24.
目の前に、温かいごはんが並んでいる。
具だくさんのスープとパン。
ごくり、と喉が鳴る。
ここは、小さな食堂のようだ。
木の温かみを感じる室内に、レグラスさんとキースさんと向かい合うように座っている。
「悪いな。ちょうどさっき昼飯が終わったばかりで、残り物しかない」
「ありがとうございます。いただきます」
食い気味で返して、手を合わせた。
木のスプーンでスープをすくう。
口に入れると、程よい塩気と野菜の甘みが広がった。鼻に抜けるベーコンの香り。
とろりとした優しいコンソメスープ。心と体に染み渡る。
「おい...泣いてんのか」
レグラスさんが引いている。
幸せを噛み締めているので、どうか放っておいて欲しい。
少し固めのパンをかじる。噛むほどに小麦の味を感じる素朴なパン。スープとの相性抜群。
ほんとうに、心の底から美味しい。
「で、話の続きだ」
「あ、はい」
「食べながらでいい。おかわりもある」
「お願いします」
遠慮はしない。何故なら、食べ盛りの少年の設定だからだ。
キースさんが、ささっとおかわりを持ってきてくれる。
美形を顎で使ってしまい、大変申し訳ありません。
「ユーキは、どこから来たんだ」
どこ、と聞かれても困る。
「...森で道に迷いまして」
「森って、あの森か?」
レグラスさんが指さしたのは、窓の外。
まさしく私がさ迷っていた場所だ。
「はい。なかなか出られなくて、苦労しました」
レグラスさんとキースさんが、ちらっと視線を交わす。
しばらく、沈黙が落ちた。
またレグラスさんが口を開く。
「おまえ、オレたちをどう思う?」
的を得ない、曖昧な質問だ。
もぐもぐと口を動かしながら考える。
レグラスさんとキースさんを交互に見る。
「どうって...親切な方たちだなと」
「他には」
「他...?」
「なぜ、オレたちと普通に話せる」
ちょっと言われている意味が分からなかった。
明らかに人種が違うのに言葉が通じるのは確かに不思議だけど、どうしてと言われても...私が知りたい。
「どうして、オレたちを見て平気でいられるんだ」
「...俺が、髪を乾かしても嫌がりませんでした」
ぼそっと割り込むキースさん。
「おい、本当かよ」
「あの...どういう意味ですか?」
3人とも、それぞれ困惑して顔を見合わせた。