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9.

 

 パーカーを乱暴に脱ぎ捨て、川の中にじゃぶじゃぶと入っていく。触れた場所から、水は赤黒く変わって流れていった。


 服と体に染み込んだ、獣の血。


 ざぶん、と川の中に座り込む。


 寒い。めっちゃくちゃ寒い。

 歯の根が合わないとはこの事だ。

 でも、全身血にまみれているよりマシだった。



 何が起こったの...


 獣に襲われたはずなのに、死んだのはあっち。


 私がやった...?

 いや、そんなはずない。

 そんなこと、できるはずない。


 川辺に投げ捨てたナイフに目をやる。


「...」


 右手は、まだうまく力が入らない。

 今もかすかに震えている。

 たぶん、恐怖や寒さだけのせいじゃない。

 急激に力を入れた反動で、筋肉が痙攣してるんだ。


 「うぅ...うっ...」


 涙が止まらない。


 あの大きな獣を、私が殺したの...?

 あの小さな刃物で?

 あの一瞬で?

 どうやって。


 なにもかも、あり得ない。

 でも、いくら考えを巡らせてもたどり着く所は同じ。


 右手を見る。

 感触が残っている気がした。


「やだ...」


 爪の間に入り込んだ赤色を必死に落とす。

 こびりついた血は、なかなか落ちてはくれなかった。



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