10/40
9.
パーカーを乱暴に脱ぎ捨て、川の中にじゃぶじゃぶと入っていく。触れた場所から、水は赤黒く変わって流れていった。
服と体に染み込んだ、獣の血。
ざぶん、と川の中に座り込む。
寒い。めっちゃくちゃ寒い。
歯の根が合わないとはこの事だ。
でも、全身血にまみれているよりマシだった。
何が起こったの...
獣に襲われたはずなのに、死んだのはあっち。
私がやった...?
いや、そんなはずない。
そんなこと、できるはずない。
川辺に投げ捨てたナイフに目をやる。
「...」
右手は、まだうまく力が入らない。
今もかすかに震えている。
たぶん、恐怖や寒さだけのせいじゃない。
急激に力を入れた反動で、筋肉が痙攣してるんだ。
「うぅ...うっ...」
涙が止まらない。
あの大きな獣を、私が殺したの...?
あの小さな刃物で?
あの一瞬で?
どうやって。
なにもかも、あり得ない。
でも、いくら考えを巡らせてもたどり着く所は同じ。
右手を見る。
感触が残っている気がした。
「やだ...」
爪の間に入り込んだ赤色を必死に落とす。
こびりついた血は、なかなか落ちてはくれなかった。




