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イマジン鬼ごっこ~最強で最弱の能力~  作者: 白井直生
第五章 終わりと始まり
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第五章9 三人で

 『世界が一変して見える』とは、こういうことを言うのだとミコトは思った。


 ユウと事前に打ち合わせていた、二本目の聖剣。それを握り締めた瞬間、世界が情報に溢れていることに気が付く。


 吹き飛ばされるユウ、脚を上げるツカサ、周囲の景色。

 鎖が鳴る音、足の踏み込み、短く吐き出される呼吸。

 ズシリと重い聖剣、軽くなる身体、肌を撫でる空気。


 視覚が、聴覚が、触覚が、膨大な情報量で、絶え間なく変化する戦況をミコトに正確に教えてくれる。

 研ぎ澄まされたそれらは世界をつぶさに感じ取り、全てがスローモーションになったかのような錯覚を覚える。


 そうして手に入れた情報で、足が一歩、自然に踏み出された。体重が消えたかのような疾走感を得て、ミコトは風にその身を乗せる。

 止まる位置も、しっかりと狙い通り。角度を計算し、ユウを巻き込まないように注意しながら。


「――『エクスカリバー』!!」


 聖剣を振り下ろし、ミコトは強烈な一撃を放った。


 ――何これ、超気持ちいい!


 実は一度やってみたかったミコトは、心の中でそう叫んだ。


**************


 聖剣を再現すると思いついた時から、ユウはこの作戦を考えていた。


 ツカサと戦うとき最初にクリアしなければならない課題は、彼の瞬間移動への対策だ。

 ユウキは尋常ならざる反射神経と身体能力で対応してみせたが、普通の高校生にはとても不可能な芸当である。改めて考えるまでもなく、二人とも反則的な強さだ。


 なら、手っ取り早くそれを真似すればいい――聖剣の再現はそこから着想を得た形だが、問題が残っていた。

 ユウキの聖剣は、手にした一人しか強くならない。つまり、ユウが強くなったところで仲間たちは弱いままなのだ。


 そこまで考えた段階で、あっさりと解決策は思いついた。

 ユウキの――正確に言えば、マレイの創り出す聖剣は、物体そのものを作り変えているから、一度に一本しか作れなかった。

 しかしユウの能力で再現するなら、創ろうと思えば何本でも創れるのだ。もちろん、全てが繋がっている必要がある訳だが。


 一本でツカサを圧倒した聖剣が、二本。ユウは確かな光明を、そこに見出したのだった。



「はあっ!」


 掛け声とともに、ミコトは聖剣を振るう。背後から問答無用でツカサに斬りかかるが、刃は彼を捉えることなく空を切った。


 ツカサは瞬間移動でミコトの背後に回り込み、右手を伸ばそうとする。


「そこだ!」


 しかしその行動は、ユウの放った鋭い突きによって遮られた。

 ミコトの頬を掠める一撃を、彼は右手で辛うじて受け止める。


「『エクス』……」


 ミコトは声を上げながら、その場でくるりと反転する。

 背後で隙を見せたツカサと、ミコトの目が一瞬合う。


「『カリバー』!」


 叫びながら、左下から右上に薙ぎ払う様に斬り上げる。刃から放たれた光が、ミコトの目の前を覆い尽くした。


「もういっちょ!」


 ツカサがそれを瞬間移動で躱したのを、ユウは分かっていた。

 だから振り返りながら、閃光をもう一度放つ。ツカサが現れるのとほぼ同時に放たれたそれは、確実に彼を飲み込んだ。


「畳み掛けるぞ!」


 防御姿勢を取り耐えきったらしいツカサには、しかしあちこちに傷が付いていた。

 この機を逃すまいとユウが叫び、二人でツカサに斬りかかる。


 ユウの斬撃を左腕で、ミコトの斬撃を右腕で、ツカサは受け止める。

 挟まれるような衝撃に、彼の身体中に付いた傷から血が吹き出した。


「――!」


 その血が、彼の顔に掛かる。片目を瞑り隙が出来た彼に、容赦なくユウは剣を振るう。

 狙いは頭。気絶させてしまえば、こちらの勝ちだ。


「見えなくても、それくらいは分かりますよ」


 しかしツカサは、その場でしゃがみ込んでそれを躱した。


 ミコトたちの弱みは、そこにあると言える。

 右手で消さない。誰も殺さない。

 すると、勝利条件は二つしかなくなるのだ。気絶させてから拘束するか、直接ミコトの左手で振れて退場させるか。


 その縛りが無ければ、手段はいろいろとあるのだ。

 右手で触れる、致命傷を負わせる、四肢を破壊して自由を奪う――相手を無力化できればそれでいい。

 だが、取り返しの付かない傷を負わせた状態では、退場させると死んでしまう。相手を生かすというのは、この戦いに於いて最も難しいことだ。


 必然的に、行動の選択肢は狭まってくる。こちらの行動は読まれやすくなり、ただでさえ厳しい状況はさらに厳しいものになっていた。


「でも、手数はこっちが上だよ!」


 姿勢が低くなったツカサに、上から振り下ろすミコトの聖剣が襲いかかる。

 ツカサは両腕を上げてそれを防ぐが、まともに衝撃を受け止めた彼の足元の床がひび割れる。


 そうして固まった彼の胴体を、ユウの放った蹴りがまともに捉えた。腹にめり込む脚がツカサの身体を持ち上げ、後ろの壁へと一直線に吹き飛ばす。


「ぐっ」


 ツカサは堪えるような声をこぼしながらも、すぐさま体勢を立て直し壁に手足を着いて受け身を取った。

 そこへ――


「「『エクスカリバー』!」」


 声を揃えた二人の攻撃が、ツカサが張り付いた壁を盛大に吹き飛ばした。


「げ」


 とその時、足元からピシリと嫌な音が聞こえる。

 度重なる強力な範囲攻撃エクスカリバーに、余波を受け続けた建物が限界を迎えたらしい。

 あちこち穴の開いた壁は結合力を失い、自重に耐えられなくなった床が崩壊を始めたのだ。


「ミコト、こっちだ!」


 二人は急いで移動し、崩れ落ちる連絡通路からyamaの方へと逃げのびる。

 直後、轟音と共に連絡通路は完全に崩壊した。開放的になったyamaの穴から、眼下に瓦礫の山が築き上げられたのが見える。


「ツカサは……」


 ユウはそこに目を走らせ、ツカサの姿を探す。流石に、これに巻き込まれて生き埋めに、というほど甘くはないはずだ。


「ユウくん!」

「!」


 ミコトが叫び、かろうじて反応が間に合う。

 ツカサはユウの頭上から降ってきて、その勢いのままに拳を振り下ろしたのだ。

 既に崩れて脆くなっていた足元がさらに崩れ、ユウはバランスを崩す。


「ミコト、踏ん張れ!」


 さらに襲い掛かるツカサの左手を見て、ユウは迷いなく建物から外に飛んだ。そしてミコトにそう叫ぶと、二人の剣を繋ぐ鎖に体重を預ける。

 振り子のように大きく円を描き、ユウは空中を移動する。ミコトの方に近付いたところで鎖を縮め、彼の隣に無事復帰した。


「――させるか!」


 その隙を衝いて、ツカサがミコトに右手を伸ばしていた。

 二人の剣が同時にそれを受け止め、三人は至近で顔を突き合わせる。


「やるぞ、ミコト!」

「うん!」


 ユウの掛け声とともに、二人は大きく剣を振り払った。後退したツカサに、二人は再び斬りかかる。


 間断なく振るわれる二人の剣を、ツカサは腕を使い脚を使い、瞬間移動を使って捌いていく。


 そこへユウが目配せをし、二人は攻撃を続けながら、立ち位置を入れ替わるように移動した。

 聖剣は、鎖で繋がっている。その状態でぐるりと周ると、どうなるか。


「――これならどうだ?」


 鎖は、ツカサを一周するように二人の後に残る。

 ユウはその鎖の一つ一つから、棘をツカサに向けて伸ばしたのだ。

 先ほどの攻撃の簡易版。だが、範囲は狭くとも意表を衝くには十分だ。


 しかしツカサは、冷静に跳び上がってそれを回避した。


「せぇのっ!」

「!」


 同時に跳び上がっていたミコトが、横薙ぎに剣を振り抜く。

 ツカサは咄嗟に腕でガードをするが、踏ん張りの効かない空中だ。勢いよく吹き飛ばされ、yamaの奥へと追いやられる。


 吹き飛んだツカサに、二人は猛然と追撃を掛けた。



 手応えはある。後手に回っていた今までとは違い、確実にこちらからツカサを攻めていけている。

 しかし、決定的な隙を彼は見せてくれない。彼の攻め手は弱まっていても、こちらの攻めが通じていても、気絶や退場には中々持っていけない。

 しかも――


「段々、強くなってないか……?」


 徐々に、ツカサの攻める手数が増えている気がする。

 焦りを感じながら、剣戟の合間にユウは思わず呟いた。


「ええ、そうでしょうね。『戦いの最中に強くなる』というのは、ユウキさんに教わりました」


 そしてそれは、聞こえていたらしいツカサによって肯定される。

 なるほど、如何にもユウキの言いそうな台詞だ。そしてどうしようもなく厄介で、面倒な物を遺してくれたと内心彼に愚痴をこぼす。


「なら、僕たちも強くなればいい!」


 しかし、隣で剣を振るいながら、ミコトがどこまでも前向きな発言をしてみせた。

 こんなときでも変わらないミコトのその性格に、ユウは思わず少し笑う。


「その通りだな。でも……」


 危ういところで右手を防ぎ、ユウは冷や汗をかく。

 それにしたって、彼の強さに底が見えない。心持ちはともかく、実際このままでは勝ちきれないだろう。


「仕方が無い。第二フェーズだ」

「……わかった」


 状況を判断したユウがそう言うと、ミコトは少し顔を曇らせて頷いた。

 ここまでで勝てるならそうしておきたかった――というのは、もちろんユウもそうだ。だが、ミコトの方がその気持ちは強いのだろう。


「おや、まだ打つ手があるんですか?」


 何やら話し合っている二人を見て、ツカサがそう問いかけてくる。


「ああ。言ったろ、俺の作戦は百八個あるって」


 もちろんそれは口から出まかせだが、せいぜい言い張ってみせる。


「しからば、まずは」


 追い払うように一撃を加えながら、ユウはニヤリと笑ってみせる。

 そして目配せをすると、ミコトが続きを叫んだ。


「三十六計、逃げるに如かず!」



 百八のうちの三分の一を放り出し、二人は駆け出した。

 

****************


 yamaの奥へと向かって走り去る二人を、ツカサは一瞬立ち止まって見送った。

 この状況で、戦いを放り出して逃げ出す。その意味を考えたのだ。


 その意図はすぐに分かった。それを承知で、ツカサは二人を追いかけることに決める。


「どこへ逃げると言うんですか?」


 瞬間移動を繰り返せば、走って逃げる二人に追いつくことは難しくない。

 二人に声が届く距離まで辿り着くと、煽るようにそう投げる。


「さあな。地の果てまででも逃げ続けてやるよ」


 走りながら、ユウがそんな言葉を投げ返してくる。


「それにほら、こうやって!」


 さらに、不意にミコトが立ち止まると、そう叫びながら剣を振った。


「動いてれば、隙も出来やすくなるでしょ」


 受け止めたツカサに不敵な顔――と本人は思っているらしい普通の笑顔――で、ミコトはそう語る。


「それは、そちらも同じことかと思いますが」


 ツカサはユウの方に瞬間移動すると、右手を突き出して静かに返す。

 彼は剣でそれを受け止めるが、紙一重のタイミングだ。


「それから、長引かせるのが目的だったりな。持久力には、結構自信あるんだ」

「それも、同じことかと。むしろ、瞬間移動できる僕の方が有利ですね」


 ユウはこちらを睨みながら更に宣うが、その言にはどうにも説得力が無い。


「後は、そう――」

「いいですよ、下手な茶番は」


 尚も言い募ろうとするユウを、ツカサはバッサリと遮った。


「ここで逃げる理由なんて、一つしかないでしょう」


 そしてツカサがそう言い放つと、二人は踵を返して逃走を再開した。

 どうやら、予想は大当たりらしい。


 二人はどんどんyamaの奥へと進んでいき、広場を一つ――たしか『花の広場』と言ったか――に差し掛かる。

 そこの吹き抜けを飛び降り、彼らは一階へと逃走のコースを変更した。


 更に奥に逃げる二人を、ツカサは敢えて泳がせた。瞬間移動は使わず、生身で走って追いかける。


「――ここが終着点ですか」


 やがて辿り着いたのは、『花の広場』の更に奥――『水の広場』だ。

 そこのど真ん中で、彼らは立ち止まっていた。


「逃げるのも疲れたからな。広くて戦いやすそうなここでやらせてもらうよ」

「茶番は必要ないと言ったでしょう」


 ユウがそんなことを口にするが、見え透いた言い訳だ。ツカサはため息を一つ吐いて続けた。


「近くにもう一人居ることくらい、分からないと思いましたか?」

「ちっ……」


 ツカサもユウキと同じように、感覚を超強化しているのだ。広場の右手にある店の棚の陰に、こちらを伺っている人間が居ることは容易に分かった。


「それが精一杯の作戦だとすれば、残念なことです」


 失望を露わにした声で、ツカサはユウに語りかける。

 実際、残念な思いだ。ユウのことはある程度評価していたから、がっかりというのが相応しい。

 そもそも彼らが四人組であることは第四ゲームから分かっていることで、二人しか目の前に居なければ残りの二人を警戒するのは当然だ。


 更に言えば、ツカサの索敵能力の高さなどユウだって分かっているはずである。

 スキャンの結果を見ていたなら、ツカサのここまでの戦いが索敵と瞬間移動で成り立っていることはすぐ分かるし、第四ゲームの彼――エイタのことを知っていたなら尚のことだ。


「貴方はもっと、頭が良いと思っていましたよ」


 最早憤りすら覚えながら、ツカサはユウに言われた言葉をそっくりそのまま返した。

 この程度の作戦でどうにかなると思われていたなら、舐められたものだ。


「……やっぱお前、性格悪いな」

「ですから、自覚しています」


 その言葉にむっとした顔で言い返すユウだが、ツカサは毛ほども動じない。


「でも」


 しかしユウの言葉は、それで終わらなかった。一言置いて、彼はニヤリと笑い――


「俺の方が、性格悪いんだ」


 踏み込みと斬撃と共に、堂々とそう言い放った。

 そしてそのまま、何度も何度もツカサに対し斬りつける。ミコトもそれに追従し、二本の剣との戦いが再開された。


 しかし、彼らの動きは今までと変わらない。だからツカサは、問題なくそれを防げるはずなのだが――


「三人目は確かに居るよ。だから――警戒せざるを得ないだろ?」

「……! そういうことですか」


 何故か危うい場面が何度かあり、ユウの一言で気が付く。その原因と、彼らの作戦に。


 三人目がいつ襲い掛かってくるか分からない。その事実が、ツカサに精神的なプレッシャーを与えているのだ。

 実際、彼らに押されてもう一人の方に徐々に近付いている。仮に今もう一人が飛び出して来たなら、この猛攻を凌げるか怪しくなってくる。


 あからさまな待ち伏せを用意し、しかしそれをすぐに使わず意識だけを削り続ける。

 なるほど、確かにそれは『性格の悪い』作戦だ。


「ですが、それなら話は簡単です」


 だが、ツカサに対してそれはやはり下策だろう。

 彼は、二人の攻撃の隙を縫って瞬間移動をした。移動先は――


「三人目を、先に片付けてしまえば良い」


 三人目、物陰に潜んでいた少女の目の前だ。確か、リョウカという名前のほう。

 ユウの策に真面目に付き合う必要は無く、機動力で遥かに勝るツカサは二人を無視すればいい。


 目の前のリョウカはツカサの登場に反応していて、突然の動きによく対処したと褒めていいくらいだ。

 しかし彼女はやはり並の人間、しかも女性である。一撃目の右手が運よく右手で防がれたが、すぐにもう一撃が彼女に迫る。


 だが彼女は――そこでニヤリと笑った。


「計画通り、です」

「――!」


 その言葉を聞き取った瞬間、ツカサはその場で大きく身を反らした。

 その目の前を、一筋の光が流星の如く駆け抜けていく。


 次の瞬間、ぶん殴られたような衝撃を受け、ツカサは後ろに倒れ込んだ。

 一拍遅れて、リョウカが隠れていたものを含め、周囲の棚が軒並み吹っ飛ぶ。


「――『エクスカリバー・スティング』!」


 遠くから、そんな叫びが聞こえた。


 ツカサが瞬間移動をした時には、ユウの作戦は既に完成していたのだ。

 弾丸のようなスピードで飛ぶ聖剣、しかも破壊力を秘めた光を纏ったまま、それは放たれていたらしい。

 余波ですらこの衝撃。当たれば如何にツカサと言えど、身体に風穴が空く攻撃だ。咄嗟に躱せたのは、ツカサにとって僥倖と言えよう。


 だが、攻撃はまだ終わりではない。

 流星の軌跡を示している、聖剣同士を繋ぐ鎖。どうやら聖剣をぶん投げたのはミコトで、もう一方はユウの手の中。


「ぐっ……!」


 腕を上げ、身体を固くし防御姿勢を取るが、防ぎきれなかったダメージにツカサは苦痛の声を上げる。

 一直線に伸びる鎖、そこから無数の黒い棘がツカサに襲い掛かったのだ。何度か見ている戦法だが、この状況では躱しきれるものではなかった。


「!」


 そして、身体に何か所かの貫通痕が出来たツカサに、歯を剥き出したリョウカが襲いかかる。

 彼女は左手をこちらに伸ばしてきていて、『それに触れれば負け』だと否応なく察する。

 迫る左手をツカサは睨み――


「ちっ……今のでも仕留められないか」


 ユウの声が聞こえ、ツカサは冷や汗をかきながら我が身の無事を確かめる。

 間一髪、彼女の手が触れる前に瞬間移動が間に合っていたようだ。


「……今のは少し、焦りました」


 精一杯平静を装った声で、ツカサはユウに話しかける。


「本当か? なら、いよいよ勝ちが見えてきたな」


 ユウはそう言いながら、ツカサを見てニヤリと笑った。

 肩で息をして、身体には複数の貫通痕。そこから流れる血が、ぽたりと一滴、地面を叩く。

 どう見ても、どう考えても、今までで一番手酷くやられている。

 先の台詞が強がりだったと、彼にはバレバレだろう。


 ユウは、ミコトの聖剣を引き戻す。それを彼に投げ渡し、更には――


「さあ――三対一だ。悪く思うなよ?」


 広場に歩み出たリョウカに、もう一本聖剣を創り出して渡した。


 ツカサの予想を超えて、彼らは強い――最早、ユウキを超える程に。

 だがしかし、誰か一人でも崩せば一気に形勢は傾く。まだツカサにも十分勝機がある。

 ここからはお互いに、ミスの許されない戦いだ。


「ええ。そちらこそ悪く思わないでください――大切な仲間を、目の前で失うことになってもね」



 死闘の予感を感じながら、ツカサは気丈に言い返してみせた。

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