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モンスターは綴れない  作者: ぺんなす


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向き合いたい心

お昼休みの時間になり、ご飯を食べるよりも先にスマホを手に取った私の目に映ったのはさとみくんからのメッセージ通知だった。

『平気。水も薬も飲んだし、ご飯もちゃんと食べた。待ってる』

そのメッセージを読んでひとまずは安心することが出来た。そわそわしていた気持ちが少しだけ落ち着きお昼ご飯を食べた。

「ねーえるー。今日ずっとスマホとにらめっこしてたけどなんかあった?」

「実は今日、さとみくんが熱を出して学校休んでるの。それで朝からずっと心配で……つい見ちゃって……」

自分じゃ全然気づかなかったけど、私そんなにずっと見てたんだ…。ちょっと恥ずかしい……。そんなことを考えていると

「ふーん。……そういえば告白されたんでしょ?今どんな感じ?」

「え……」

不意をつかれた質問に固まってしまった。

「…今は、ずっと考えてるの。もし昔からさとみくんが私とは違う感情を抱いてたんだとしたら……私、全然気付かずにそばにいるよって言ってて……」

「傷つけてたかもしれないって、考えてるでしょ」

私の思考を言い当てられ小さく頷いた。

「やっぱりねー。…えるはさー綴未のこと考えすぎだよ」

「え…?」

「だって一番大事なのはえるの気持ちでしょ?綴未の気持ちばっか考えるのはなんか違くない?えるは綴未の為に生きてるんじゃないんだしさ」

さとみくんの為に生きてるんじゃない。その言葉を聞いた瞬間、さとみくんが私を呼ぶ声が頭の中で無数に再生された。柔らかく笑いながら私を呼ぶ声。甘えるように手を伸ばしながら呼ぶ声。耳元で縋るように呼ぶ声。瞳を潤ませながら呼ぶ声。少し怒っている時の、冷たく暗い声。そして……真っ直ぐに想いを伝えてくれたあの時のさとみくん。

自分の気持ちが一番大事だと言われたばかりなのに気づけばさとみくんのことばかり考えていた。早く……さとみくんに会いたい。そう強く思うのは…どうしてかな……。さとみくんの心配は今まで沢山してきた。だけど、こんなに気になってそわそわして落ち着かないのは初めて……。この感覚は……と、そこまで考えて小さく首を横に振った。ううん。今はただ……さとみくんの心配だけをしてよう。今はまだ分からないけど、会えたらなにか分かるかもしれないよね。


それからの時間はあっという間に過ぎていき夕方になっていた。いつもの帰り道ではなくさとみくんの家への道を歩く。

そういえば、さとみくんの家に行くの初めてかも…。朝の待ち合わせは私の家の前だし…。うぅ…なんか緊張してきちゃった……。

ようやくたどり着いたのに、インターフォンまで手が伸びずその場で立ち尽くしてしまった。そんな時

「あの、家になにか…?」

驚いて声のする方へ振り向くと、一人の女性が私を見つめていた。

もしかしてこの人さとみくんの…?そう考えて慌てて姿勢を正し挨拶をした。

「あのっ…!私、さとみくんの幼なじみで……澄乃えるって言います…!今日は、さとみくんのお見舞いに……」

「…! そう……あなたが……」

少し警戒していた女性の表情が柔らかくなり

「どうぞ、あがって」

家の中へと案内してくれた。リビングには男の人もいて、二人は並ぶと改めて挨拶をしてくれた。思っていたとおりさとみくんのご両親だった。

「親と言っても私達はさとみに好かれていないけれど…」

そう言いながら苦笑する二人の顔にはどうしようもない寂しさと苦しさが浮かんでいて、 その姿に胸が締め付けられた。

「さとみのそばにあなたがいてくれて良かったわ」

「どうかこれからもさとみのそばにいて欲しい。僕達から言うことではないかもしれないが、さとみを引き取る時に言われた言葉があってね」


『えるといられないならどこにも行きたくない』


「さとみくんが…そんなことを……」

初めて聞く幼い頃のさとみくんの言葉に驚き、少しだけ戸惑ってしまった。

「えぇ。私達も驚いたわ。その後二人で話し合ってこの家で暮らすことにしたのよ。……さとみにとってあなたといる時間は何よりも大切なのね」

何よりも大切……。やっぱり、さとみくんはずっと……どうしよう……嬉しいと苦しいが混ざってる感じがする…。

自分の気持ちを確かめようと胸を両手にあてる。鼓動は早くどこか少しだけ苦しいけれど、先程よりも答えに近づいているような感覚がそこにはあった。嬉しいと苦しいを同時に感じるのは今まで無かったから。

そんな私をまっすぐ見つめるご両親は

「改めて……これからもさとみのそばにいてくれないだろうか」

「私からも、どうかお願いします」

そう言い終わるのとほとんど同じタイミングで二人は顔を下げた。

「あ……あのっ、顔を上げてください…!私、さとみくんのそばにいます。居たいって思うんです……!」

私の言葉に顔を上げ、さとみくんのご両親はほっとしたように微笑んだ。さとみくんが元気になったらちゃんと伝えなきゃ。さとみくんのご両親はさとみくんをちゃんと大切に思ってくれてるよって。すぐには信じてもらえないかもしれないけど…それでも、二人の気持ちが届いてほしい。あんまり話さないってことはきっと、私の知ってるさとみくんとは少し違う感じだと思うけど、それでも…できることならさとみくんにはどこでだって笑っててほしい。なんて、私のわがままなのは分かってる。だけど、前よりも強く思う。さとみくんの力になりたいって、できることならなんだってしてあげたいって。どうしてなのかもちゃんと考えなくちゃ。自分の気持ちにしっかりと向き合って、ずっと思い続けてくれたさとみくんの気持ちにしっかり応えられるように。

待っててさとみくん。もっとたくさん考えて必ず答えを見つけるから。

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