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対ドラゴン戦

ズームで拡大したドラゴンの姿を見る、

鈍い赤の体色を持ち、中型旅客機位の大きさで羽が生えたトカゲ顔の竜だ。

あんな大きさの生物が羽ばたきで飛んでるとか物理的に有り得ない。

魔法の力で飛んでるのだろう。


ドラゴンは、この世界での戦略級の兵器だ。

近隣諸国ではヘルドが2匹を保有。

帝国は5匹、俺が今いる王国の保持数はゼロだ。


ヘルドは今まで王国に対するドラゴンの使用を控えていた。

戦略級の兵器の使用を行った場合、帝国側の介入を招きかねないからだ。


ヘルドもいよいよ腹をくくったと言うことか。


迎撃の為に、相棒のAH-64D攻撃ヘリの高度を上げながら接近する。


俺は、魔術師ギルドでアネットに聞いたことを思い出す。

ヘルドが持つドラゴンの最大の武器は、数百メートル以上の射程を持つドラゴン・ブレスだ。魔法属性を持つ炎が超高温で敵を焼きつくす。


接近戦は危険だ。アウトレンジで敵の射程外から攻撃するんだ。


87式から連絡が入る。

「有効射程に入りました。 攻撃しますか?」

「待て。 引き寄せるんだ。」


ドラゴンは、俺と相棒に気がついたようだ。

飛び方に変化もなく、平然と俺達に向かってくる。

奴は自分が勝つとしか思ってないな。 こちらを小型の竜とでも思ってめているのか?


俺の相棒は、敵の態度にカチンと来たようだ。

相棒には自分が最強の戦闘ヘリであると言う自負がある。


直線距離で4kmを切った。

俺は空対空ミサイルであるスティンガーミサイルを2発選択し発射する。


ミサイルは、音速の2倍以上の速度でドラゴンに追いすがる。着弾まで5秒ほど。

ドラゴンは巨体にも関わらず機敏な飛行で避けようとするが、残念、このミサイルは自動追尾型だ。


着弾。小型の炎がドラゴンの胴体付近で炸裂する。


しかしドラゴンは目立ったダメージを受けた様子がない。

魔法的な防御能力で守られているのだろう。

だがこちらも、これだけで迎撃出来るとは思っていない。もともと歩兵の携行が可能な小型のミサイルだ。ドラゴン相手には不十分だろう。


ドラゴンは格下の相手に先制攻撃されて頭に来たのか、高速でこちらに向かって飛んで来る。

速い。

相棒の最高速度を超える速さだ。


俺はヘリを急上昇させる。出来るだけ高度を取らなければ。

上昇して可能な限りドラゴンより離れる。


しかし、直線距離で1kmを切った。

ドラゴンの顎が動き、口から炎が漏れているのが見える。 ドラゴン・ブレスが来る!


「87式。撃て」


地上の87式自走高射機関砲からの支援砲撃が来る。

90口径35mm対空機関砲、二門から発射された徹甲榴弾がドラゴンを襲う。

追尾レーダーと連動した正確な照準の為、そのほとんどが着弾する。


ドラゴンは背後から突然の攻撃を受け、のけぞった。

どうだ。スティンガーミサイルより効くだろう?


魔法防御がまだ有効のようだ。直接的なダメージは与えていない。

しかし痛そうだ。聞いたことのない獣の叫び声で咆哮ほうこうしている。

そりゃ1分あたり1,100発の徹甲榴弾を受ければ痛いだろう。


ドラゴンは痛みに耐えかね、ヘリを無視して地上の87式の方を見る。

怒りに震え、痛みに堪えながら87式をドラゴンブレスの射程内に収めるために急降下して接近する。


今、ドラゴンは 87式―ドラゴン―ヘリ のほぼ軸線上で87式に向かって降下を開始している。俺達に背中を向けてだ。


お前は敵をめすぎだ。


俺は、FCS(火器管制装置)でAGM-114 ヘルファイア・ミサイルの2発を選択した。

地獄の劫火(ヘルファイア)と名付けられた、このミサイルは地球上に存在するどんな重戦車をも破壊する能力を持つ。

自動追尾型のミサイルだが、本来は地上攻撃用のミサイルの為、空中で俊敏しゅんびんな動きをするドラゴンには逃げられてしまう。


しかし、動きが少ない空中目標はヘルファイア・ミサイルで破壊が可能なのだ。

ドラゴンは今、俺達に背中を向けて直線的に87式に向かっている。


AGM-114 ヘルファイア・ミサイル発射。


ドラゴンは、87式自走高射機関砲に向け、ドラゴンブレスを吐く。

超大型の火炎放射器の炎のように、ブレスが87式を包み込む。

装甲の限界値をあっけなく超えた87式は、即座に光の粒に分解し崩壊する。


…背後から、ドラゴンの羽の付け根の部分にヘルファイア・ミサイル2発が着弾する。


着弾したヘルファイア・ミサイルは、モンロー効果の為に、内部で溶解した金属製ライナーが液体となり、秒速7km、音速の20倍以上でドラゴンの表皮にぶち当たる。

低軌道の人工衛星並みの速度だ。 魔法防御で防げるものなら防いでみろ。


ギャアーー

ドラゴンの叫び声が辺りに響く。


ドラゴンの羽の付け根に大穴が空き、片方の羽が取れそうになっている。

空中に留まることが出来ず、ドラゴンは落下を始めた。地面に叩きつけられる。


地上目標となったドラゴンに対して、さらにヘルファイア・ミサイル2発を発射する。

着弾。

追加で背中に大穴を開けたドラゴンは、動かなくなった。


勝ったよ。ユマ、アネット。

戦闘終了だ。

相棒も嬉しそうだ。そうとも。 お前は最強の戦闘ヘリだ。


……後で87式には復活したら謝っておこう。


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