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第97話 灼熱の坑道

Side:マニーマイン

 暑い。

 ここは灼熱の坑道。

 なぜか、坑道の中が暑い。

 火山の溶岩が近いせいだとは思いたくない。

 あんなのが噴き出て来たら一瞬で黒焦げよ。


 幸い、毒ガスも出ないし、水蒸気も出ない。

 ここでの敵は、モンスターのロックワームと暑さ。


 水と塩がふんだんに支給されているのを喜ぶべきなのでしょうね。

 鎧を何度はぎ取ろうかと思ったことか。

 でも鎧がないとロックワームに襲い掛かられた時に死ぬ。


 ここから産出するのはミスリル。

 実入りは大きい。

 でも劣悪な仕事環境。

 奴隷でもないときっと反乱を起こすわね。


「ロックワームだ」


 私達はつるはしを構えた。

 地面が揺れて、ミミズを何百倍にしたような、ロックワームが顔を出した。


「【挑発】」


 サーカズムが挑発スキルを使いロックワームを惹き付けた。


「【身体強化】【鋭刃】」


 バイオレッティがスキルを使う。

 つるはしは鋭刃のスキルで青く光った。


「【俊足】」


 私は俊足スキルを使った。

 ロックワームはサーカズムに突撃。

 ロックワームの横からバイオレッティと私がつるはしを振り下ろす。

 私のつるはしは弾かれた。

 バイオレッティのつるはしは僅かに食い込んだが、致命傷には程遠い。


 サーカズムが突進を食らって吹っ飛ばされる。


「【火炎剣】【斬撃】」


 炎を纏わせた短剣を振り下ろす。

 大したダメージにはなってない。


「くそっ、ミミズ野郎」


 バイオレッティが狂ったようにつるはしを振り下ろす。


「【火炎剣】【火炎剣】【火炎剣】【火炎剣】」


 刺さった短剣に炎を追加する。

 炎は大きくなり、ロックワームの胴体の半分ぐらいが黒焦げになった。

 これでも動くの、しぶといわね。


「とどめだ。【身体強化】【鋭刃】」


 バイオレッティのつるはしがロックワームの頭に深々と突き刺さった。

 ロークワームは動きを止めた。


 汗がだらだら流れる。

 暑いのに運動すればこうなる。

 ロックワームの死骸を片付ける間に、水分と塩分を補給する。

 果実の絞り汁が入っているのが極上の味に感じる。

 ぬるいけど。


「ぷはぁ。サーカズム、怪我は?」

「奴隷のみ使える、治癒の十字架があるから治ったぜ」

「それにしてもロックワームのしぶとさと言ったらないぜ。あんなのがCランクなんて詐欺だ」


 バイオレッティのいうことももっともだけど、ロックワームに特殊攻撃はない。

 火も吐かないし、毒も持ってない。


 ただ、値段的には美味しいモンスター。

 硬い表皮は良い革鎧になる。


 救護所に行くと、何人もが臥せってた。

 治癒の十字架は万能だけど、失われた肉体を復活させるのに体の他の部分が使われる。

 腕なんか食われるとげっそり痩せることになる。

 食わせてしばらく休まないとならない。

 でも現状がそれを許さない。


 動けるうちはげっそり痩せても、採掘作業をさせられる。

 シナグルにバランスよく太らせる魔道具を頼もうかしら。

 でも食費が嵩んでマスターが良い顔しないのは目に見えている。


 鉱石を掘るのに剣なんか吊るしておけないのは分かるけど、もっと良い武器でないと。

 傍らにも置かせてもらえない。

 何かあるのでしょうね。


「剣を何で持たせないかだって、そりゃ反乱を恐れているからだ」

「へぇ」

「まあ、奴隷になる前にちらっと聞いただけだが、前に灼熱の坑道で反乱があったってよ。奴隷主は殺されたらしいぜ」

「魔法契約があるのに?」

「命令する前にやられたら死ぬだろう。命令の効力は薄れていくからな。魔法契約自体は薄くなりはしないが、命令は薄くなる」

「そうね」


 命令するには魔力を込めた言葉でないと。

 魔力が必要だから、やたらめったら使えない。

 魔法の一種みたいなものなんでしょうね。

 だから薄くなる。


 魔法契約は疑似スキルみたいなものなのでしょうね。

 だから、残り続ける。


 ここは、実入りは大きいけどその分劣悪よ。

 不満が溜まれば反乱は確かにあるかもね。


「もう、私は駄目」


 ミイラみたいにやせ細った女の子のリーンがそう言った。

 この子は両足をロックワームに食われたのよね。


「最後のお願いを聞いてあげる。叶えられないかも知れないけど努力する」

「冷たい物が食べたい」


 ここじゃ誰もがそう思う。

 収納魔道具を使って冷たい食べ物を持ち込めば良いけど、そんな魔道具を使ってくれるほど優しくない。

 せめて後方で療養させてよと思う。

 そんな優しさを期待しても駄目なのは分かっている。


「できるだけ努力してみる」


 そうとしか言えない。

 シナグルは頼りになるけど、頻繁に頼るとたぶん見棄てられる。

 ぬるいご飯を食べて、ぬるい果実水を飲む。


 食べないと、リーンにも食べ物を持って行った。


「食べたくない」

「そんなことを言わずに。食べないと身が持たないわ」

「冷たい物しか食べない」


 他の療養している奴隷も食欲がない。

 うだるような暑さじゃ仕方ないわね。

 介護所は、坑道の外にある。

 それでもこの山自体が暑い。

 何でこんなに暑いのでしょう。

 謎を解いたら、全員が奴隷解放されるぐらいの金になるのかしら。


 違法奴隷じゃないのがまだまし。

 稼いだ金はちゃんと計算されている。

 魔法契約にも入っているから、マスターが破ればペナルティがある。


 こういう、契約は嬉しいけど、いつ死んでもおかしくないような職場は御免よ。

 確実に稼ぎたい。


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