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お前が犯人だ、その推理で世界が変わる -変遷探偵・久瀬黎司の記録-  作者: 未確定ログ
第1部 『犯人変遷篇』第1編『雨の取調室』
25/51

第25話『収束条件』

資料室は、もう“部屋”としての一体感を失っていた。


机はある。

壁もある。


だが、それぞれが別々の場所に存在しているように見える。


白鐘雨音は、息を整えながら言う。


「久瀬さん……ここ、場所がズレてます」


有馬が即座に否定する。


「ズレてねぇよ」


白鐘は首を振る。


「私の位置から見ると、机はもっと左です」


有馬は眉をひそめる。


「いや俺からは普通に正面だし」


沈黙。


久瀬黎司がゆっくりと白板を見る。


そこには、もはや事件図ではなく“複数の図”が重なっていた。


久瀬は静かに言う。


「収束していない」


白鐘が小さく呟く。


「収束……できるんですか」


有馬が苛立つように言う。


「そもそも何に収束すんだよこれ」


久瀬は振り向かないまま答える。


「一つの現実だ」


白鐘が顔を上げる。


「どうやって一つにするんですか」


久瀬は少し間を置く。


そして言う。


「条件を揃える」


有馬が即座に突っ込む。


「だからその条件がバラバラなんだって!」


久瀬は否定しない。


むしろ淡々と続ける。


「だからこそ必要だ」


白鐘が息を呑む。


「必要……?」


久瀬は白板に手を伸ばす。


「観測者ではない、基準点を置く」


その言葉で空気が変わる。


有馬が嫌そうに言う。


「また基準点かよ」


久瀬は静かに続ける。


「今の状態は、観測者ごとに現実が分裂している」


「なら、観測の外側に“固定点”を作る必要がある」


白鐘が震える声で言う。


「そんなもの……あるんですか」


久瀬は少し間を置く。


そして答える。


「ある」


有馬が顔を上げる。


「どこにだよ」


久瀬は一言だけ言う。


「この事件の“起点”だ」


沈黙。


白鐘が呟く。


「起点……最初の事件?」


久瀬は頷く。


「そうだ」


「全ての観測が分岐する前の“原点”」


その瞬間、白板の中心に一瞬だけ“黒い点”が現れる。


すぐに消える。


有馬が叫ぶ。


「今の見たか!」


白鐘は震えながら頷く。


「見えました……でも、位置が固定されてません」


久瀬は静かに言う。


「まだ確定していない」


白鐘が小さく言う。


「じゃあ……そこに行けばいいんですか」


久瀬は少し間を置く。


そして言う。


「近づけば、現実は一つに寄る可能性がある」


有馬が呆れる。


「可能性ってなんだよ」


久瀬は窓を見る。


雨は変わらない。


だがその雨の“始まり”が、どこにあるのか分からない感覚がある。


久瀬は確信する。


この事件はまだ壊れていない。


だがすでに――


「現実を一つにするための“起点”が見え始めている」

読んでいただきありがとうございます。

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