おきつねさまと神使の耳
予約投稿のつもりが出来ていませんでした。
期待して見てくださった方すいませんでした。
遅まきながら、ただいま投稿いたしました。
本当に申しわけありませんでした。
さて温泉から帰ってきてからのお盆の支度だが、俺はというと何をするでもなし、準備は母と祖母、そして既に嫁判定を受けた睦月が執り行っている。
いや、狐にお稲荷ではなくおはぎの作り方教えるのってありなのか?
お盆の前後は庭園開放が休業するため、温泉で玉藻に言われた通り、俺の神力の行使について練習することとなった。
ジーンズにTシャツの支度でお社の前に立ち、玉藻より変化の指導を受ける。
「まず、神力についてじゃが・・・」
玉藻が説明を始める。
「おぬしの最初の神力の行使じゃが」
ああ、あれか、睦月を・・・・・ゲフン、ゲフン。
俺のバツの悪さを玉藻は見事にスルーした。
「あの時、おぬしの魂はわれの魂を、あ〜、なんというか、なぞるというか、真似をするかという状況で、神力を行使したのじゃ」
つまり、玉藻の自分勝手な思いで神力を行使するというのを見習ったわけだ。
「だまらっしゃい! われでもあのような荒技は自重するわ!」
まあ、俺を神使にするのも自重して欲しかったがな。
「まあ、それは・・・、あ〜、勢いというものじゃ」
言い訳にもなっていないわ。
「あの時や本山での出来事通り、本来ならわれがそばにいないとおぬしは神力を行使できないはずじゃったのだがな」
玉藻が言葉を切る。
えっ?
「本山で睦月を天狐にしたじゃろう。あれでお山の阿紫や地狐どもがおぬしに信仰心を抱いてのう。睦月を介して、神力使いたい放題というわけじゃ」
えっ?
「おぬし、睦月を巫女とした妖狐どもの神となったようなものじゃ」
えっ?
聞いてないよね、そんな話。
「うむ、われも睦月も話しておらんしのう。特に睦月は恥ずかしがっておるが、本山の妖狐どもにおぬしの素晴らしさを懇々と説いておったぞ」
いや、何してんの。俺は睦月のいるであろう母屋を見遣った。
「まあ、責めるでない。あれで睦月もおぬしを想って可愛いところもあるではないか?」
玉藻がクックと笑う。
いや何があったの? それ明らかにからかいの笑いだよね?
「まあ、これは嫁の矜持の為にも内緒じゃ」
玉藻が衣の袖で口を被おう。
俺はグッと言いたいことを飲み込んだ。まあ、睦月が話したくないならしょうがない。これをこらえるのも男の甲斐性というものよ。でも・・・・・、気になる。
「おぬしも存外、古い男よの〜」
容赦のない玉藻。
いやそこは心読んでも黙っておくところでしょ。
「まあ、戯言はここまでで、神力の行使に話を戻すぞ」
はいはい。
「今の将門ならわれがそばにいなくても思いの力で変化の行使ならできるはずじゃ。もっとも社間の移動は無理じゃがの。さすがにそれは人の魂では無理じゃ」
段々、人間離れしてきたな〜。
「妖狐を娶った時点で人であろうというのが間違いじゃ」
いつになく真剣な表情で玉藻が言った。
いや、わかって・・・・。
「良いか将門」
玉藻が俺の思考を遮る。
「そちは軽く考えすぎじゃ。神代に足を踏み入れたとはいえそちは人間じゃ。だが妖であり神代の世界の睦月と縁を結んだのじゃ。神代の住人の寿命は長ければ8000歳、神に至っては永遠じゃ。だがおぬしは50年、これをどう思う?」
さすがにこれは考えてもキツイ。敦盛舞っても解決しないだろう。
「睦月はこれに気づいているのか?」
ここは駆け引きなし、冗談なしだ。
「気づいておる。先日の温泉宿での書物がきっかけらしい」
玉藻は言葉を選ぶかのように慎重に言う。
「あやつはおぬしが絡むと脆いぞ。本山でもそれが解った。おぬしどうする気じゃ?」
決まっている。睦月に悲しい思いはさせない。つらい思いはさせない。
ただし、それは俺という存在がいなくなる瞬間までだ。
人は老い、死ぬ。
それは仕方がないこの世の理。
俺は俺の理でそれに抗ってやる。
人間いつかは死ぬ。でもその瞬間まで、睦月を悲しませることなく、楽しく、ともに手を取りあって笑って暮らしていく自分を想い描く。
「ちょっ、待て将門!。睦月に想いが流れすぎておる・・・。って睦月、見るでない」
ああ、俺が想ったので睦月が来たのか。
俺の神意の行使を止めようと、玉藻が俺に向かって駆け寄る。
いや、別に睦月を悲しませることしないから。
睦月とともに歩む決意見せるだけだから・・・。
あれ、何すればいいんだろう。
ああ、見せかけでも睦月と歩めるようにすればいいんだ。
「耳!」
と玉藻。
「尻尾!」
と睦月。
俺はケモミミ、 神使姿、尻尾5本フリフリ姿で、玉藻と睦月の前に立っていた。




