9.1
図書室へはまたも一番乗りだった。
壁に沿いながら歩き、図書室内を見て回る。
誰もいない静かな空間は好きだが、今はより寂しさを増すだけだ。図書室のカウンター横にある扉は司書室に繋がっているらしく、図書室を管理する司書が常駐していると聞いたが、まだ一度も見ていない。放課後は文学部の活動中であっても図書室で本を借りることは出来、司書の人が受付をすることになっているらしいので常駐しているはずだ。それなのに物音一つしない。
「関係ないことだな」
図書室を一周して、端の机に腰を下ろす。
私が天井を仰ぎ見て息を吐くと、扉が開いた。開かれたのは司書室の扉でなく、図書室の扉だった。
「ここ、文芸部の活動場所であってるよな?」
入ってきた人物は開口一番に質問を投げてきた。
彼だった。
「ああ。文学部の活動場所はこの図書室だ」
冷静に訂正を加えつつ、端的に返す。
「ありがとう。他に人は、先輩はいる?」
「いや、来ているのはまだ私だけだ。先輩の誰かに用事なのか」
「ああ。一日仮入部させてもらおうと思ってな。別の活動があるから入部はしないと思うが、体験だけでもしておこうと」
言って彼は机を挟んだ向かい側に腰を下ろす。
別の活動とは、ブレイクのことだろう。彼女と一緒に行動するのだろう。彼女の相手役も演じるかもしれない。
「その活動がなかったら、この部に入ったのか?」
彼女に聞いてみたいけれど聞いてはいけない質問を、彼にぶつける。失礼な質問だとは思ったが、気づいたら口が動いていた。
彼女が私の隣にいないことが、他人と話していても、まだ心に渦巻く。
関係の無い彼は私の想いなど気づくことなく、軽く首を振った。
「それはないかな。全ての部活に仮入部しようとしているだけで、文学部に特に興味を持ってるわけじゃない」
見栄をはったようなツンとした口調でなく平然と彼が話したので、聞き流しそうになった。
一呼吸間を置いて、訊ねる。
「全ての部活に?」
「そう。一日一部活で回っていけば充分回れるし、部活には入らないから丁度いいと思ったんだよ」
疑問や不安感がゆるやかに、けれど一度に私に迫ってくるようだった。彼の発言がいまいち飲み込めない。
入らないと決めている部活の体験をして何を目的としているのだろうか。一つのことに取組まなくとも成果は残せるとでも思っているのだろうか。




