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迷宮の王をめざして  作者: 健康な人
一章・鉄の王編
25/72

木と蛇と悪魔

思ったより時間かかってしまいました。


修正しました  1/1

 死者の都襲撃。


 絶対にあり得ないことだと思っていた。

 討伐する気がないからこそ長年放置され誰も寄り付かなかったはずなのだ。

 だというのになぜ急にあんな本格的な部隊を組んで本格的な討伐戦を仕掛けてきたのだろうか?

 もしかすると大平原の方で何かやっていると思った物資や人の動きはこれが原因だったのだろうか?

 もしそうならいろいろまずくないだろうか?

 今回は何とかすることができたが次もうまくいくという保証はない。


 それに思い返してみると今回の討伐はおかしなことばかりだった。


 強力な割には少ない数でしか現れなかった巨人。

 拘束術…効果を見る限り封印術かもしれないが、とにかく見たことも聞いたことない新しい術。

 そしてそういったものをぶつけておきながら術を使っているものがいないということ。


 納得する理由を挙げることはできる。

 だが討伐しに行くものが持っている絶対に勝てるのだ、という気持ちが小さすぎると感じてしまう。


 討伐者たちというのは数が多くなれば気も一緒に大きくなる。

 勝ってもいないというのに報酬の話をするなど普通だし報酬を少しでも多く得ようと抜け駆けするやつだって表れる。

 これは自分の命が危険にさらされるような相手には挑まないというある意味当たり前の鉄則があるからだ。

 討伐とは守るものではなく攻めるものである。

 だからこそ討伐者たちは勝てる相手を選び生きる糧にするのだ。

 ゆえに悪霊という例え勝ったとしても得るものの少ない存在は後回しにされやすい。

 せいぜい居るのならついでに討伐しておこうという存在のはずだ。

 だというのにわざわざ本格的な部隊を組んで油断なく完璧にこちらを討伐しに来ていた。

 それにそもそもの話をすれば普通危険な相手に挑むのや街の防衛のためのこういった裏方の討伐をするのは騎士のはずなのだが…。


(しかし派手にやったな。また壁に大穴があいたではないか)


 珍しくそんなことを考えていたがアリエルの言葉で意識が逸れる。

 戦闘の時は気にする暇はなかったがたしかに大穴である。


 これはさっさと直してしまったほうがいいな。


 すると死霊兵たちは吹き飛んだ壁の残骸を集め出した。

 どうやら以前伝えておいた命令がまだ生きているようだ。

 これなら放っておいてもいいだろう。

 想定外のことが多く起こってしまったがとりあえず最初の予定通りメディアに死者の都の説明と案内をしておくか。




 だが今までの流れからいえば当然というべきなのかこんなことさえ思うようにいかなかった。


 まず目に入ったのは巨大な木だった。

 大きい。

 大森林の木と同じかそれ以上はある。

 だというのにそれが生えている場所は門で飛んだ場所から見るとちょうど城に隠れるようになっていて今まで気づくことができなかった。


(月の木か。ずいぶん大きく育ったものだな)


 これが月の木?植えろと言ってから大した時間がたってないのにこんなにも大きくなるものなのか?そもそも俺は魔力を与えていないはずなんだが…。


(おそらくだが…)


「月の木!?レクサス様この巨木が月の木なんですか!?」


 アリエルが何かを言おうとしたがアリエルの声の聞こえないメディアには関係ないらしい。

 アリエルの言葉をさえぎり大声を上げる。


 しかしずいぶん興奮しているようだが一体何だというのだろうか?


「だって月の木ですよ!…すみません、取り乱してしまいました」


 メディアはそう言うと何度か深呼吸をして落ち着こうとしているようだ。


(私の話を中断するとはな…まあよい、先にこの娘の話を聞いてやれ)


 といってもこの流れならどう考えても月の木の話だろう。


 この木はそんなに珍しいのか?


「当然です。この木は無頂の山と呼ばれる竜が住む山以外にはほとんど生えていないのです。竜族同士が争った後の森は一夜にして火の海になり、大地が割れ、川となり新たな地形を作ると言われています。その新たに生まれた地にしか生えていない魔力を吸って大きくなる木、それが月の木です」


 なんだか聞いていた話とずいぶんと違う。


「魔力を吸い大きくなった月の木はその葉一枚であらゆる病を治し、枝があればあらゆる呪いから身を守り、その実を食せば不老不死にすらなれると言われています」


 なんだか本格的に聞いていた話と食い違ってきたな。


(そんな効果は無いはずなのだがな。いったいどういう話の伝わり方をしたらそのような話になるというのだ?)


「ですが巨木に成長するには大量の魔力を必要とするためそれほどの効果を得ることはできない物がほとんどだという話だそうです。ですがこれほど大きな月の木であればそういった効果も期待できると思います」


(たしかに多くの魔力を吸った巨木なら病を治す程度の効果ならあるかもしれんな。まあ不老不死はありえんがな。そんなもので不老不死になるなら竜族は死なないことになる)


「正直に言えばよくあるおとぎ話だと思っていました。ですが本当に存在する以上この話は本当なのでしょうね」


 今のメディアにはまるで長年追い求めていた形のない何かを明確な形として見つけることのできた者のような雰囲気があった。


「まさかこのようなものを見ることができるなんて…」


 よくわからんが喜んでいるのでよしとしするか。


(まあおそらくは迷宮核から溢れた魔力を吸って成長したのだろう)


 そういう味気ないことを言うなよ。

 アリエル達とメディアが話せないのは面倒だと思ったが思い返してみればこいつらはおもしろい話のおもしろくない事実を知っていたりするから話せなくてよかったのかもしれない。

 後は城の中を案内して商人から買った珍品を見せることにするか。







 城の中を案内すると言っても珍品が置いてある部屋以外は何もないわけだからすぐに最上階のに着いてしまった。

 何もない場所で延々と説明されるよりはましか。

 そんなことを思いながら部屋を守っている死霊兵に心の中でご苦労さんと言い扉をあける。


 しかしここでも予想外のものがあった。


 まず部屋に入った時目についたのは黒い霧のような体を持ち額に単眼のある二匹の大蛇だった。

 その蛇は俺が部屋に入るとこちらに気づいたようで首をこちらに向ける。


 なぜこんなやつがいるんだ。


 今日何度目かわからない疑問である。

 ただこの部屋はしっかりと守られていたはずだ。

 一体どこから入りこんだというのだろうか?


『蛇の形をしていますがこれは怨霊ですね』


 ジズドがそう答えてくれる。

 こういった怨霊や悪霊のことはすぐにわかってしまうのだからさすがだな。

 怨霊なら恐れることはないな。

 だがこんな姿をした怨霊がなぜここにいるのだろうか?


 俺は単眼の蛇なんか食った記憶はないんだがな。


(以前商人から買った見たものを石にするという石化の能力を持つ大蛇の目があの額の目ではないのか?後ろの娘は完全に固まっているぞ?)


 言われて気付いたがメディアが固まっていた。


「(体が動かない!?なぜ急に!?)」


 固まっていたといっても本当に石になったわけではなく動くことができなくなっただけのようである。

 なぜ急に声に出さなくとも相手の言いたいことが伝わるようになったのだろうか?

 まあ便利だからなんでもいいがこういう時声に出さなくとも相手の心の声とでもいうようなものが聞こえるのはいいものだな。

 俺もアリエルたちから見たらこんな感じなのだろうか?


 しかしどうやったらメディアが動くことができるのだろうか?


 するとその言葉が通じたように怨霊の大蛇は額にある目を閉じる。

 するとメディアが不自然な形で一歩踏み出しすぐに俺の後ろに控えるような形を取った。


「レクサス様この蛇は一体何でしょうか?」


『彼女の反応から考えるならアリエルさんが言ったように見たものを石にするという石化の能力を持つ大蛇の目を核にした怨霊でしょうね。蛇の形をしていますし目に残っていた怨霊が迷宮核からあふれた魔力でも吸って成長したんじゃないでしょうか?』


 すこし待ってくれ。

 そう一言伝えジズドの言葉に反論する。


 月の木みたいに生きてるわけじゃないんだから悪霊や怨霊は成長なんてしないだろ。


『…私はレクサスさん自身が成長している悪霊だと思うのです。それにレクサスさんが来てからの死者の都の怨霊、悪霊は明らかにあなたが来る前とは別物だと思うんですよ』


 自分が悪霊ということは自分のことなのについつい忘れそうになってしまう、が言われて気付いたがたしかに俺は強くなっているな。


 まあそれはいいとしてあいつらは死霊兵だから俺が来る前の怨霊や悪霊と同じじゃないのは当然じゃないか?


『それはそうなのですが、なんといいますか…自我…。そう自我のようなものを感じるんですよ!』


 言葉にすることでようやく納得できたというかのように声を上げる。


『私がここにいた時の悪霊たちはただ街を徘徊するだけでした。あの女討伐者が使った竜牙兵も命令に忠実でしたが己の意志を持っているのではなく命令を守っているだけでした。ですが死霊兵は自我があるように感じるんですよ。命令というのはそれを絶対に守る代わりにそれ以外の行動ができなくなるということと同じです。ですが死霊兵は壁の修理、死霊兵を作る、部屋の防衛ということすべてを守り討伐隊に反撃するという行動を行い、その後に再び壊れた壁を直そうと動いていました。これほどの数の命令を平然とこなし、そもそも命令していない防衛をしていたんですからすぐにでも気づくべきでしたよ』


 つまり死霊兵には意志があるということなのか?


『確実にそうとはいえませんけど、そう考えたらいろいろな疑問に説明がつきます。』


(ならこの蛇もおまえが主だと分かったから目を閉じたのではないか?)


 しかし俺はこいつを死霊兵にした覚えはない。

 それに死霊兵なら骨の体があるがこいつは目以外にはこの黒い霧のような体しかない。

 これはどう考えても死霊兵じゃないだろう。


 それに魔力を吸って成長したといっているがそんなもので死んで時間のたったものが簡単に怨霊になれるものなのだろうか?


『私はそれくらいしか思いつかないだけで別の理由があるのかもしれません。ただこの蛇が見たものを石にするという石化の能力を持っているのは間違いないですしレクサスさんの言うことも聞いているのも事実です。なら死霊兵でいいじゃないですか』


 たしかに襲われるわけでもないのだからなんでもいいか。

 しかしこいつはどうするべきだろうか?


 討伐戦の時のように思わぬ強敵にやられてしまってはまずいし筆頭君と組ませておくか?


 すると二匹の大蛇は俺の横を通りそのまま部屋の外に出て行ってしまった。

 本当に筆頭君に会いに行ったのだろうか?


『おそらくそうでしょう。もし今の考えが間違っていてどこかに逃げたとしても私たちに問題はないですし放置でもいいかと』


 それもそうだな。


「結局今の蛇は何だったのでしょうか?」


 俺の配下みたいなものだ。


 俺も知らなかったのだからこれ以外に伝える言葉がないな。

 ついでなので悪魔の鏡のことも説明しようと思い軽く説明した後に鏡を割る。


 しかし以前のように鏡の割れる音の代わりに何かの生き物の断末魔が聞こえることはなかった。

 どこにでもある鏡を割ったような音が響くだけだった。

 そしていつまで待っても鏡が元に戻ることもない。


 なぜだ?


(おまえが割ってから気づいたが中身がいないな。これはただの鏡だ)


 中身?この鏡に中身なんていたのか?


(この鏡はあくまで入れ物でしかない。中に入っていた何かがいたから珍しい悪魔の鏡だったのだ。自力で出る方法などないし出たとしても体が無いのだから存在を維持できず消滅するかだと思ったから放置しておいたがなぜか中から出てしまっているな。どこかで消滅してしまったのかもしれん)


 全く聞いてなかったことを今更すらすら言うなよ。

 そういうことは先に言っておけよ。

 まあさっきの話の内容じゃ聞いたとしても扱いは変えなかったとは思うが。


 ふと視線を感じ後ろを見るとメディアがどう反応していいかのか分からず困惑していた。

 まあそりゃ困るよな。


 とりあえず何か言おうとするとメディアの後ろの扉が開く。

 そこから現れたのはぼろぼろの甲冑だった。

 ところどころに穴が開いておりそこから覗く中が空洞であることを物語っている。


 ここにいる以上敵ではないのだろうがまた見たことのないやつが現れたな。


 その甲冑は扉を開けこちらに鎧の姿を見せるとすぐにばらばらになってしまった。

 それはまるで見えない何かが鎧を着ており扉をあけると同時に鎧の中からその何かが出て行ったようであった。


 鎧がばらばらになると今度は悪魔の鏡が元に戻っていく。

 呆気にとられそちらに視線を向けていると先ほどばらばらになった鎧が組みあがっていく。


(どうも鏡の中身は鎧の中のやつは同じの存在のようだな)


 簡単にまとめるなよ。

 襲撃、月の木、蛇、悪魔の鏡と俺の知らないいろんなことが起きすぎだろう。


 だいたいこの悪魔の鏡だって中身があるなんて今知ったぞ。


(中身もないのに悪魔の鏡なんて呼ばれたりはしないだろう)


 アリエルがどこか呆れたような口調でそう告げる。

 たしかにそうなんだが…俺は悪魔の鏡という種族の悪魔かと思っていた。


 すると悪魔の鏡、いやその中身である鏡の悪魔から契約を結べという意志が伝わってくる。

 契約内容は俺の配下になるというものである。


 なぜ急にこんなことになっているのかもう意味が分からん。

 まあ配下になるという内容のようだしなんでもいいか。


 半ば以上やけになり鏡の悪魔を配下にする契約を結ぶ。

 すると鏡の悪魔は用は済んだとばかりに部屋から離れようとするので筆頭君に従うようにとだけ伝えておいた。


「あの…」


 言いたいことは分かる。

 ただ何を聞かれても俺にも分からん以上こう答えるしかない。


 今のも俺の配下だ。









 城から出るとメディアが月の木に関していろいろと調べさせてほしいと言ってきた。

 好きにしろと答えたのだが、しばらくだまった後に調べた後に絶対に役に立ってみせるので月の木を使って研究をさせてほしいと追加で伝えてきた。

 言い分としてはおとぎ話に出てくるような伝説的な木を調べてみたいということだった。

 俺はアリエルからこの木は大げさな話の割には実際大したものではないということを聞いているがメディアはそうは思わなかったということだろう。

 そのことに関しても好きにしろと言っておいた。

 俺だってずっと探していた何かが見つかったら自分が満足するまで調べてみたいからな。

 まあ食ってうまいかどうかを確認するか部屋にどうやって飾るか死者の都に持って帰るくらいしか考えないとは思うが。




 今までは完全に放置していたがどうやら死者の都はいろいろと意味が分からん状態になってしまっているようだ。

 月の木、蛇、鏡の悪魔は俺が持ち込んだものだからいいとしても討伐に関しては全く心当たりがない。

 とにかく死者の都の状態を確認したら近場の街にでも行かなければな。



メディアが話した月の木の話は魔族と一部の人間は普通に知っている話です。

この話を知っていたからこそ金持ち連中は月の木を大きく育てようとしていました。一番どうでもよさそうな月の木が一番高値が付いていた理由でもあります。

いろいろと効果のある木ですがアリエルが言うように不老不死になんてなりません。



来週は忙しくなりそうで更新できるかどうか微妙です。

詳しくは活動報告に書きますが目安としては次の更新まで1週間だと思ってください。

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