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MEMORY・21 検証開始

 わたしはいろいろな角度から俯いた岩倉武琉の死体を見てみた。

 ただ、顔を覗き込む気にはならなかった。

 それをしてしまうと、この岩倉武琉の死を現実として受け止めてしまいそうだったから。

 今はまだ俯いて寝ている人と無理矢理認識してるから、わたしはここまで近づけている。

 死体だって確信してしまったら、絶対に正視できないだろうから。まぁ、死体なんだけど。


「姉さん、それでは証拠も何も見つからないと思う」


「し、仕方ないでしょ、死んだ人見てるってだけでも悪寒走るんだから、これでもがんばってるわよわたしッ!」


「話にならない。どいて、それは私が見るから」


 冷たく言い放ってキキが岩倉武琉の顔を覗き込む。

 わたしはとっさに目を逸らして、バイクに視線を向けた。

 三次元立体図化して破損箇所を調べる。


 内部もX線などで透過して、調べていくと、壊れた部分が出るわ出るわ。

 もう、破損しまくり。よく爆発しなかったもんだ。

 ガソリン塗れだし。うあ、タイヤがテカテカだよ。


 ん? ちょっと待った。ここおかしくない?

 違和感に気づいたわたしは、拡大して詳しくブレーキ部分を観察する。

 切断、されてる?

 このブレーキ……自然に切れたものじゃない。

 人為的か何かの原因で突然バッサリ切られてる。って説明が視覚の中に浮かび上がってる。


 なにこれ? もしかして暗殺ッ!?

 いや、んなわけないか。

 わたしは真一に報告しようと足の向きを変え……ぱきっ、と足元で音が鳴った。

 足をどけて地面を覗き込むと、折れて粉々になったマッチ棒。なぜに?

 ……あれ? 待って、これって……

 あいつが持ってた箱上のモノってアレ、か!?


「姉さん、死体調べ終わった。バイクは?」


「え、あ、うん。不自然な点を一つ見つけたけど?」


「では、上に戻りましょう。そろそろ警察が来られる頃でしょうから」


 真一とキキに促され、一瞬頭に浮かんだ考えを払拭したわたしは二人と一緒にその場を離れた。

 峠にでてきた頃には、もう警察が峠に来ていた。

 真一の目撃証言で死体があると知った彼らは、先を争うように岩倉武琉の元へと走っていってしまった。


 わたしはキキと共になぜか隠れさせられ、大幅の警察官がいなくなってから、見つからないようにその場を後にしたのだった。

 なんで隠れるの? と疑問だったんだけど、後で聞いたら、死んだはずの絵麗奈さんがいると警察に説明しなければならないから面倒だという理由だった。

 キキは性格から警察と揉める恐れがあるとか。コミュ障だもんねキキ。


 4月14日木曜日 午後7:45


 一通り調べ上げたわたしたちは、真一の家の地下にやってきた。


「それではまず上を調べていた私とキキからの報告です」


「おっと、なにかあったの?」


「ええ。沢山ありましたよ。地面にタイヤ痕と、既に乾いたようですがガソリンが広範囲に残されていました。キキの話によれば昨日ついたものの他にその前日以前にも似たようなタイヤ痕が残されているようです。ガソリンは……たぶん岩倉君のバイクのものでしょう。少々広い気はしますがね」


「タイヤ痕って何時付いたかとか分かるの?」


「私を舐めないで、姉さん。アレくらい顔を水で洗う手間くらいなものよ」


 いや、その基準わかんないし。

 そもそも、あんた猫じゃん。水で顔洗うのって苦手なんじゃない?


「単純に別の角度……今回の対向車側についていましたのでキキがどうというわけではないのですが」


「真一、それ言っちゃダメなのに」


 キキが呟くけど、真一は全く気にした様子もなく、完全無視で対応した。


「絵麗奈さんの話では相手はトラックだったそうですね」


「ええ。その通りよ」


「これからタイヤ痕を照合にかけます。キキ、結果は何時頃分かりますか。できるだけ警察より早く調べてください。犯人が捕まる前に見つけたいのです」


「車種特定には一日かかるかと……詳しい特定にはさらにかかると思う」


「そんなこともできるんだ」


 わたしの何気ない呟きに、キキが冷たく返す。


「体の性能はプロトタイプな分、姉さんより劣っています。でもどんなに優れた機械でも扱う者が使いこなせなければ豚に真珠。猫に小……私は小判も使えます」


 あんたは既に猫じゃないだろ。

 でも、確かにキキの言うとおり。

 わたしは自分の身体を使いきれていない。


 自分でも自覚してる。

 この身体はまだまだ凄い可能性を秘めている。

 崖に落ちたことでそれがものすごくよく分かる。


 ハンドキャノン、ブースター。

 それだけでもわたしは人であったときより気分が踊ってくる。

 確かに自分の体にそんなものが付いてるなんて恐い。

 恐い……けれど、今のわたしには必要だ。

 わたしをこの体にしたあの二人を見つけるために、この機能はとても素敵な能力だ。

 だから、わたしをこんな体にした真一は憎くもあるし、感謝もしてる。

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