キースさんは頷いてくれた。
演技力が勝利した瞬間だった。
「君が、それでいいなら」
「いいですいいです、ありがとうございます」
二度と前言撤回はさせないぞ。
「しかし、雑用というのは...」
「正式な騎士の方々と肩を並べるには、僕はあまりに未熟ですから。下っ端の雑用として使ってもらうくらいが丁度いいんです。あ、でもご飯は付けてくれると嬉しいです」
「...もちろん、正式に採用されれば部屋も食事も支給されますが...やはり」
「頑張ります!!」
まだ何か言いたそうなキースさんを元気と笑顔で押し切り、私は採用をもぎ取った。




