11.
昔から、すばしっこくて身軽だった。
地味な私はスポーツで活躍するようなポジションではなかったけど、実はこっそり運動神経は良かった。
ただ、それを差し引いても、ここへ来てからの私の運動能力の向上は異常だ。
自分でも信じられないほど、飛んだり跳ねたり回ったり、面白いほどよく動く。
そんなことできたんだ、と他人事のように驚く。
ただし厄介なことがひとつ。
運動能力は向上しているのに、身体能力は私のままなのだ。
お分かりいただけるだろうか。
体力も筋力も持久力も、運動不足の女のまま。
決してスペックが上がったわけじゃない。
それを無理やり底上げしている感じ。
無理があるにも程がある。
自分が思ってた以上に動けるけど、反動もすごい。
急激な運動による筋肉痛に関節痛。掌にできた豆は潰れるし、激しい動きについていけず酸欠で倒れそうになるし、体はあちこちボロボロだ。
それでも、生きてる。生き延びている。
大事なのはそれだけだ。
リュックは失くしてしまった。
探しに戻りたかったけど、諦めた。
パーカーに染みた獣の血はいくら洗っても落ちなかった。
一着しかないし、仕方なくそのまま着ている。
色はグレーだったはずだが、今は全体的に黒っぽい。新しい染みも着々と増えている。嫌すぎる。
そういうわけで、今の私は、薄汚れた身なりに短剣一本というスペックだ。
無事に森を抜けたとして、不審者以外の何者でもないだろう。
なんて言い訳しよう。
考えながら歩いていたら、唐突に、視界が開けた。




