太陽線スター
「待てよ、テストが先だ。ヘンな占いで人心を惑わされちゃかなわん。ちょっとオレの手見てくれ」
アッシュ公爵は国防総長らしきことを口にしながらも、笑顔は決して絶やさない。
あたしの目の前に広げられた大きな男性の手には40年前後をしっかりと生きて来た自信のようなものが、筋となって縦横に刻まれていた。
そして一番に目を引いたのは、悩む必要もない、くっきりとした大人気カリスマの印。
――こんなはっきりした太陽線見たことない。その上にアスタリスクのような星マークが輝いている。
「公爵さまは人の上に立つ方ですね。人徳者で多くの人に慕われる人気者です」
「盛り過ぎじゃないか? 取り入ろうとでもしてんのか?」
トリスタン若様は占いとかスピリチュアルとか全然信じそうにない。
あたしもどっちかというと、信じていない。丸暗記した美愛の本のまんまを言ってるだけ。
「直感に優れ、危機にあってもなぜか助かる護られた印」と言われる神秘十字線が両手にあるのに、異世界らしきところに飛ばされちゃったし。
飛ばされるだけで死ななかったのが、「護られている」結果なのかしら。
「どの線からそんなことがわかるんだ?」とアッシュ公爵。
「このくっきりとした太陽線です。薬指から下にさがる。そして太陽線の上にスターが……」
あたしが公爵の右手をなぞるようにすると、「これか! 太陽線って名前もいい!」となぜかとても嬉しそうだ。
「ちょっと待ってな、兄貴に確認するから」
「兄貴って王様……」
あたしが呟いてしまうとティエリ侯爵が、
「念波でお兄さんに同じ印があるか聞いてるんだよ。この国の王家は太陽の申し子だと言われてるからね」と囁く。
瞬時目を閉じていたアッシュ公爵が、パチッと目を開けるとニッコリ笑顔をあたしに向けた。
「恵茉くんだったね、君の入国は正式に認められた。王も歓迎している。王の手には両手に太陽線スターがあるそうだ」
「ふぅう」
あたしは痛む肩でため息をついた。試験には合格らしい。
「追って王都にでも占い小屋を用意する。人々の悩みを緩和する占いを心掛けるように。まずはここで怪我を治すこと」
アッシュ公爵は、出会って初めて真面目な顔をあたしに見せてから、かき消えていった。
それと同時に、「これぞ西洋のお貴族」という雰囲気のティエリ侯爵の奥様が入室して来られたと思ったら、あたしの視界はだんだんと暗くなり、立っていられなくなった。
昏倒してしまった、ようだ。




