10.
体中が痛い。
筋肉痛と関節痛。打ち身に、すり傷、切り傷。
うら若き乙女だというのに。
どうしてそんな事になっているのか。
はい。それは、連日、獣と戦っているからです。
あれから、5日。
森の出口を目指す私は、確実にゴールに近づいているはずだ。そう、強く、信じたい。
これで遠のいていたら、発狂してしまう。
黒い獣に遭遇したあの日。
私は逃げるように、あの場所を立ち去った。
すべてが何かの間違いだと思いたかった。
しかし、黒い獣はその先でも出没した。
黒い獣だけじゃない。
猪みたいなやつとか、虎みたいなのとか、妙に手の長い猿っぽいのとか、でっかい鳥とか。
私が知っている動物たちとは少しだけ違う。
見た目も、気性も。
もれなく皆さん凶暴で、問答無用で襲ってくる。
私が何をしたっていうのだ。
何を隠そう、いつか見た、あの可愛いうさぎっぽい小動物がいちばん凶暴だった。
生き物を、動物を殺すことに強い抵抗はあった。
逃げられるなら、そうしたかった。
だけど、殺されると分かっていて迷う選択肢はなかった。
相手には、鋭い牙と爪、強靭な脚力、翼。
対する私の武器は、短剣1本。
何度死にかけたことか。
どういうわけか、私は獣たちと戦うことができた。
奇妙な感覚だった。
分からないのに、分かる。
知らないのに、知っている。
短剣を片手に獣と対峙すると、頭の中がすっと冴えて、やるべき事が分かる。
理解して受け入れれば、次第に恐怖や嫌悪は薄れていった。
きっと、神様はいない。
死んでたまるか。




