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MEMORY・19 峠捜索

4月14日木曜日 午後6:05


峠にやってきたわたしたちは人気のないその場所で、すぐにも捜索に取り掛かった。わけなんだけど……


「はぁ~、考えてみれば証拠なんてもう警察が持ってってるわよね? 調べても何にもでてくるわけないじゃん」


 そうなのよ。少し考えれば分かることだった。

警察だってバカじゃない。証拠品は全て押収。

 当然その場にあっただろうわたしのカバンとか直人のカバンとか今は証拠品として警察の管理下に置かれている。

 とくにわたしは死んだことにされてるんで証拠品は返品されてこないかもしれない。


お気に入りの虎パンダストラップつき携帯も簡易化粧直しグッズも筆記用具すら預かられたまま。まぁ、教科書類は全て学校にあるから授業には差し障りないけどね。

携帯についてぼやくと、真一が携帯など使わなくても内臓電話で済ませばよいでしょうと言ってきた。

わたしの中に電話機能もあるらしい。わたしの身体は一体どこを目指して造られてるんだろう?


「で、何してるの?」


 手足を地面にくっつけて、キキがアスファルトに目を走らしている。

 真一は真一で関係ない周囲の崖や雑木林とゴルフ場の芝を併せたような山肌に眼鏡を光らせている。


「証拠品などは期待していません。それよりも私たちが探すべきものは他にあります。人ではないからこそ気づくことのできるもの。キキが調べているのはそういうものです」


「はぁ、んなものあるわけないじゃん」


 地面に這い蹲って舐めるように証拠を探しているキキを見ながら真一に不平を洩らし、申し訳程度についていたガードレールに持たれかかった。

いつも学校の廊下でやるように、窓枠にもたれかかるように。

 だから、わたしは忘れていた。

 自分もキキと同じ機械という重量物であることに……


 バキッ


「ひゃふぁッ!?」


 その瞬間、機械になる前に味わったあの浮遊感が甦る。

 頭に浮かぶいくつもの数字。峠から崖底までの高低差、自分の重量、重力加速度。地面との衝突角、そして破損率……75%。

 ガードレールの位置、わたしの真下。突撃による破損率プラス10%。


【PERIL】


頭の中に響くアラーム。明滅する視界。

眼に映るのは真っ赤な危険という名の文字。

機械でもほぼ即死。いや大破の自由落下。

わたしが死ぬ? こんなことで? 二度も……死ぬの?


 嫌! 絶対嫌っ! せっかく動けるようになれたのにっ。

わたしはまだ……死にたくないッ!

 刹那、何かのスイッチが起動した。


【SAFETY LOCK OPEN】


わたしに伝わる文字の羅列。

 わたしはそれを完璧にこなしていく。


【危険№128 自由落下】


 一連の動作を客観的に見ながらも、わたしの身体は脳内に流れる言葉に従う。


【回避パターン13616 最適回避能力 ブースト 緊急起動】


 わたしの中でわたし以外の何かがわたしに指示をだす。


【バランス制御 滞空 自動制御起動】


 身体を屈めて空中で回転、重力方向に足を向ける。


【ブースター開放】


 足の裏から何かが吹きだす。

 お気に入りだった靴はどうなったのか分かりたくもない。

高圧高温によるロケット噴射。真一の奴、なんてもん付けてくれてるかな?


【空気抵抗上昇 バランス制御変更】


 急に上体がふらついた。

わたしの体は冷静に両腕を左右に広げる。


【姿勢制御 ハンドキャノン開放】


 ちょ、ちょっと? 何、ハンドキャノンって? んなもんついてるのわたしの体。

 私が付けました。っていう親指立てたキキが脳裏に浮かんだ。あいつか!?


【ロケット噴射システム作動 発射】


 左右に突きだした状態の掌に出現した砲口から、足と同様、圧縮されたガスが噴だす。

姿勢が安定する。ゆったりと、まるで宙に浮いているようにゆっくりと落下していく。

なんか……空飛ぶ亀を思い出したよ。今のわたし、完全に人間じゃないや~、あはは。


【危険域を脱出しました 安全錠 閉鎖します】


 その文字が表示されたとたんに止まる両手両足の噴出。

 支えを失ったわたしは、先に落ちていたガードレールの上に落っこちた。


「あいたッ……くなかったんだった」


 お尻から落ちたので、お尻をさすろうとして思いだす。

痛みも損傷もないので、手持ちぶたさを覚えながらも立ち上がることにした。


「とりあえず、さっきの機能について真一を問い詰めて殴りまくるとして……ここ、どこよ?」


 目の前には沢山の木が生い茂っていた。

まるで人類未踏の秘境ジャングルとでもいうように、わたしは一度もこんな場所の噂を聞いたことがない。あ、そういえば真一が何か言ってたような?

 なんだっけ? まぁ思い出すほどでもないだろうし、いっか。

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