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絶望的魔人奇譚2  作者: 星六
14/19

(五)-3


「お前ら、逃げろっ!」


 叫ぶと教室の後ろの窓ガラスがガシャンと割られて、小森たちは驚き身を屈める。その隙に悪魔が教室へと入って来るのを俺は見ていた。ヤバイぞ。逃げなきゃ。あの悪魔の狙いは俺なんだから。でも、俺が逃げたら悪魔は小森たちをどうするだろう。見逃してくれるか?


「どうかしたのデスか?」


 とんでもないバッドタイミングで華ヶ崎先生が教室にやってきた。しかも後ろの戸から入って来たからすぐ先に悪魔が立っていてもう最悪過ぎる。


悪魔は黙ったまま手の平を先生へ向けて、俺はとっさに近くの机の足を右手で掴むとそのまま悪魔に向かって投げつけた。悪魔は手の平を机に向け直して例の羽根で机を木端微塵にしやがった。それに驚いた女子たちはキャアキャア声を上げ始めてパニック状態。


「先生、逃げろ! お前らもだ!」


 とりあえずそばにいる男二人を廊下へ放り投げて小森たちの方へ。悪魔がこちらへ手の平を向けているのを見つけてまた机を投げつける。今度は右手と左手で二つ。効かないのは分かってるけど小森たちを助ける時間は稼げる。縮こまっている橋本と宮田を両脇に抱えて「小森、早くしろ」と声をかけて廊下に出た。小森はまだ出てこない。


「何やってんだよ!」


 再び部屋に戻ると小森は理解できない状況に怯えきっていて、そんな小森に悪魔が近づいている。それより何より、俺を驚かせたのは華ヶ崎先生だ。先生は怯えて動けないでいる小森に向かって突っ走ってたんだ。この人のこの行動の原動力はなんなんだろう? まだ出会って二日だぞ。それともそこにいる悪魔の恐ろしさを理解できていないからそんな行動がとれるのか? なんにせよ、先生は悪魔よりも先に小森のもとへ辿り着き体を抱えると、息もつかずにこちらへやってきた。


「久瀬君、あなたも逃げて下さいデス!」


 当然逃げる。俺は先生と小森が廊下に出ると、また誰かの机を持ち上げて投げてから廊下に出た。そして逃げる。でも先生たちとは逆方向へだ。


後ろの出入り口の戸の前を通る時に速度を緩めて教室の中を覗き込んでやった。すると悪魔と目が合う。あいつの狙いは俺だからあいつを引きつけられるのは俺なんだ。これは先生のような他人への愛情から来るものじゃない。一種の罪滅ぼし。俺の問題に巻きこんじまったことへのケジメ。そして昨夜のように全力を使えば逃げ切れる自信があることもこんな大胆な行動に出られた要因の一つだった。





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