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第3章 第10話 「グスタヴ・フリーデルの新しい日常」

20210712公開



【‐皇国歴313年「祝月しゅくづき」29日昼頃‐】




「よーし、野郎ども(BOYS!)! 下車して、警戒態勢に入れ! 行け(GO!)! 行け(GO!)! 急げ(HURRY UP!)!」



 班長のインゲルソン5等曹の命令で僕たちは軽装甲兵員輸送獣車の後部から飛び降りた。

 圏内魔術インナムマギアの『ボディチャージ』を掛けていても、着ている鎖帷子チェーンメイルの重量までは軽減してくれる訳では無い。着地の瞬間の衝撃で思わず「グッ!」と呻き声が出るが、すぐに走り出さないとほぼ同時に飛び出した2人に遅れを取ってしまう。


 指定されている距離まで進んですぐに報告をする。


(SIX)問題無し(CLEAR!)!」


 少し遅れてロディーン5等士とアイナの声が、左右の背後から聞こえた。


(THREE)問題無し(CLEAR!)!」

(NINE)問題無し(CLEAR!)!」


 僕が担当している警戒方向から、後続の軽装甲兵員輸送獣車が2輌やって来て、5百爪メク(約7.5㍍)ほど追い越してから、僕たちが乗って来た軽装甲兵員輸送獣車と横並びに停まった。

 中から4人ずつの従兵が降りて来て、資材を降ろし始めた。

 簡易型の馬防柵だ。

 頑丈さよりもいかに早く設置出来るかを追求して作っているので、8人がかりで配置して固定して、アっという間に1辺が4百爪メク(約6㍍)四方の陣地を造り上げた。


 しばらくすると、周辺を警戒していた軽装甲兵員輸送獣車1輌が戻って来て、陣地内に収まった。



 初めてこの訓練をした時に比べて、半分も掛からなくなったけど、目標とする時間にはわずかに届かなった。


 でも、よく考えたら、すごい事だと思う。

 士家隊の1個小隊よりも小さな1個分隊ながら、この陣地に展開している戦力は驚く程に強力だ。

 定数9人の分隊なのに、「エクスアロ」よりも遥かに強力な魔杖弓M203が2丁と、「ハイアロ」よりも長射程で強力な魔杖弓M16を11丁も装備している。

 計算が合わないのは、従兵の人でも魔杖弓が撃てれば、魔杖弓M16が与えられているからだ。

 そして、魔杖弓が撃てない従兵の人たちは槍兵として戦闘に参加するけど、それ以外の場では『工兵』としても活躍できるように装備が追加されている。

 今回の訓練は急造の陣地を造る事が目的だったけど、時間が有れば陣地構築用の道具を使って更に強固な陣地造りも可能だ。

 


 僕の友達で、同い年のエルは本当にすごいと思う。

 彼のおかげで、皇国の戦い方は一変するだろうし、チャイン帝国に一方的にやられることは無くなるだろう。

 この部隊に配属されてから時間が経つごとに、益々そう思うようになった。


 エルが召集されたと聞いた時は、純粋に無事に帰って来て欲しいと思ったし、父上にも助けてくれるようにお願いしたほどだ。

 でも、しばらくして聞こえて来た噂は、そんな僕の心配を吹き飛ばすものだった。

 『どうやら神童は本物の神童だったらしい』と、戦から帰って来た士家隊から漏れた噂が流れて来たからだ。

 確かに、エルが試作していた魔道具は僕も撃たしてもらった事があるから、「ハイアロ」どころか、使い方によっては「エクスアロ」よりも強力なのは知っていた。

 でも、父上から聞いた戦場いくさばの彼は僕の想像を超えていた。


 まさに英雄だ。

 それからも活躍して、歴史的と言って良い陞爵しょうしゃくを重ねて、今ではこんなすごい部隊の隊長にまでなっていた。


 うん、すご過ぎて、久しぶりに顔を合わせた時は思わず敬語で話しかけたけど、わざとふくれた顔をされた瞬間に馬鹿らしくなっていつも同じ様にしゃべっていた。

 



「よーし、訓練終了! 昼食にするぞ! 第2が警戒に回って、第1と従兵から食事に入れ!」


 ロセアン分隊長が訓練の終了を宣言した。


 班長のインゲルソン5等曹もロセアン3等曹も、実家自体は士家だけど今はどっちも平民だ。

 でも、2人とも実戦経験者で、いざいくさとなるとその実力は士家当主以上だと思う。

 ましてや、この部隊の立ち上げから居るから、本当に頼りになる。

 それと意外と気さくで、子供の僕とアイナをさりげなく気に掛けてくれている。

 きっと、子供が出来たら2人とも子煩悩になる気がする。


 ちょっと今日は肌寒いので、食堂の温かい食事を食べたいけど、今日は外での食事だから温もりは諦めよう。仕方が無い。

 あまり美味しくない携行食をアイナとつついていたら、ロディーン5等士が話し掛けて来た。

 短い付き合いだけど癖がある人と言う事は分かっている。

 アイナから聞いたけど、初顔合わせの時にエルに絡んだらしい。


「坊主は神童閣下の友達って本当かい?」

「ええ。親が同じ小隊の伍長同士だったんで、家ぐるみで付き合いが有りましたからね」

「ほう、そりゃすごい。で、昔からあんなんだったのか?」

「まあ、大体あんな感じです。いや、けっこうヤンチャでしたね。むだにケガしてましたし」

「ふーん」

「ロディーンさんの第一印象って、どんな風に感じたんですか?」

「最悪だったぞ。子供のくせに良い鎧を着ていたから、どんなボンボンだと思って絡んだら、いきなり上から目線だぜ? 神童だって思い出した時はビックリしたぜ」

「ロディーンさん、いきなりガキ扱いでしたものね」

「いやあ、お嬢様、思い出させないでよ。今思い出しても冷や汗が出ちゃうよ」


 ちなみに、ロディーン5等士は呼び方で評価を表しているそうだ。ガキから坊主、坊ちゃん、お坊ちゃま、になるらしい。だから僕のことは下から2番目の評価だ。

 アイナをお嬢様と呼ぶのは、それだけ信頼している証拠だろう。



 うん、この班に配属されて良かった。

 なんとか頑張り抜けそうな気がする。





お読み頂き、誠に有難うございます。


P.S.

どうでもいいですが、1行目の「野郎ども」のルビは正しくは『BOYS&GIRLS』です。

何故か、そうするとルビにならないんで、泣く泣くBOYSだけにしています ort

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