喜ぶ顔を想像して
鬱陶しい太陽の光がえるの肌に容赦なく降り注ぎ、えるを困らせる季節が終わった。
毎日えるの部屋に行って二人だけの時間を過ごし、たまに外に出る。そんな夏休みがあるだけの季節。明けてしまえばいつもの日常に戻って、鬱陶しい太陽の下、跳ね返すほどの眩しい笑顔はあの季節の中でしか見れないものだったと少しだけ、ほんの少しだけ寂しさを感じる。けれどその寂しは一瞬だけのもの。来年もその次もこれから先もずっと春夏秋冬えると過ごすから。
今日もえるがかわいい。文化祭っていい時期なんだ。こうしてずっとえるを見ていられる。一生懸命準備してるえるを。
そうして毎日えるを見つめていたある日。知らない奴と話してたえるがオレの元へ来た。
「さとみくん。私のクラスに来るんじゃなくて自分のクラスで文化祭の準備しないとダメだよ?」
「なんで?」
「…みんなで手伝ったら早く終わるでしょ?だからさとみくんも文化祭の準備手伝おう?ね?」
「オレがいなくても誰も困らない」
「そんなこと……」
その先の言葉を紡ぐ前にしょんぼりと眉を下げてえるは落ち込んでしまった。
オレはずっとえるを見ていたいだけ。それでも……えるがそんな顔するなら─────。
「…ご褒美」
「ご褒美?」
「ちゃんと手伝うからご褒美ほしい」
「なにかほしいものがあるの?」
「……今はない。考えとく」
「わかった。ちゃんと手伝ったらご褒美あげるね。あ!私に用意できるものでお願いね?じゃあ文化祭の準備頑張ってね、さとみくん」
そう言って手を振るえるに背を向けて隣のクラスに入っていく。文化祭実行委員ってやつに頼まれたことを全部終わらせて少しだけ暇になった。そういえばこいつさっきえると話してたやつだ。手伝ってないって知られなかったら今もえるを見れてた。けどそれじゃあえるからご褒美貰えない。……えるとデートできるこっちの方が絶対いい。えるとデート…えるとデート……えるとデートえるとデートえるとデートえるとデートえるとデートえるとデート………───────。
心の中で何度も唱え、頭の中に何度も浮かべる。ご褒美…早くほしい。
「綴未くん」
「なに」
えるとのデートに耽っているとまた実行委員に話しかけられた。
「もう一つお願いがあるんだけどいい?」
「何すればいいの」
「実は……─────。というわけなんだけど、どうでしょう!これ着たら絶対澄乃さんが喜ぶと思う!!絶対!!」
これを着たらえるが、喜ぶ……。
頭の中に浮かんだえるがオレを見て目を輝かせている。本物もきっと……いや、それ以上の顔をしてくれる。
「やる」
これを着るのは内緒にしておこう。その方がえるの記憶に鮮明に残るから。
普段とは違う着慣れない服に少し戸惑ったけれど、鏡に映った自分にえるが重なって、笑って喜んでいた。
本物にもかっこいいって言われたい。そんな時
「うん!思った通りすごく似合う。あとは髪型を当日アレンジしたらもっとよくなるかな」
髪……そっかそこもちゃんとしないといけないんだ。普段はえるが軽く梳かしてくれるけど、もっとちゃんとした方がきっとかっこいいって思ってくれる。勉強しよう。えるに喜んでもらうために。




