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落とし物から始まる関係

「はぁ?」


 思わぬ第一声に、俺は相手が会った事もないというのに、敬語も使わず素で言葉を返す。

 というか、素の反応だ。


「あっ、いえ、違うんですっ!! ちょっとびっくりしてしまって……」


「あ、あぁ〜ゴメン。これ君のスマホ?」


 電話の向こうから聞こえてきた少し申し訳なさそうな反応に、俺は平静を取り戻し言葉を返す。

 どうやら、声を聞いたところ同じくらいの年の子のように思える。


 スマホにロックをかけないなんて、同じ年代にはいないから、もっと歳がいった人かと思ったけど。


「そ、そうです! 校外学習の途中で落としたみたいで……」


「そうなんだ。じゃあどうしよ? 交番届けようか?」


「あっ、いえ、持っててもらっていいですか!? 今度の日曜に取りに行きます!」


「はい?」


 電話から聞こえてきた反応は俺の予想を裏切っていた。


「だ、ダメですか?」


「いや、そういうなら別にいいけど……」


「じ、じゃあお願いします! また連絡します!」


「ちょ、ちょっとーーっ!?」


 俺の言葉もむなしく、電話は切れてしまった。


「おい隼人! どうなったんだ!?」


 電話が切れると同時に建人が声をかけてきた。


「いや、落とし主からだったけど、何か交番に届けずに日曜日に取りに行くから持っててくれって言われた」


「えっ!? なんだそれ!?」


 建人が驚くのも無理ない。

 落とし物を預かっててくれなんて言うのは、少なくとも俺はあまり聞いた事ない。


「でも、そう言われたから仕方ないしな〜。まぁ次の日曜日は部活休みだから、とりあえず、このスマホ返す事にするわ」


「あ〜テスト期間挟むし部活休みだもんな。……って、隼人、出会いに期待するなよ?」


「するかっ!!」


 俺はすかさず建人の言葉に反応する。

 自分で言うのもなんだが、俺は今までいろんな女の子に告られてきた。

 でも、俺はサッカー一筋だし、そこまで興味ない。

 妹にも「お兄ちゃんはモテるんだから、少しはそっちも気にしたら!?」と言われる始末だ。

 だが、俺からしたらそんな事は気にしてない。

 

 俺は女の子に告られようが、別にその子に興味を持った事がない。

 まぁ弁明するなら、俺も年頃の男だし、興味はない事ないけど、恋ばかり、男ばかりに目を向けている奴に興味を持てないって事だ。

 

「はは! 分かってるって! 隼人はサッカーと結婚したんだもんな?」


「うるさいっ! そんな事ないからな! 俺だってーー」


「はいはい、さぁ行くぞ! まだ明日もテストあるんだからな!」


 俺にだって彼女に対する理想はある。

 自分の夢を持って、俺がサッカーでプロを目指すように真っ直ぐ夢に向かう人ーー……。



 だが、そんな女の子は俺の周りにはいない。

 そんな奴を相手に俺は告られてもそれに応える事はなかった。

 だから、俺は今サッカーだけにかけている。


「お、おい建人ーー!」


「はいはい、まぁ人の行き交いが多いからな。落とし物も多いさ。それより、明日の物理勉強するぞ! 赤点になったら山本先生に怒られる」


 そう言って建人は歩きだす。

 俺たちの学校らテストで赤点になれば部活には出られない。

 だから、サッカー一筋の俺でも勉強はそれなりに頑張っている。

 

 それに俺が住むこの市は観光で訪れる人も多いし、人の行き来も多い。

 だから、落とし物を拾うのも珍しい事でもないから、建人は適当に流して歩き出したのだ。


「あぁ、そうだな」


 俺もまぁ少し珍しいけど、こういう事もあるかと、思いながら言葉を返して歩き出した。


 この時、俺はたまにはあり得る事だと思って建人の言うように特には気にしないでいたーー……。


 

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