16.side キース
小さな身体から繰り出される鋭い斬撃。
舞い踊るような軽い身のこなし。
跳んだ際にフードが背中に落ち、短くも艶やかな黒髪が露呈した。
そこから続く、白く細い首筋が目を引く。
切れ長の涼しげな目元に、朱で描いたような赤く薄い唇。
なんて、美しい少年だろう。
強い意志を宿した黒曜石の瞳に周囲がはっと息を飲む中、彼は一切の動きを止めない。
速くて、正確な剣技。
しなやかな弓のような体術。
興奮して体が熱くなる。
知らず、拳を握っていた。
魔術ではない、純粋な剣術と体術に胸が踊った。
少年は、魔獣の弱点を確実に突いていった。
後ろ足の腱を狙い、魔獣が空へ逃げることを許さない。
せっかくの鋭い爪も、幾度となく空を切る。
素早く動く小さな体を捉えることができない。
魔獣は、次第に追い詰められていった。
後ろ足を執拗に傷つけられ、黒い巨体がバランス崩す。
ようやく届いたその喉元に、少年はすかさず短剣を突き刺した。刃を横ざまに引きながら、返り血を浴びないよう身をかわす。
しかし、まだ致命傷には足りない。
そう知ると、最初に投げ捨てた剣を器用に蹴り上げ、構える。
どう、っと横倒しになった魔獣にひらりと飛び乗り、少しの猶予も与えず、首に深く剣を突き刺した。
一切の油断のない、見事な手際だった。
たった一人で、大型魔獣を討伐してしまった。
一瞬、女性かと見間違ったが、首元で短く切り揃えられた髪から性別を察する。
まだ子どもだろう。13、4歳だろうか。
彼は助けた幼子と視線を合わせ、なにやら笑いあっている。
その姿は年相応にあどけなく、先程までの凛とした姿とは別人のようだった。
「...きみ」
思わず声をかけてしまうほど、その存在に引き込まれていた。




